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沢登り・烏川枯松沢左俣~滑谷奥沢下降~滑谷沢左俣
金子 隆雄

山行日 2016年10月8日~10日
メンバー (L)金子、紺野、小幡、高木、内藤、永岡、斎藤(吉)、他1名

 このルートを計画したのは今回で3度目だ。最初は昨年の10月に1泊2日で計画して滑谷沢出合でやっぱり1泊2日じゃ無理だよねということになってルート変更して滑谷沢に入った。2度目は今年6月に平日を含む2泊3日で計画したが、やはり平日を含むためか参加者が集まらずに断念した。そして今回、3連休とあって参加者は充分集まったが天気が良くない、悪天は覚悟の上で決行することにした。なかなか思い通りにはいかないものだ。

【10月8日】 雨
 いつものように東栗子トンネル脇の空き地に駐車して、もう通い慣れた感のある林道(旧国道)を歩き入渓点の烏川橋を目指した。途中、道に栗の実が沢山落ちている所に差し掛かると左斜面の藪の中からガサガサ音がしたのとほぼ同じくして獣の唸り声が聞こえてきた。姿は見えなかったが熊に違いないと皆騒然とする。長居は無用と急いで先へ進む。忘れ物を取りに車まで戻ったKGを烏川橋で待っていると、我々の心配をよそに何も知らないKGが呑気にやって来た。わざわざ取りに戻るくらいだから忘れたのはきっと酒に違いない。
 烏川橋から烏川に降りてこれを下降する。この下降はもう何度もやっているのですっかり慣れてしまっている。途中小滝は幾つかあるが厳しいものではない。ちょっとしたゴルジュが終わり少しで滑谷沢の出合だ。大休止とするが結構雨が激しくなってきている。
烏川のゴルジュを行く  滑谷沢出合から更に烏川を下るが、ここから先は私には未知の領域だ。滑谷沢の流れを合わせて烏川はここから川幅が広くなる。途中ゴルジュ地形となるが捲かなければならないような所はない。ゴルジュを過ぎると再び川幅は広くなりどこでも歩けるが、川底の石がかなり滑るので要注意だ。気を抜いて歩いていて何度も痛い目にあってしまった。
 やがて左岸より出合う枯松沢の流れが見えてくる。今日は枯松沢の二俣まで行くつもりであったが雨が本格的に降ってきているのでモチベーションも上がらず、今日はここでいいかと出合に泊まることにする。出合付近は開けていて幕場に良さそうな所だ。斜面を少し上がった所に良い場所があったのでテントを張ったが、後でよくよく見るとそこは林道の上だった。今では歩く人もほとんどいない廃れた林道なのでしばらく気付かなかった。
 時間がかなりあるので焚き火でもしたいが生憎の雨なので止むまで待つしかない。夕方になってようやく雨も小雨程度になったので焚き火で暖まることができた。

