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縦走・岳沢~奥穂高岳
内田 優生

山行日 2016年10月22日~23日
メンバー (L)内田、宮本、八須

 北アルプス南部は今まで何度も行っているが、何故かこのルートだけすっぽり抜け落ちていて、未だにジャンダルムにすら行ったことがなかった。ではまとめて未踏ルートの奥穂高も入れて錦秋の岳沢周遊ルートにしよう!と例会を立てた。山を始めて間もない会員2名が集まり、晩秋のハイキングを楽しんできた。

 金曜の前夜に沢渡まで入り事前に電話で連絡していた食事処「しもまき」に車を泊めさせていただいた。車の脇にテントを張ることも了解いただいた。翌朝、手配したタクシーが5時半に現れ上高地に向かった。ここでハプニング発生。なんと登山靴を駐車場に忘れてきた者1名・・・おいおい、数多の忘れ物をしてきた私もさすがに靴はないな~と苦笑。速攻Uターンして靴を回収。走り始めて間もなかったので、傷も浅くすんだ。
 6時過ぎには上高地に到着した。辺りは既に冬の気配を漂わせていた。上高地の広場は白い霧に覆われ、登山客も口数少なく寒さで俯いていて、日本有数の観光地の明るさは皆無。我々は今日が勝負の日なので、さっさと身支度を済ませると早速岳沢ヒュッテを目指し歩いて行った。8時半近くにテント場に到着した。早速テントを張り、アタックザックを背負い天狗沢を詰めて行った。目指す天狗のコルは歩き始めたときから見えてはいるものの、行けども行けども近づかない。山特有の見える目的物ほど遠いを体現していた。このルートは花の時期は素晴らしいという記録を見たが、10月は花こそ見られはしなかったが、天狗沢のカールが黄金色に輝く風景もなかなかの見ものだ。
黄金色の天狗沢  稜線直下はわりと崩れやすいガレ場で神経を使った。上にも下にも登山者は我々のみだったが、人がもっと多ければ相当に神経を使うルートだと感じた。少なくとも下山では絶対に歩きたくない。稜線に出るとちょうど西穂高から歩いてきた単独の男性がいた。稜線で相当風に吹かれたようで異様に寒がっていた。新人のハッチーが「ここは日が差しますので、こちらで暖まって下さい」と男性に声をかけていた。優しい青年だ。その後は先ほどのガレ場とは打って変わって、掴んでも崩れない強固な岩場ルートの快適な稜線歩きが始まった。恐れていたジャンダルムや馬の背も写真で見るほど怖くはない。余裕だね~と振り返ると三峰一ボルダリングの上手なエデン宮本の腰が引けている・・高所恐怖症らしい。面白いのは、彼は怖くなると饒舌になるということだった。普通逆でしょ?と思うが、その後も細いリッジを通過する度に後ろから彼のマシンガントークが炸裂し、またそれを黙って聞いてあげているハッチーとの掛け合いが何とも面白かった。

スリリングな石稜歩き奥穂高岳頂上にて

 奥穂高に到着したあたりから、雲行きが変わり徐々に天気が下り坂になっていき稜線では強い風にさらされた。君子平に差し掛かるあたりで、前穂北尾根の全容が見えた。3週間ほど前に挑戦したが、天気に阻まれ断念したルートだった。絶対に次回こそは行くぞと思い全容を写真に収めてもらった。全ての石峰が見えるとイメージがしやすくてありがたい。見えてしまうことで逆に余計怖くなったりもするが・・
 3週間前に前穂北尾根に来た時、帰りのお風呂で屈強な?山ヤさんに三峰男性陣が話しかけられ、「ヒヨッコ諸君、前穂の頂上でもビバークできるんだぜ」!?と吹き込まれたらしい。本当に~?と思いそれも今回確かめようと思っていた。
前穂北尾根全容  しかし重太郎新道に差し掛かる頃には天気はどんどん下り坂になりみぞれまじりの横殴りの雨に変わっていた。「ギャー。痛い~。寒い~!」と3人で悪態をつきながら早く樹林に逃げようとペースを上げ足早に歩く・・・つもりだったがここでまたエデン宮本が濡れた岩に腰が引けなかなかペースが上がらない。ま、慎重なのはいいことだけどね。確かに11時間行動の疲れた体に堪える急降下だった。残念ながら前穂山頂は天気と時間の関係でスキップしたので、頂上のビバークスペースは確認できずに終わった。
 ようやく樹林に入り岳沢まであと1時間というあたりで、男性2名に会った。かなりお疲れの様子で、我々を見ると「上高地の最終バスは何時ですかね?」と聞いてきた。7時くらいのはずだと答えると「今から下りて間に合いますかね?」と言う。おそらく間に合わないだろうと答えるとひどく落胆していた。我々はまだ重太郎新道にいて、時刻は既に5時を過ぎており懐電歩行に入っていた。今から岳沢小屋に下りて上高地まで走ったとしても間に合いそうにない。彼らの予定には大幅な誤算があったようだ。無事岳沢に下山した我々の最大の誤算はというと、小屋でビールが売り切れていたことだった! あー出発前に買っておけばよかった!!と後悔先に立たず。小屋なのにビールが売り切れるなんてことある!?!と悪態もついた(ワタシだけ)。そして翌朝水槽にプカプカ浮いているビールを見た時は悔しさ倍増の思いだった(ワタシだけ?)。

翌朝の岳沢ヒュッテでリラックスモード

〈コースタイム〉
上高地(6:00) → 岳沢ヒュッテ(8:30~9:00) → 天狗のコル(11:00~11:15) → ジャンダルム(12:40~12:50) → 奥穂高岳(14:00~14:10) → 君子平手前(15:00) → 岳沢ヒュッテ(18:00)


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