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山スキー・大戸沢岳
千葉 朋子

山行日 2017年3月4日
メンバー (CL)永岡、(SL)三澤、箭内、荻原、千葉(朋)

 金曜日の深夜に東川口駅に集合し荷物を積むと東北道で会津へ向かう。三澤さんと箭内さんは先に到着している。照明の少ない東北道を降りて地元の道を1時間程走り高杖スキー場に間近の三澤さんの山小屋に到着した。3時間の睡眠のあと6時半起床。三澤さんが淹れてくれた コーヒーのいい香りがする。山の時間が静かに始まった。
 今回は脚のスピードや技術が違うので、最初からパーティーを分ける予定でいた。永岡さん荻原さんパーティーは大戸沢岳に登頂して周回。三澤さん、箭内さん、千葉パーティーは尾根を上がり1,500m地点からピストン。周波数を合わせたトランシーバーを三澤さん、荻原さんがそれぞれ持つ。電波は良好だ。登り口近辺にはスキーヤーの車が10台は停まっている。
 9時に、大戸沢スノーシェッド上から沢筋を左の方に詰め尾根に取り付く。なだらかな沢を詰めていくルートで、すでに踏み跡がある。登って10分でパーティーは予定通り分かれて進む。永岡さん達はあっという間に見えなくなった。
 我々は、三澤さんがリーダーとなり先頭を進み、千葉、箭内さんと続いた。三澤さんは腰が万全ではなく様子を見ながら、箭内さんは新品のギアで足慣らし、千葉は高木さんからいただいた板とブーツを初めて使って練習。尾根は1,600mくらいまで西へまっすぐ急登となっている。1,700mくらいから比較的なだらかとなる。空は雲ひとつなく真っ青。風も感じない。ブナ木立の影が雪面に影絵を落としていて大変美しい。  しかし私は、足の動かし方に慣れずに下を向いてばっかりだ。足をつい持ち上げてしまったり、ゲレンデスキーの癖で斜面に正対して立つ違和感から咄嗟にエッジを立て後退して転んだり、大股で行くと板に乗れずシールが効かなくてやっぱり転んだり。方向転換も重心移動がうまく出来ずにこれまた転ぶ。三澤さんのお手本を真似ながら板の上の重心の位置を意識して丁寧に何回かやりながら少しずつ上達した。
 三澤さんも箭内さんも調子が良さそうで、ゆっくりと順調に高度を稼ぐ。
 雪山には道がない。慣れて来てトレースを外れて地形を見て自分で行きたい方向を決めて自由に歩いていくのは楽しかった。
 12時に予定通りトランシーバーで交信。
 13時頃、今日の折り返し地点の肩のようなところに到着。そこから、真っ白な尾根を登る永岡さんと荻原さんの小さな姿が見えた。その先には頂上とこれから二人が滑る大きな大きな斜面が見渡せた。沢筋には優雅なシュプールも描かれている。憧れと羨望を持ってしばらく眺めた。稜線には南風で雪煙が上がっていて風がそれなりに強いことがわかる。
 休憩を取り、シールを取って滑走準備をし、13時半に滑走開始。シールのない解放感は束の間で、ゲレンデの圧雪バーンとは違う不安定なふわふわの足元と木立。思わずプルークボーゲンになる。リーダーより先には行かないようにそろそろと降りる。雪質は斜面によってモナカ、シャーベット、もふもふ、と様子がころころ変わり気を遣う。下るにつれて雪がどんどん重くなり、木立も密になっていく。そのうち板で雪が押せないくらい粘着質の雪になり軽い板は足を取られてバランスを崩しターンどころではなくなり、右に乗れば転げ、左に乗れば転げ、七転八倒でヘトヘトになってなんとか沢まで降りた。箭内さん曰く生き地獄。聞くと箭内さんもツリーホールへ頭から落ちて板が雪に突き刺さったりして苦戦していたらしい。そんななか三澤さんは華麗に降りるので本当にすごい。谷に降りてからは真っすぐ沢筋を辿り、間もなく道路に出た。あんなに転げ回ったのに山を板で登ったり降りたりしたのは新鮮で楽しく、また滑りたいなぁ、なんて思ってしまった。2人はまだ戻っていなかったので、予定通り先に駒の湯(500円)へ行った。後から聞くと2人は12時35分に山頂に到着し、13時に滑降開始。14時45分に下山。下から見上げた斜面は素晴らしく良く見えたが、実際は雪が重くそんなに滑りやすくはなかったらしい。


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