トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ355号目次

集中山行・谷川岳
その2 縦走・谷川岳馬蹄形
内藤 美智子

山行日 2017年9月23日~24日
メンバー (L)飯塚、渡辺(智)、三澤、渡辺(靖)、内藤

 久しぶりに会山行、それも大勢に会える集中山行に参加した。今年の集中山行は尾根3パーティー、沢3パーティー、岩1パーティー、総勢23名が24日14時までに谷川岳肩ノ小屋を目指す。私は尾根パーティーの中では最も行程が長い馬蹄形縦走を選んだ。
 22日夜あいにくの雨の中、東京を出発。土合駅には前夜発のパーティーがそろっていた。これでもう集中できたという冗談も出る。夜中には激しい雨の音が駅構内に響き、眠りを邪魔したが、朝には曇り空ながら雨はやんでいた。

【9月23日(土)】曇り時々雨
 早朝に土合駅から白毛門登山口に移動する。ここに駐車して準備。この日は白毛門、笠ヶ岳、朝日岳を越えて清水峠に至り、さらに蓬峠まで足を延ばす計画だ。
 馬蹄形縦走は白毛門への急登から始まる。この日は曇っているせいか生暖かく、登りでは汗が流れる。集中の時間までに長距離を縦走するためにメンバー全員軽量化を図ってきた。飲料水だけは軽量化できないが、余分には持っていない。暑いと水が多く必要になるので不安になる。
 30分ほど登るとヤブの間からハナゲの滝が見えた。沢は水量が多そうだ。赤谷川、東ゼン、万太郎谷に入る沢3パーティーは苦労するのではないだろうか。
 2回目の休憩のときに下からにぎやかな6人パーティーが上がってきた。見るとはなしに見ているとそのうち2人がなんとサンダル履きである。聞けば山登り用のサンダルで手作りとのこと。そういえば9日に景信山に行ったときにも裸足やサンダル履きの登山者に会ったのだった。登山スタイルも多様化しているようだ。
 途中の岩場には真新しいクサリがついていた。先の6人パーティーは岩場が苦手らしく、少し待たされた。どうやらトレランナーと登山者の混成パーティーのようだ。
 2時間半くらいで松ノ木沢ノ頭を通過。白毛門の名前の由来ジジ岩ババ岩が右に見えるようになる。さらに登った稜線は紅葉が始まっていた。
 3時間半で白毛門山頂に到着。ここまではコースタイム通り。せっかくの山頂もガスで景色は全く見えなかった。白毛門の下りから登山道にぬかるんでいるところが出てきた。ぬかるみの下りは滑りやすく、気を遣う。しかし周囲の紅葉・黄葉の彩りは素晴らしい。笠ヶ岳の頂上では数人の登山者が休んでいた。朝日岳までのピストンという女性が「朝日岳周辺の紅葉が一番きれいですよ」と教えてくれた。
別所さんとのプチ集中  笠ヶ岳から朝日岳の間はいくつかの小ピークを上り下りする。その途中で別所さんと出会う。別所さんは日程的に集中山行に参加できないのでせめてわたし達とプチ集中できるように逆コースを歩いてきたのだった。急な登山道の途中でしばしおしゃべりして差し入れをいただいて分かれた。
 朝日岳周辺は聞いたとおりに紅葉がきれい。ドウダンツツジの赤やカエデのオレンジとシャクナゲの緑のコントラストが美しい。
 しかし残念なことに雨が降ってきて、ますます視界がきかなくなってしまった。
 朝日岳の頂上で雨は本降りとなってしまった。JPから清水峠へは急な下りだ。もともと湿原ぽいところに雨が降っているのでますますドロドロになり、歩きにくいことこの上ない。途中で雨だけはやんでくれた。
 池ノ窪の池塘、大きな送電線鉄塔を見て、清水峠の白崩避難小屋に着く。遅くなってしまったので予定の蓬峠まで行かずに清水峠に泊まることになる。天気が悪いので可能なら避難小屋に入りたかったが、すでに8名いるとのことなのでテントを張る。避難小屋周辺には先行していた6人パーティーがテントを6張り(!)張っていたので、わたし達は少し蓬峠寄りにある東電の送電線監視小屋近くに張ることにした。この小屋は避難小屋より大きく三角屋根が遠くからも目立つが、施錠されていて逃げ込むことはできない。
 テントを張ったあと水汲みに行く。清水峠の水場は地図には土合への旧国道沿いに印があり、他の登山者もそちらから水を汲んで戻ってきていたので当然そちらへ向かった。しばらく下っていくと確かに沢が流れてはいるが、ネットで見た水場の写真と全く違うし、水場でよく見かけるパイプさえついておらず汲みにくそう。もう少し先に見に行ったが、水の気配は感じられなくなった。仕方なく岩にプラティパスの口を押し付けるようにして水を汲んだ。帰宅後、調べてみると清水峠の水場は土合への旧国道沿いではなく、もう少し蓬峠寄りに左(南)へ入る水平道があり、その道の突き当りにあるそうだ。
 今回は軽量化のため食事は各自となった。少しさびしい気もしたが、それぞれ持ってきた物を分け合ったり、味見させてもらったりとそれはそれで楽しい食事であった。

