トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ354号目次

雪山登山・栂海新道
小幡 信義

山行日 2017年5月3日~6日
メンバー (L)小幡、内田、紺野、青木

【5月3日(水)】 晴れ
 新宿発22:00のバスは栂池高原に5:00着。ゴンドラ始発8:00まで3時間弱、ベンチでのんびり待つ。ゴンドラ、ロープウェイに乗り継ぎ一気に栂池自然園まで上がる。ベンチでおもむろに登山準備に掛かる。本日の予定は白馬大池迄で急ぐ必要もない。天狗原を通り乗鞍岳を目指す。寝不足とザックの重みに喘ぎながらの歩行だ。この周辺は、スキーヤーとスノーボーダーで賑やかだ。風を切って豪快に滑り降りていく様は横で見ていて羨ましい次第だ。我々は地道に歩いて稼ぐのみ・・・。
 出発してから3時間30分乗鞍岳に到着。残雪期は山荘を通らず真っ直ぐ池の左側を目指す。15年前に来た時は1日目でここまでとしテントを張ったが時間はまだ13:00と行動出来るので先に行くことに決める。船越ノ頭から先は稜線歩きとなる為アイゼンを付ける。
 ハイマツ帯を覗くと雷鳥を見つける。羽根はすでに茶色になりつつありちょこちょこ歩きながら芽を啄んでいる。「ゴエー、ゴエー」と鳴き真似をしてみたが何も反応を示す事も無かった。
 小蓮華山で白馬山荘泊まりの中年パーティーと少し雑談をする。栂海新道を縦走と話すと少し羨ましい顔をされたが・・・!私としては60歳を過ぎ体力、気力も無くなり山に対する気持ちが萎えて来ているのは自覚している。羨ましい顔をされても自分は、何と答えていいのかわからずただ黙っていた。
 三国境手前で時刻も16:00近くになり登山道を少し下がった場所を整地しテントを張る。夕方外を覗くと二張りのテントがあった。

【5月4日(木)】 晴れ
 幕場5:15出発する。鉢ヶ岳はトラバースで進む。山頂に雪庇が張り出して部分的に崩れ落ちている。少し不安を感じたが時間的に早く雪もある程度締まっていたのでそのまま進む。
 雪倉岳の避難小屋を覗くと雪が吹き込んで小さな山の塊となっていた。窓が割れていてそこから雪が入り込んだようだ。今は板で補修されていた。
 雪倉岳の山頂は立派で黒光りした四角形の石の道標が設置されている。展望も良くゆっくりの休憩と決め込む。雪倉の下りは県境添いに真っ直ぐ進むと崖となり戻る事になる。15年前にまさにやってしまった。当日は視界も効かなく、ついつい崖手前まで進んで彷徨ってしまった記憶を思い出す。今回は視界も良く右側に降りる先行パーティーの踏み跡がしっかりと確認でき何も問題無く通過した。下から崖を見上げ感慨深い思いをしたのは私だけだろ・・・。
 朝日岳を目前に休憩をしていると水平道から2人のパーティーが近づいて来て樹林帯の急登をステップ切りながらガシガシ登って行く。三国境先でテントを張っていた先行パーティーであろう。我々も少ししてから踏み跡を借りながら前進する。女性2名には自分のペースで行ってもらい、高年齢の我々はゆっくりと途中立ち止まりながら山頂を目指す。
 30分遅れで到着。360度の展望が広がり気持ちいい山頂である。朝日岳を14:00に出発する。2日目の幕営の予定は吹上のコルであったが本日も少し伸ばし長栂山を廻り込んだ地点で幕とする。テントの中は強い西日に晒され、うだるような暑さだ。

