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岩登り・海金剛スーパーレイ
荻原 健一

山行日 2018年4月8日
メンバー (L)荻原、西村

 このルートとの最初の出合いは雑誌「山と渓谷」2012年10月号のマルチピッチのクラッククライミング特集だ。圧倒的な高度感と眼下の険しい海岸線、そして垂直の大岩壁に走る美しいクラックに手足をねじ込みリードしているかっこいいお兄さんの写真。
 「行ってみたい!これ登れたらもうクライミング止めてもいい!」と思ったのを良く覚えている。その頃の私はクラック経験ゼロ。そのハードルの高さすら理解出来ていない自分がいた。それから5年半。振り返ると大して努力もせず、かろうじてクラック・マルチに分類されるかどうかの「錫杖岳・注文の多い料理店」を登ったくらいで、後は小川山や城ヶ崎の簡単なシングルピッチを少々リード出来るようになったぐらいだ。
 今年の1月に久しぶりに城ヶ崎でクラックを登った時にその面白さを改めて実感し、一緒に登っていた西村君に思わず長年の憧れルートであった海金剛・スーパーレインのお誘いをしてしまった。ほとんど勢いで声を掛けてしまったが、この時点で登れる裏付けは皆無。どうしよう?

 4月の本番までの準備としてやったことは下記の通り。
・ジムのクラック講習(無料)の8回シリーズをすべて受講した。
・フィンガークラック用にエイリアンを5本買った。
・3月に城ヶ崎へ2回行った。

 こんなんで本当に登れんの?今回はオールリードで行く予定だが、この程度の準備しかしていない自分に本当にそんな力があるのか?大集会から4月8日の登攀予定日までの約1週間、悶々とする日々が続いた。

【4月8日晴れ&非常に強風】
 そしてその日はやってきた。前夜からやたらと風が強く今日も強い。取付きまで行っても風が弱くならなければ今回は敗退でもいいかなーなどとブツブツ考えながら出発する。

(アプローチ)
 車道の「雲見54」と書かれた電柱の脇にある踏み跡から山の斜面に入り、斜面をトラバースするようについた道を進む。最後はフィックスロープが張られた壁を懸垂で降りる。ここでハーネスなどを装着していると、準備万端のガイドパーティ(3名)に抜かれる。結局、今日は我々とこのガイドパーティの2パーティのみだった。アプローチは懸垂やその準備も含めて1時間弱。最初から準備して全く迷わなければ30分~40分と言ったところか。

(1ピッチ目)5.7
 グレード通りの簡単なコーナーを登る。トラバースが始まる少し手前の灌木で切る。

(2ピッチ目)5.8
 トラバースは事前の情報通り物凄く怖い。出だしの直上部分でナッツを一つ使用。トラバース手前は2番が決められる。

(3ピッチ目)5.10a
 フィンガーセクション。上部の右上フィンガーが核心でフットホールドがややバランシー。ここはナッツと0.3以下のカムを大量に使用。
4ピッチ目以降を望む(まだ先は長い)

(4ピッチ目)5.10a
 ハンド~シンハンドで右足ホールドが無くなるところが核心か?終了点手前のオフウィドゥスは5番が良く効く。ニーロックで這い上がる。

(5ピッチ目)5.10a
 3ピッチ目同様のフィンガーセクションだが、フェイス的に登れるので体感的にはだいぶ簡単に感じた。ガイドパーティは風が強いとのことで、ここで引き返して行った。

(6ピッチ目)5.9
 グレードは高く無いが、体感的にはこのルート中で一番難しく感じた。他の記録を見ても苦労しているものが多い。出だしは右足ホールドのないワイドから始まり頭上はハング。右のスラブに逃げることも可能だが正規ルートはハングを左上する。出だしで4番、ハング手前で5番が決まる。ハング越えはやや奮闘的になるが上手くフリーで抜けられた。

(7ピッチ目)5.7
 1ピッチ目と同じグレードが付いているがこちらの方が遥かに難しい。オフウィドゥスは4番を決めてから登る。乗っ越し部分は足がないので腕力がいる。その上のスラブを慎重に登れば終了点だ。

 終点でパートナーとがっちり硬い握手。終わってみればオールオンサイト。感無量だ。

眼下の大海原が素晴らしい

 強風が吹き荒れる中、苦労しながらも大きなトラブルなく懸垂下降で取付きへ。
 ようやく終わった。パートナーとこれまでクラックの練習に関わった全ての人に感謝です。

〈コースタイム〉
【4月8日】
雲見オートキャンプ場(6:15) → 取付き(7:30) → クライムオン(8:00) → 終了点(13:00) → 取付き(14:30) → キャンプ場(16:00)


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