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雪上訓練・八ヶ岳
網谷 さやか
山行日 2016年12月17日~18日
メンバー (L)古屋、青木、飯塚、内田、大田、小幡、紺野、小芝、齊藤(慈)、下村、高橋(俊)、千葉、津田、永岡、深谷、三澤、和田、網谷

【12月17日:1日目】
 毎年恒例の雪上訓練。今年はベテランから入会して日の浅いメンバーまで総勢18名が参加した。
 1日目は雪山シーズンに向けての技術や装備の確認、2日目は赤岳に登る。赤岳は夏も冬も登ったことがなく、昨年登った硫黄岳から見た赤岳の姿に憧れていた私には絶好の機会になった。
 前夜5台の車に分かれて集合し、翌朝5時半に小淵沢IC近くのコンビニで落ち合い美濃戸口へ向かう。ここからは悪路になるため車4台に乗り換え赤岳山荘を目指す。道路の積雪はさほどでもないが凍結しており、また道幅も狭く対向車とのすれ違いはかなりスリリングだった。駐車場に着くと青空とまではいかないが、風も穏やかでまずまずの天候。いよいよ行者小屋へ出発。冬装備をつめこんだザックの重さによろめきながらも、久しぶりに大勢のメンバーと登る嬉しさに心が弾む。八ヶ岳の山深く静謐な冬景色も相変わらずで、来るたびに私はここが好きなのだと気付かされる。だんだんと雪が深くなり寒さも厳しくなってきたころ本日のテント場行者小屋に到着。
赤岳山荘から行者小屋へ向かって  荷物を解きテントを張り終えたところで訓練の場所へ移動する。最初は下村さんの雪上歩行訓練。説明を聞きお手本を見せてもらったところで実際にやってみる。雪山4年目ながらさぼりがちな私は、直登はともかくトラバースや方向転換がまだ怖い。ステップを一つ一つ確認しながら、足の置き方や重心の取り方、体の向きなどを学んだ。
雪上歩行訓練  次は内田さんによる滑落停止訓練。斜面に雪もほどよく付いておりお手本を見みせてもらい、仰向けや頭からなど体制を変えて何度かやってみる。滑るたびにだんだんスピードが速くなり停止するのが難しくなっていく。実際の滑落はもちろん比べようもないほど速いだろう。迷いなく停止動作ができるだろうか。そのための訓練だが、スリップしない歩き方を習得するのが大事だと強く思った。
 続いて小芝さんの確保技術に移る。時間も押し迫ってきたので説明を聞きながらスノーバーの扱い方やスタンディングアックスビレイのやり方を見せてもらった。それぞれ盛り沢山で充実した内容で、学ぶところが多く、あっという間の2時間だった。
 さあ今夜は宴会を残すばかり。テント場に戻ると準備に取り掛かる。水場は凍ることなく水量豊かに流れている。各々のテントで鍋を囲んだ宴が繰り広げられ夜が更けていった。

【12月18日:2日目】
 今日はいよいよ赤岳山頂に登る。4時に起床しテントを出ると月明かりと雪明かりでうっすらと明るい。風はほとんどなく星も見えている。天気予報通りの晴れに違いない。
 事前に分けられた3つの班構成でそれぞれコースを決め登ることになっており、我らが和田チームは文三郎尾根を往復する。経験の浅い人をベテランが見守りフォローする心強い体制だ。
 ヘッドランプなしで歩き始め、しばらくすると夜明けがきた。その時絶景が広がった。淡いブルーと朝焼けのピンクが、真っ白な雪山に絶妙なグラデーションで折り重なっている。人間の手では創り出すことのできない美しい瞬間を皆と分かち合った幸せな時間だった。
美しき夜明け  陽が昇るにつれ雲ひとつない快晴となった。阿弥陀岳が間近に見えている。その堂々たる姿にいつか阿弥陀岳から赤岳も登ってみたい気持ちになった。分岐を過ぎると次第に斜度も上がり雪が付いていないむき出しの岩稜になってきた。鎖場を夢中で登ると山頂へ到着。近くは八ヶ岳の山々が、遠くには御嶽山や富士山、北アルプスも見えている。晴々とした気持ちでぐるぐる回った。
 強風で体温を奪われないうちに下山を開始する。山頂直下の急斜面に足がすくむが、先輩たちの的確なアドバイスでおっかなびっくりだが何とか下りることができた。行者小屋に戻ると地蔵尾根から下りた班もほぼ同時に到着した。皆一様に満足した笑顔でいっぱいだ。
行者小屋前で記念撮影  テントを撤収し記念撮影した後は一路赤岳山荘へ。ここで私はアイゼンをしまいつぼ足で行くことを選択したのだが、この時はまだ先に待っている恐怖に気が付いていなかったのである。そう、沢沿いの道は凍っていた。何度も滑り枝やロープにしがみつきながら、アイゼンを外したことを後悔しつつもムキになってそのまま必死で下山した。
 大勢のメンバーと雪山でテントに泊まる楽しさ、技術を教わり今まで行けなかった山に登れた喜び、そして全方位に広がる絶景を存分に堪能した2日間でした。

〈コースタイム〉
【12月17日】 赤岳山荘駐車場(8:15) → 行者小屋(テント場)(11:25)
【12月18日】 行者小屋(6:05) → 赤岳山頂(8:30) → 行者小屋(10:03) → 赤岳山荘駐車場(12:18)

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