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雪山登山・阿能川岳~爼嵓~谷川岳
金子 隆雄

山行日 2018年3月17日~19日
メンバー (L)金子、紺野、津田、青木

 出発の数日前に、猿ヶ京在住だという方からメールをもらった。数日前に阿能川岳に行ってきたとのことで積雪状況やルート状況などアドバイスをいただいた。会のWebサイトに載せている山行計画を見てのことだという。前夜、東所沢駅に集合。仙ノ倉山北尾根隊も同じ時刻・場所で集合のはずだが姿は見えない。我がパーティは時間通りに集合したので出発(気づかなかったが早川君だけは来ていたらしい)。その夜は湯檜曽駅で仮眠する。湯檜曽駅は貨物列車が通ると突風が吹いて大変なのだがこの日は1 回だけで済んだ。

【3月17日 晴れ】
鉄塔ピークからの吾妻耶山  登山口の仏岩トンネル手前の駐車場に向かう。途中のコンビニで朝食を済ませて猿ヶ京方面の道へと入る。最近よく立ち寄る鈴森の湯から更に奥に入った所にある。この駐車場は吾妻耶山への登山口でもあるので既にかなりの車が停まっている。出発準備をしていると、数日前にメールをくれた猿ヶ京在住の方が差し入れを持って激励に来てくれた。何と律儀な人なんだろう。登り始めから1,073mピークまでが急傾斜で、雪が少ないためかズボズボ潜って辛い登りだ。右に寄るほど傾斜が強いので左から捲くように登って行く。ヘロヘロになって1,073mピークに辿り着くと、そこからは傾斜も緩んで快適な雪の尾根が続くようになる。雪は締まってアイゼンがよく効く。天気は快晴で今日は申し分のないコンデションだ。暫くはまばらではあるが樹林が邪魔して展望が遮られているがそれも束の間、送電線用の鉄塔がある小ピーク辺りまで来ると展望が開けてくる。この鉄塔は現在地確認の良い目印になる。このピークから登ってきた方を振り向くと吾妻耶山の特徴ある山容が視界いっぱいに広がる。
 少し進むと鍋クウシ山に至るが、この変わった名前の山は尾根上の木にカラフルな山名板がぶら下がっているだけで特にピークというわけでもなく、通過ポイントにすぎない。やがて尾根が細くなってくると少しの間、岩稜帯となる。凍っているので気を抜かず慎重に通過する。岩稜帯が終わると尾根は再び広くなり、一登りで三岩山に到着する。5つの雪達磨が出迎えてくれた。平らで広い山頂を持つこの三岩山は展望も良く長い休憩を取る。
お出迎えの達磨たち  阿能川岳はほぼ南北に長く広い山頂を持っており、北端の木に粗末な山名板が打ち付けてある。小出俣山へ向かうには90度方角を変えて西に向かうことになる。ピークの北端から西に向かって下っていく踏み跡が続いていたので辿ってみるが、途中で途切れていたので引き返す。地図をちゃんと見ると小出俣山へ続く尾根はピークの南端から続いているので南端まで戻る。かなり下ってから登り返すことになるのだが、下っている途中からはっきりした踏み跡が出てきた。三岩山で休んでいた登山者から小出俣山方面へ向かった2人組がいるということを聞いていたがその人達のものと思われる。下り切った1,500m付近の鞍部を今日の幕場とした。小出俣山くらいならまだ行ける時間なのだが、久々の山行でもう脚が上がらなくなってきているのでこの辺で勘弁してもらう。平らなので設営も時間がかからずに終了。天気が良く風もなくて暖かいので外で水を作りながら一杯やる。真正面にどっしり構える小出俣山を眺めながらの酒は美味い。食事のメニューは何であったか全然覚えていない。

