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集中山行・谷川岳
その7 沢登り・赤谷川本谷
永岡 恵二

山行日 2017年9月23日~24日
メンバー (L)永岡、古屋

 今年の冬、赤谷川の源頭をスキーで滑った。一面素晴らしい雪原で今年一番の山スキーだったこともあり、無雪期はどうなっているのか?沢登りでも行ってみたいという気持ちになっていた。今年の集中山行が谷川肩ノ小屋ということもあり、赤谷川本谷を企画してみた。メンバーはスキーも一緒に行った古屋さん。

【9月23日】
入渓  前日土合駅に泊まり、雨の中、5時に出発した。川古温泉についても天候は変わらず、小雨の中、6時に出発した。昨年笹穴沢に行ったときも同じ川沿いの林道を歩いたが、水量は覚えておらず、そのときと比べて多いのか少ないのかわからなかった。
 2時間ほど歩き、渡渉点に到着し、遡行準備を開始。靴ひもを結びなおそうとスパッツをめくったら、すっかり血を吸って大きくなったヒルが目に飛び込んできた。初めてヒルに血を吸われた。
 雨の中、いよいよ遡行開始。すぐにマワットの下のセンに到着。右壁を直登するという記録もあったが、やはり水量が多く、とても直登できない。ここは普通に左を巻いた。その先はマワットのセンだ。ここも高巻きである。
マワットのセン  左を登るが、いきなり泥付きの嫌らしい急登だ。ここは、ロープを出して、古屋氏にリードしてもらった。なかなか厳しく、時間がかかった。嫌らしい急登の次は藪を進み、懸垂して、川原に降りた。
 次は巨岩帯だ。巨岩帯は想像以上の大きさだった。岩井谷本谷の巨岩帯を想像していたが、はるかに上回る大きさだった。いきなり進路が全て巨岩で行く手を阻んだ。巨岩の隙間から岩の上に出るが、下に降りられない。周りを見ると左岸に滑りそうな岩肌の斜面があり、そこくらいしか進めないことがわかった。何とか突破したが、次の巨岩で早々に進退極まってしまった。仕方なく右岸の高巻きルートに入った。道はなく、藪だらけ。結局巨岩帯には戻らず、ずっと藪漕ぎして、巨岩帯を突破した。
巨岩帯に突入するが・・・  14時に裏越のセンに到着しなくては、ドウドウセンの突破は難しいと話していたが、到着したのは14時を過ぎていた。
 今迄の藪の状況からすると、踏み跡はなく時間を要することを考えると、明日の集中に間に合わせるには何としてもドウドウセンは越えたかったので、ここは進むことにした。
 記録だと、右から滝の裏を通って左に降りて、ルンゼを登るとあったが、そのまま川の中を直進した。左のルンゼを上がって、右に道があると記録にはあったが、先ほどまでの藪漕ぎで、道などないことはわかっていた。地形的見ても、相当ルンゼを上まで行かなければ、右には進めないのは明白だった。ルンゼを登り、何となく右に行けそうなヤブに突っ込んだ。トラバース気味に進んでいくと、日向窪に出た。

裏越のセンへのとりつき裏越のセン高巻きからの眺め

幕場(日向窪)  時間はちょうど4時。ここからドウドウセンを越えると、暗くなってしまうので、日向窪の川原でビバークすることにした。増水したら浸水必須だが、天気は上り坂なので、大丈夫だろう。薪も少し集められたので、小さく焚き火をしてその晩は過ごした。

【9月24日】
 翌朝は明るくなるのは6時と見込んでいたが、6時はすっかり明るくなっていた。
 日向窪を登りはじめると、直ぐにチムニーの滝にぶつかった。
2段チムニーの滝  ここから右の沢を登って行く。沢といっても、細い涸沢で何となくここかなぁという感じでわかりづらい。直ぐに藪になり、また、藪漕ぎとなった。粘っこいシャクナゲもあり、なかなか手強い。藪を漕いで登っていくと、大きな岩にぶつかり、ここを左に巻いて少し行くと尾根に出た。尾根といっても、藪である。快晴で見晴らしも良く素晴らしい。ここを少し進むと、目指すドウドウセン上の川原が見えた。滑りそうなので手が使えそうなルートを探しながら、慎重に降りていった。川原についた時間は9時。3時間も要してしまった。

ドウドウセンの高巻き。やっと川原が見えた!ドウドウセンの高巻きを終えて

 やっと川原に着くと、その先は穏やかな流れで今までの渓相が一変した。
 先を進むと直ぐに左に流れが曲がり、ゴルジュの先に8mの滝が現れた。泳いで遊びたい気持ちになるが、集中に間に合わせるには、殆ど時間がないので、直ぐに右岸を高巻いた。その先も穏やかな流れが続いたが、暫くすると、ゴルジュ帯が現れた。水の色がとても美しい。小滝があったり、淵があったり、適度に楽しい。

楽しいゴルジュ楽しいゴルジュ

 ゴルジュを越えると、沢は東の方へ向き、スキーで滑った源頭部のエリアに突入した。スキーのときは一面真っ白な雪面だったが、今は穏やかな沢に草付きの斜面が広がっている。後ろには万太郎。スキーで登った万太郎のルートが見える。なんか感慨深い。
源頭部。雪原もよいが、草原も素晴らしい!  さらに沢を詰め、途中二股を左に取って進んだ。少し開けたところで先が藪となっていたので、何となく沢を左に外れて尾根の方の笹薮に向かった。笹薮は思った以上に激藪だった。あのまま沢を詰めたらよかったかなぁと後悔しながら進むと、尾根に出た。
 12時50分だった。もう集中の14時には自分の足では間に合わないが、古屋氏なら間に合うかもしれないと、先に進むように言ったが、拒否された。
 暫くすると、後ろからもーとーコールが聞こえた。東ゼンのうっちー達だった。もーとーコールで返すが返って来ない。暫くすると、また、もーとーコール。またもーとーコールで返すと、やっと気づいたようだ。
 その先のオジカ沢の頭で休んでいると、うっちーと齋藤さんが追いついてきた。ここから古屋氏、うっちー、齋藤さんの3人は先に行き、自分はのんびり、肩ノ小屋を目指した。途中素晴らしい紅葉が広がっていた。恐らくこの日が一番いい時期だったのだろう。赤谷川の源頭部も素晴らしかったが、紅葉も素晴らしい。
 14時25分、肩ノ小屋到着。満足した山行だった。

素晴らしい紅葉が広がっていた
〈コースタイム〉
【9月23日】 川古温泉(6:10) → 入渓(8:40) → マワット下のセン(9:20) → マワットのセン(10:00) → 巨岩地帯(11:40) → 裏越のセン(14:50) → 日向窪(16:00)
【9月24日】 日向窪(ドウドウセン下)(6:00) → ドウドウセン上(9:00) → ゴルジュ帯(9:40) → 登山道(12:45) → 肩ノ小屋(14:20)

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