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雪稜登攀・荒沢山~足拍子岳
荻原 健一

山行日 2018年2月24日~25日
メンバー (L)荻原、西村、青木、古屋

 このルートは4年前に小幡さんリーダーで行った話を聞いてから気になっていたが、その後に『岳人100ルート』に選出されたことから私の中の絶対行きたい雪稜ルートの一つになっていた。早い段階から西村君に賛同してもらっていたので今回例会として企画した。

【2月24日 晴れのち午後から吹雪】
 前夜に車で土樽駅に入りいつものステーションホテルで仮眠。明日、仙ノ倉北尾根やタカマタギに入るという他の山岳会メンバーで溢れかえっていた。今日は半日行程なので朝はゆっくり準備して土樽駅を8:30に出発する。すぐに橋を渡り荒沢山の山腹を巻くように辿る。漠然とした尾根の末端が確認出来たところから適当に取り付く。すぐに尾根は顕著となり後はこの尾根を登ってひたすら高度を稼ぐだけだ。トレースはないが雪の状態はよくワカンを付ければそれほど深くは潜らない。3時間ほどで荒沢山山頂。その少し手前の荒沢山~足拍子岳の稜線に出たところで幕を張る。午後から天気は下り坂となり夕方からは吹雪。途中シュラフから出て雪かきが必要になるほど降られた。

【2月25日 終日晴れ】
 今日は朝から快晴だ。明るくなるのを待って6:30には出発する。出発して数分で稜線は細く傾斜も強くなる。早々にロープを出してスタカットで進む。過去の記録はホソドのコルへの懸垂からロープを出しているものが大半であり、今年は雪が多く雪庇もかなり発達しているようだ。先が思いやられる。
細く不安定なリッジ  馬乗りになって進んだり雪が崩れて木に引っ掛かって止まるようなこともあり、なかなか苦戦する。雪が不安定でホソドのコルの懸垂支点となる木まで下降出来ない。しょうがないので細木を支点にして懸垂1ピッチ。ようやく本来の懸垂ポイントに辿り着き、ここから懸垂をもう1回でホソドのコルへ。早くも今日中に帰れるか不安になるようなスローペースだ。コルに降りると垂直に近い雪壁が立ちはだかる。雪の状態も悪くトップはかなり大変そうだ。ここは老兵が出しゃばる場面ではないので、エース古屋の出番となる。なかなか奮闘的な粘りの登攀となるが、中間部の垂直部分を見事突破し終了点の木まで上手く抜けてくれた。先頭が行ってしまえば後は楽チンだ。
ホソドのコルの先の急雪壁  この先は稜線も少し広くなりスピードがあがる。ただ相変わらず今にも崩れそうな雪庇の上を通過する必要がある(そこしかルートが無い)ので先頭はスタカットで進まざるを得ない。足拍子岳との鞍部の手前100mくらいのところで後続の3人パーティに先を譲る。後からトレースを追うのと先頭とではまるで見える景色が違い、ずいぶん楽をさせてもらう。鞍部からは一気に尾根が広くなりようやくロープから解放される。
 この時点で本日中の下山は五分五分か6:4でビバークを覚悟していたのだが、ここから2パーティ7名で力を合わせて交代しながらラッセルしたおかげで一気に時間と距離と高度を稼ぐ。足拍子岳山頂には14時に到着。これで本日中の下山も目処がついた。
足拍子岳山頂にて  記念写真を撮って早々に下山を開始するが、急にガスってきて視界があまり利かなくなってくる。『岳人』のルートガイドには山頂直下は雪崩注意との記載があるが、まさにその直下を下降中に雪崩の前兆と言われているワッフ音が数回鳴り響く。嫌な感じになるが行くしかないのでそのまま進む。視界が悪い中コンパスを合わせて南峰頂上へ。ここからの下降は急なので後ろ向きで慎重に降りる。足拍子岳南尾根で唯一のロープポイントとなっている岩場のトラバース地点はそこそこ雪が付いており大丈夫な気もしたが、念のためロープを出す。この先はただ歩いて下るだけだ。途中から南尾根を途中で引き返したと思われるトレースと合流し、ルーファイも不要となる。美しいブナ林を快適に下っていくが、標高が下がると雪が重くなり同時に足も重くなる。それでもトレースのおかげで暗くなる前には土樽駅に戻ることが出来た。まさに「小粒ながらぴりりと辛い雪稜」の表現に相応しい素晴らしい雪稜ルートであった。

〈コースタイム〉
【2月24日】 土樽駅(8:30) → 荒沢山(11:30)
【2月25日】 幕場(6:30) → 足拍子岳(14:00) → 土樽駅(17:00)

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