【5月5日(金)】晴れ
 3日目の朝も晴れに恵まれてスタート。黒岩山までの行程は地形が複雑な為悪天候時はルートに注意を要する所だが、全く心配する事なく通過する。黒岩山から振り返る。平坦な山並みで何処をどう来たのかさっぱり分からず、確かにガスったらルートファインディングに苦労する事だろう・・・。
 犬ヶ岳山頂で単独の2名と我々4名は暫し景色を眺めながら雑談となる。若者の単独は白馬大雪渓から入山したとの事。高価で重量感のあるカメラを持ち歩いている。途中カタクリの群生を踏まず歩くのに苦労したなどと話している。(私的にはどうでもいいことでそんな余裕がなかったよ・・・)
 若者はそれではお先にと降りて行ったが、カメラを石の上に置き忘れて行ってしまった。「おーいカメラ・・・!」と叫ぶと笑いながら戻ってきた。
 3日目の予定幕営地は栂海山荘であったが時間的に早い為前進と決め込む。小ピークを5~6個越え、下駒ヶ岳直下の木の根っこと露岩の急登を喘ぎながら登り、白鳥小屋まで後2時間の所まで辿り着く。体力も気力も使い果たし、途中で幕営しようと話すも一名小屋まで行きましょうと頑張るので渋々歩きだす。
 白鳥小屋に16:45着。2階建てで下は既に3人がくつろいでスペースはなく2階に登ると2名分の寝袋で占領されていた。落胆し下に戻ると寝袋を移動するとの事。しめたと思い、さっさととザックと、雪袋を持ち上げ2階を陣取る。テント内と違い広い空間を自由に使えるのでザック内の物をぶち投げる。ここまで辿り着けば明日中に帰京出来る安心感からアルコールのピッチも上がる。晩飯も1日分余るので今晩のメニューに組み込む。私の担当であった五目寿司の素は簡単で白飯にぶっ掛け混ぜるのみ。然し飯がべたべたとなり、最後の晩餐にしては味気ないものとなってしまった。時間も経ち2階でくつろいでちらっと外を見ると単独の女性がせっせと雪をならしテント設営に励んでいた。1人位のスペースはあるが、敢えて声はかけなかった。

【5月6日(土)】曇りのち雨
 小屋を5:00に出発する。テント撤収もなく出発は早かった。下のパーティーは既に誰もいなかった。単独の女性はテント撤収の最中で一言「お先に!」と声をかける。
 朝は雪がクラストしているのでアイゼンを付けて下山。空はどんよりと雲に覆われ、いつ降ってもよさそうな雰囲気だ。順調に下山していたがシキ割りの地名周辺で踏み跡を失い登山道を外れてしまったようだ。15年前にもこの辺りで迷いそのまま林道迄降りてしまった記憶を思い出す。変な所に降りてしまったと思いながらも、林道脇にタラの芽を発見、思いもよらず大収穫に嬉しい次第であった。
 今回もあるかなどと想いながらも勝手な行動は控えトラバースして登山道に這い上がる。道を外れてから4名バラバラとなったが「モトー」を掛け合い何とか登山道に揃う。一寸した落とし穴があったものの日本海を目指し足並みそろえる。
 小降りの雨も坂田峠辺りから本降りになり始めた。峠から小ピークを3つ越え長い栂海新道を終え、親不知観光ホテル前に11:30に着く。看板前で記念写真と行きたいところだが、びしょ濡れの体は風呂を要求。ホテルでの入浴は出来ずタクシーを呼び(まるたん坊)というセンターで入浴し、ゴールデンウイークの栂海新道を3泊4日で終えることが出来ました。

〈コースタイム〉
【5月3日】 栂池高原(8:00) → (ゴンドラ+ロープウェイ)栂池自然園(9:25) → 白馬大池(13:00) → 三国境前(16:00)
【5月4日】 三国境前(5:15) → 雪倉岳(8:10) → 朝日岳(14:00) → 長栂山(16:00)
【5月5日】 長栂山(5:20) → 犬ヶ岳(12:00) → 白鳥小屋(16:45)
【5月6日】 白鳥小屋(5:00) → 親不知(11:30)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ354号目次