【9月24日(日)】天気:快晴
 この日も夜は雨の音が聞こえたが、朝にはやんでいた。この日は天気が良くなる予報だが、出発の時点ではガスガスだった。雨こそ降っていないものの前日に引き続きドロドロの登山道ですぐにスパッツが泥だらけになった。しばらくすると日が差してガスが晴れてきた。この日の目的地谷川岳も左手に望めるようになった。
 1時間ほどで大源太山への登山道との分岐、分岐から5分で七ツ小屋山。七ツ小屋山からはこれから歩いていく谷川岳への道を見渡すことができる。とっても遠い―!!
 大源太山の分岐から劇的に登山道が歩きやすくなった。ぬかるみはなく、ササは刈り払われている。振り返ると七ツ小屋山の左に大源太山の鋭鋒が見える。『上越のマッターホルン』の異名がある大源太山。アッコさんパーティーは昨日これを登って蓬峠に泊まり、今はわたし達の前を歩いているはず。
歩きやすくなった登山道を蓬峠に向かう  七ツ小屋山から1時間弱で蓬峠。蓬峠には上越では貴重な有人小屋蓬ヒュッテがある。小屋の前のベンチで休憩後、次は武能岳を目指す。蓬峠から武能岳への登りは緩やかで歩きやすい。標高が上がるにつれ紅葉がきれいになっていく。途中で「モートー」のコールが聞こえた。わたし達も「モートー」と返して手を振って前方に目を凝らしたが、姿を見ることはできなかった。
 武能岳の頂上からは東側に白毛門、笠ヶ岳、朝日岳と前日歩いた山が全部見えた。朝、出発した清水峠の東電小屋の三角屋根が白い点になって見える。武能岳からは急な下り、こんなに下ってしまってもったいないと思う。武能岳と茂倉岳の間は長く、大きく下ってまた登らねばならないのだ。
紅葉を愛でつつ登る  茂倉岳は一面、ササにおおわれている。ササの葉が日にきらめいて金属のような色に見える。単調で長い登りをこなしてようやく茂倉岳の頂上に着く。ここまで来れば、集中場所である肩の小屋は射程距離。ようやく気持ちが楽になった。
 茂倉岳の頂上からはオキノ耳、トマノ耳、上越国境稜線、万太郎谷が一望できる。先行している大源太山パーティーと万太郎谷パーティーはもちろん、東ゼンパーティーと赤谷川本谷パーティーは国境稜線を谷川岳に向かっているはずだから今日の集中メンバーのほとんどがこのどこかを今歩いているのだろう。少し長めに休憩して谷川岳に向かう。肩ノ小屋までは1時間半くらいなので14時の集合には十分間に合うはず。茂倉岳の頂上からは格段に登山者が増えた。天神平からのピストンでも、茂倉新道を使っても日帰りすることができるからだ。
 20分くらいでなだらかな一ノ倉岳の頂上に着く。中芝新道への道標と小さな避難小屋がある。目の前に見えるオキノ耳にもトマノ耳にも登山者がいっぱいだ。左足下は一ノ倉沢の岩壁、右はなだらかな斜面が紅葉に彩られている。オキノ耳が近付くとちょっとした岩場が出てくる。登山者はますます増えて、なんということもない岩場でも渋滞したり、道を譲って待たなければならないことが多くなる。
 鳥居のあるあたりの紅葉が今山行中一番きれいだった。その分登山者も多い。わたしが写真を撮っている間に他のメンバーは先に行ってしまった。集中の時間が気になるからだろう。余裕だったはずなのにいつの間にか、14時まであと30分になっている。オキノ耳にもトマノ耳にもうちのメンバーはいなかった。あとで聞いたら山頂はパスして集中場所の肩ノ小屋に行ってしまったとか。わたしも写真だけ撮って肩ノ小屋へ急ぐ。
美しい紅葉にメンバーもにっこり  肩ノ小屋には集中時間ギリギリの13時50分に着いた。マチガ沢パーティー、万太郎谷パーティー、大源太山パーティーはすでに到着していた。
 やがて残りの茂倉岳パーティー、赤谷川本谷パーティー、東ゼンパーティーも次々に到着して14時の集合にはわずかに遅れたものの全員無事に肩ノ小屋に集中できた。明さんが持ちあげてくれたスイカを手に記念撮影。ちょっと到着が遅れた人や早めに下山を始めた人がいたので2回に分けての撮影になり、全員一緒に撮影できなかったのはちょっと残念だった。
 足の遅い人から順次出発して天神尾根を下る。歩いて下山するマチガ沢パーティーのほかはロープウェイを使った。

〈コースタイム〉
【9月23日(土)】 白毛門登山口(6:15) → 白毛門(9:45~9:55) → 笠ヶ岳(10:55~11:05) → 朝日岳(13:00) → 清水峠(15:35)
【9月24日(日)】 清水峠(5:35) → 七ツ小屋山(6:45~6:55) → 蓬峠(7:45~7:55) → 武能岳(8:55~9:10) → 茂倉岳(11:20~11:40) → オキノ耳(13:30) → 肩ノ小屋(13:50~14:45) → 天神平(16:10)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ355号目次