林道上に幕営

【10月9日】雨
 今日も朝から雨で始まる。食事を済ませパッキングも終えて焚き火を消して、さあ出発という時に突然人が現れて驚く。こんな所で人に会うとは思ってもいなかった。地元のキノコ採りの人で烏川下流から林道を途中までバイクで来たそうだ。舞茸狙いだそうだが、「舞茸はもう時期が過ぎてるんじゃないですか」と言うと、「いやいや、まだ大丈夫」とのこと。我々は早く出発したかったがなかなか話が終わらず、話を切らせるタイミングもなく気をもみながら話を聞いていた。ようやく話が終わり軽快な足取りで沢を渡って対岸の藪へ消えて行った、さあ我々も出発だ。
 枯松沢はかなり濁っているが増水はそれほどでもなく溯行に支障はなさそうだ。沢へ足を踏み入れて一歩目、岩だと思って足を乗せたのが実は腐った木でいきなり大コケしてしまう。この時突き指してしまって後々痛みがいつまでも続いてしまった。
枯松沢右俣は滝を連ねて面白そうだ  しばらくは滝もなく単調な溯行が続く。ようやく5mほどの滝が現れ左岸から小さく捲く。この滝を越えるとまたしばらくは単調な渓相だ。出発から1時間ほど溯ると滝が次々と現れるようになる。大きなものはなく快適に登って行く。そのうち沢幅が狭まりちょっとしたゴルジュになる。5mS字滝を越えると二俣まではナメが続く。出発から2時間30分ほどで二俣に着いた。昨日はここまで来るつもりだったが、大人数が泊まれそうな所は見当たらないので出合で泊まって良かったのかも知れない。右俣は出合から滝を連ねて面白そうだが、左俣は出合から流木が詰まっていて面白みに欠けそうに見える。滑谷奥沢を下るためには左俣へ入らなければならない。
 左俣は最初の印象と違って次々と滝が現れる。登れない滝も多く捲きが多くなりかなり体力を消耗する。やがて30mの大滝が現れる。この流域で最大だと内藤さんが言う。とても登れそうになく左岸の藪を灌木頼りに高捲く。沢へ降りる前にその先にも困難そうな滝が見えたのでこのまま大高捲きかと思ったがよくよく見れば登れそうなので沢身へ降りる。後続は降りる場所が判らないようで上で右往左往している。降りた所の倒木にはナメコがびっしり、頑張って高捲いたご褒美だ。
高捲きを頑張ったご褒美のナメコ  その後も滝はまだまだ続く。流れが尽きる所で左の小尾根に上がり滑谷奥沢への乗越しを目指す。乗越し辺りは平坦で全く斜度がないのでGPSを動員してのルートファインディングになるが藪は薄いのでそれほど苦労なく滑谷奥沢へ出ることができた。この沢の記録はほとんどないので様子が全く判らない。わずかに得た情報では途中に50mの滝があるということだけ。これとて実際はどうなのかは怪しい。しばらく流れは穏やかで緩く下って行く。ワサビが自生している所もあった。今朝会ったキノコ採りの人もそんなことを言っていた。のんびり下って行くとトイ状の滝が連なって落ちるようになる。水流通しには下れず右岸の藪をトラバースして行き詰った所で左岸に移る。更に灌木にぶら下がるようにして左岸を捲き下る。
 かなり長い距離を捲いたような気もするが実際はそうでもないかも知れない。滝場が終わると後は疲れ切った体で黙々と下って行く。やがて見覚えのある奥の二俣に辿り着いた。何とか暗くなる前に着いてホッとする。

滑谷奥沢の滝を捲き下る

 奥の二俣は広くて平らで絶好の幕場だ。この頃には雨も止んでいたので焚き火も調子よく燃えてくれた。お試しで参加したT君、昨日は「沢って面白いっすね」を連発していたが今日は沈黙、よっぽど堪えたらしい。初めての沢登りでこれじゃ無理もないことだ。これっきりで彼は会に顔を出さなくなった。

【10月10日】 曇り後晴れ
 今回の山行中で一番の天気になった。と言っても雨が降ってないというだけで晴れてはいない。ここからは滑谷沢右俣を下る。右俣は一度遡ったことがあるのだが登るのと下るのとでは見える景色がまるで違い、初めて来たように感じる。難易度もまた違ってくる。こんなに厳しくはなかったはずと思いながらゴルジュを捲き下り2時間強で二俣に着いた。ここからの左俣は何度も溯行しているので沢の様子も手に取るように判っているので安心だ。
大きな釜を持つ10m滝  左俣に入って少し行くと二人組のパーティが我々を追い越して行った。しばらくたってふと上を見ると先ほどのパーティが左岸のかなり上に付いている踏み跡を辿っている。自分も初めて左俣に入った時にあの踏み跡を辿ってみたがとても悪いので二度とそこは辿らないようにしている。水線通しの方がずっと楽なのだ。やがてプールのような大きな釜を持った10m滝だ。時間的な余裕もあるので大休止とする。この滝は右岸にしっかりした捲き道が付いているのでそれを辿って越える。後は裏見の滝まで特筆するようなことはない。裏見の滝は右岸にフィックスがあるが、滝の裏側を潜って行けると内藤さんが言うので半信半疑で行ってみると意外と浅くてほんの少し濡れるが簡単に三本松沢から上へ抜けることができた。
 裏見の滝を過ぎれば後は何もなくのんびり歩いて行くだけだ。途中から林道へショートカットできる道があるのだが見つけられず適当な斜面を登ったらその道へ出たが2~3分で林道に出てしまったので大平橋のすぐ近くまで来てしまっていたようだ。
 2時間弱で東栗子トンネルまで戻り、穴原温泉で一風呂浴びて帰った。3度目でようやく目的を達することができた。

〈コースタイム〉
【10月8日】 東栗子トンネル(8:00) → 烏川橋(8:45~9:15) → 滑谷沢出合(11:10-11:40) → 枯松沢出合(幕営)(14:00)
【10月9日】 枯松沢出合(7:30) → 枯松沢二俣(10:05~10:25) → 鞍部(14:00) → 滑谷沢奥の二俣(幕営)(16:00)
【10月10日】 奥の二俣(7:20) → 二俣(9:30~9:55) → 裏見の滝(11:10) → 林道(12:25) → 東栗子トンネル(14:15)

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