【3月18日 晴れ】
 今日も晴天で昨日同様に雪の状態も安定していて申し分ない。谷川でこんなに好条件の日が続くなんて信じられないくらいだ。6時少し過ぎに幕場を後にする。小出俣山へと続くこの尾根も快適な雪尾根だ。途中、下ってくる2人組のパーティとすれ違う。昨日、三岩山で聞いた2人なのか、あるいは違うパーティなのかは判らない。小出俣山の肩のようになった所に幕営跡があり先程すれ違ったパーティのものと思われた。小出俣山は今回のルートから少し外れており、往復すれば1時間くらいかなと見えたが今回はパスして先へ進むことにした。
 先ずは方角を再び北にとり、赤谷川方面へと下っていく。ここはそのままどんどん下って行くと赤谷川に降りてしまうので、尾根を乗り換えて俎嵓方面への尾根に乗らなければならない。尾根を乗り換えるために下っている最中にアイゼンを引っ掛けて転倒し5mほど滑り落ちてしまった。まだ疲れが溜まってくるような時間帯でもないのに、この失態にショックを受ける。山をナメていたのか、注意力が散漫になっていたのか、あるいは加齢による限界が近づいているのか。「もう限界ですよ、諦めた方がいいですよ」と若者に引導を渡される日が近いのかも知れない。そんなことを考えると身震いしてしまった。以後は慎重になったことは言うまでもない。川棚ノ頭まではかなり長く感じた。川棚ノ頭はよく判らないまま通り過ぎ、後であそこがそうだったかと気づく。普段目にする俎嵓は東側から見ているのでとても急峻で近寄りがたいが、西側はいたって穏やかである。
川棚ノ頭にて  幕岩尾根とのジャンクションから一旦下って登り返すと国境稜線と合流する。オジカ沢の頭に2人の登山者がいるのが見える。昨日今日とコンデションが良かったので、仙ノ倉山パーティも近くまで来ているかも知れないと万太郎山方面に動くものがないかしばらく見ていたが、残念ながらその兆候はないので諦めて肩ノ小屋へ向かう。3年前の同じ時期に同じように肩ノ小屋を目指して歩いたことを思い出す。その時は日が暮れて真っ暗な中だったので、歩いても歩いても辿り着かず、永遠にこの暗闇を彷徨うのかと思うほどだった。今回は明るい中で、小屋もしっかり見えているのでこんなに近かったのかという感じだった。途中1ヶ所、かなり急な雪壁状になっていてバックステップでそろりそろりと下るような所があった。3年前の時に真っ暗な中でこんなヤバイ所を下ったのかなと記憶を辿っても記憶にはない。捲いて通過したのかも知れない。小屋には15:00到着。ギリギリ下山できる時間だが予定通り小屋に泊まって下山は明日とする。今日は日曜なので誰もいないだろうという予想通り他に人はいなかった。我々だけだったのでテントを張った。これで夜は暖かく寝られる。今日はもう来る人はいないだろうと思っていたが、単独行の人がやって来てここに泊まるとのこと。1人ならテントを張ったままでもスペースは余裕があるのでそのままにしておく。しばらくして外へ写真を撮りに出ていた単独の人が、3、4人の登山者が小屋を目指してやって来ると言ってきた。えー、日曜なのにまだ人が来るの、テント撤収だ。モートーの声と共に飛び込んで来たのはウッチーと荻原だった。山蔦と早川は少し遅れてやって来た。もう来ないだろうと思っていたので驚いた。随分頑張ったみたいでヨレヨレ状態の人もいた。8人ものメンバーが集まったので小屋の中は大賑わい。わざわざ秋田から来たという単独の方は大変うるさかったと思います。ごめんなさい。

【3月19日 晴れ】
 仙ノ倉パーティは電車で車の回収に向かうため一足早く出発していった。我々はのんびりと8時頃に小屋を出た。この時期の日曜などは行き交う人の多さにうんざりしてしまうが、今日は平日なので行き交う人もまばらで下山もはかどる。
 ロープウェイで下った後はタクシーで仏岩駐車場まで戻る。料金は6,000 円ちょっと、意外と遠かった。

〈コースタイム〉
【3月17日】 仏岩駐車場発(7:50) → 鍋クウシ山(11:05) → 三岩山(13:05) → 阿能川岳(13:55) → 幕場(14:30)
【3月18日】 幕場(6:10) → 小出俣山の肩(7:45) → 川棚ノ頭(10:50) → オジカ沢ノ頭(13:15) → 肩ノ小屋(15:00)
【3月19日】 肩ノ小屋(8:00) → 天神平ロープウェイ(9:30)

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