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集中山行・谷川岳
岩登り・マチガ沢東南稜
小芝 泰規

山行日 2017年9月24日
メンバー (L)小芝 、軽部

 今年の集中山行は多くの山行が計画されて盛り上がりを予感させた。それらの企画は沢と縦走だったが、近年はクライミング好きの会員が増えているので、簡単な岩のルートをと今回の計画を出してみた。直後に数名から参加表明があり、これは幸先がいいぞとほくそ笑んでいたのだが、直前のルーム前には諸々の理由で参加者数がゼロになった。この段階で参加者なしだと山行は中止することになるだろうと半ば諦めていたところ、三峰きってのクライマー、軽部君が手を挙げてくれて山行が実現する運びとなった。

開けた明るいナメが気持ちいい  マチガ沢:前日の雨から一転し、天気が良く爽やかなスタートを切った。時間短縮をしたければ見晴台まで登山道を登った方が良いという前情報があったので、計画では見晴台まで登るつもりでいた。しかし、見晴台の様子を事前にあまり確認しなかったので、知らずに通り過ぎてしまうよりは早めに入渓したほうが良いということで、登山道を20分ほど登った、沢音がサラサラと近くに聞こえる地点で入渓した。ちなみに、見晴台は巌剛新道入口から40分弱で立派な指導標がある。
 沢は開けて明るく、西黒尾根と東尾根を望むダイナミックな景色が広がっていた。前日が雨だったわりに水量は少ない。沢幅に比べて水流が細いので、その気になれば靴を濡らさずに遡行できる。
 序盤はゴーロやナメの穏やかな印象だが、東南稜に近づくと巨石や急なスラブに変わり、沢登りというよりは岩登りっぽい感じになる。
 稜線に向けてグングン高度を上げ、迷いやすいと言われる四ノ沢分岐まできた。この日は天気が良く、四ノ沢手前から東南稜取付きとなる巨大なルンゼが見えていたので迷わず右の本流に入ることができた。

 1P目(Ⅳ- , 30m):顕著なルンゼから取付く。ルンゼ上部でスラブに上がる2mが核心となる。何が核心かというと使えそうな岩の突起には苔がヌルヌルと生えていてとにかく滑る。スタンスに丁寧に足を置いて慎重に力を込めるが、ヌルッと足が滑り落ちる。ここには古い残置スリングが何本か掛かっているので、なるべく体重をかけないようにA0で乗り越えた。
 その後は簡単なスラブを右上するとハーケンの終了点がある。

取付きのルンゼ核心だったヌルヌルのルンゼを抜ける

 2P目(Ⅳ- , 40m):左のカンテと右の凹角に沿ったクラックルートの2ルートがあり、今回は右のルートを登った。このピッチも所々ヌルヌルしていたが、登攀には問題なかった。自然なルート取りで右上していくと大岩の下にハーケンの終了点がある。

 3P目(Ⅳ , 40m):いったん左上にトラバース気味に10mほど登り、そこから10mほど右上すると安定したテラスにたどり着く。ガイドブックなどではこのテラスの右壁を10mほど登って終了となっているが、今回はカムも持参しているのでテラス正面から垂直に伸びているハンドサイズのクラックを登ってみた。やさしい東南稜にしては登りごたえがあって楽しい。クラックの終盤でちょっとかぶり気味に感じるところがあるのでカムはしっかり決めておきたい。クラックを登り終えると安定した小さなテラスに出たので、カムでビレイ点を作った(2番×1、マイクロ0番×1)。ここまでくると稜線を歩くハイカーの姿が近くに見える。気持ち良い秋晴れで遠くの山々と朝から遡行してきたマチガ沢をすべて見渡せた。

 4P目(Ⅱ~Ⅲ , 40m):東南稜はⅡ~Ⅲ程度の岩尾根となってまだ続いている。40m程度ロープを伸ばすと古いがしっかりとしたハーケンが数本打ってあるビレイ点にたどり着く。

 5P目(Ⅱ級 , 30m):簡単な岩稜を10mほど登り、2mほど切れ込んだ岩を通過するとブッシュ帯に入る。難しいところはないが、それなりに高度感があるのでロープを付けた方が良い。途中に支点がないのでカムと灌木でランニングを取り、ブッシュを20mほど進むと小テラスに出る。ここには古いハーケンが数本打たれていた。
 足元がしっかりしているのでここでロープをほどき、ギアをザックにしまった。ハイカーの多い稜線から少し離れた特等席といった感じの場所で、静かで眺めがよく、軽部君と静かな時間をしばらく楽しんだ。
 その後ブッシュが続く尾根の踏み跡を50mほどたどるとトマの耳に突き上げた。簡単で短いルートだったが、沢と岩をつないで尾根を最後まで辿って山の頂上立ったときには充実感で満たされた。
 その後肩ノ小屋に一番乗りして待っていると、他のパーティが続々と集まってきて声を掛け合った。集中という共通の目的をなしとげた達成感をみんなで共有している気がして嬉しかった。最後は佐藤会長が担ぎ上げてくれた大きなスイカを皆で美味しくいただいてフィナーレとなった。

〈コースタイム〉
マチガ沢出合(6:10) → 東南稜取付(9:50)(3H40)(10:20) → トマの耳(12:20)(2H)


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