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縦走・景鶴山
鈴木 章子

山行日 2018年4月21日~23日
メンバー (L)鈴木(章)、中澤、津田

 雪の尾瀬は静かで無の世界。その中でも尾瀬ヶ原対岸に小さく三角形に聳える景鶴山は印象的。そんな景鶴山へこれまでスキーで2回トライしたが、どちらもタイムリミットで敗退。その後、長い間、空白になっていたが、久々に徒歩で登ることにした。しかも、尾瀬ヶ原に当日着けるようにと鳩待峠への道路開通の日を狙って。
 冬の間は、戸倉スキー場から大清水峠泊で尾瀬ヶ原に向かう。これで1日が終わってしまう。3月の尾瀬ヶ原は風の強い日が多く、雪原横断に時間が掛かり与作岳手前でタイムリミットになり帰らざるをえなかった。今回を最後にしたい熱い気持ちで、膝の状態が良くなかったが出発した。

 東川口駅を前夜22:30に出発、鳩待峠に着いたのは1時。駐車場の半分は埋まっていた。車の中で仮眠の人がほとんど。テントはまばらだった。我々も車の中で仮眠。
 空は明日の好天を約束するかのように満天の星、星屑までが輝いて見える。これだけの星を最近見たことがなかったが、それを観賞する時間も作らず横になった。
 早朝、4時頃から出発するパーティもあったが、計画に余裕のある我々は7時半ころ出発。無雪期なら1時間もあれば山ノ鼻に到着するが、膝の状態が非常に悪く、下りは悲鳴をあげながら1時間半もかけてたどり着いた。山ノ鼻から見渡す尾瀬に雪の少ないのにびっくり。当初計画していた景鶴山からの周回コースは地肌も見え沢も広くなっていた。ピストンになるだろうなと思いながら、暫く休み、雪原へ足を進める。
 広い雪原を歩く3名の姿を、尾瀬の生意気なカラスが見ている。山ヤには尾瀬のカラスは大敵。食料を取られるのを何人見たことか。生意気で図々しい奴。今回も要注意。
炎天下の雪原  雪の付いた木道は、時折繋ぎ目に落ちるので、3名好きなところを歩いた。が、東京でも30度という暑さ、変化のない道でもあり、ヨッピ橋に着くころにはぐったり。この時期は欄干がまだない。手すりにつかまりながら欄干の上を1歩ずつ、足元の水流を見ているうちに気分が悪くなってきた。橋を渡り終え休憩、これからのルートを話し合う。景鶴山頂には雪が全くない。その先も雪解けが早く下山後渡渉になるかもしれない等々の結果、東電小屋を避けるように幕を張り景鶴山ピストンになった。
 取付きか?赤いテープの見える雪原に幕を張る。傍には雪代(雪解け水)が滾々と流れている。遠く尾瀬の湿原を2~3名が歩いていく、空は群青色。雪の尾瀬が初めての2人、こんな静かな尾瀬に出会えたことに感激、尾瀬の本当の姿を3人で満喫。
 お茶を飲み、昼寝をする者、散歩に行く者。各々好きに過ごす。心から休暇を感じる。雪のあるときのみ許される尾瀬ヶ原の幕営。ぜひ1度は体験してほしい。
 お茶を飲みながらうとうとしていると15時頃から一人、二人と与作尾根から下山してくる。それぞれ満足そうに自慢話をする。明日は我々の番だ。トレースもばっちり。今回は登頂できそう。膝よ頑張れ!
 夕方になると気温も下がりだしたが、夕食は屋外で済ませた。その後は、大酒を飲まない3人には特にすることもなく早々に寝ることにした。明日は明るくなったら出発したい。寝る前に見あげた星空は今宵も星屑までも見え、尾瀬ヶ原全体の丸い空がやけに広く広く見えた。

与作岳山頂  翌朝、5:40に出発。雪が良く締まりアイゼンの効きもいい。与作岳目指し緩い斜度の尾根を登り始めるも思いの外遠い。1,800m付近で出会った単独の男性は当会のSさんに似ていた。彼は与作岳山頂で幕営したと、「昨夜は満天の星空、尾瀬ヶ原にかかる天の川が、それは、それは美しかったですよー」と、話し方までSさんに似ている。別れた後も暫く彼の話題になった。
 与作岳山頂は野球場のように広く尾瀬ヶ原全てが、背後には会津・越後の山々が見渡せる。Sさんに似ている人の幸せ感が理解できた。前方に黒いピラミッドの景鶴山が自己主張している。
 一旦下ってから痩せ尾根に取り付いた。トレースはバッチリ。斜度もキツイ。僅かだが緊張する。山頂手前の黒い巨岩が印象的。そこを右に巻き込むと山頂。山は溶岩が固まったような岩で出来ていて1畳ほどの広さ。山名板はあるが写真を撮るのに少し苦戦。その先も僅かながら岩尾根になっていた。念願の山頂の印象は展望に負けているが好天の日に山頂に立てたことは感謝。しかし、この山を登ってくるのはなぜか単独行の人ばかり。女性は1人出会ったのみ。皆、山歴はそれほど長いとは思えないが。

景鶴山山頂景鶴山山頂からの眺望

 狭い山頂、一人登れば一人下る中、我々も早々に下ることにした。膝の痛い私は、下山は細引きに確保され、鞍部まで津田ちゃんのポチとなった。
 直下鞍部でゆっくり休み、往路を辿る予定だったが、中澤さんがケイヅル沢辺りを下る人が気になっていて我々も下ることにした。尾根上をドンドン下って沢に合流する辺りで、スキーで登ってくる人に沢の様子を尋ね、その後のルートを確認。自信を持って更に上ヨサク沢を渡り幕場へ着いた。
 我々が着く前に、明日の山菜取りが気になりだしたのか、幕場では既に中澤さんがテント撤収を始めていた。1時間ほどで終了。出発となったが、好天・夏日・雪からの反射で、雪原を歩く我々はまるで砂漠の中オアシスを求めて歩く迷い人。雪解けも進み雪原も水溜りが目立つ、山ノ鼻に着いた時には3人共ぐったり。ここから鳩待峠までは木陰と沢風が入るので、これまでとは違うが、後2時間、各自のペースで歩くことにした。しかし、最後の登り30分は長かった。

尾瀬ヶ原に向かって下る

 夜は道の駅「望郷の湯」で食事と風呂と仮眠(バス停で)をした。今回はいろんな所で宿泊をするが、全く違和感を覚えないメンバーなのが不思議。
 明るくなると出発。中澤さんの実家を目指し新潟へ。実家で長靴と鎌を借り現地へ。ウド採りが初めてと言う津田ちゃんは、中澤さんと共に急な斜面に張り付き見えなくなった。膝の痛い私は、コゴミ・ワラビ・ウド採りに励んだ。車道に登り見下ろすと2人が夢中になっているのが見える。そんなに採ってどうすんだえー。
 ミカン箱3箱ほどのウドを小分けして帰路につく。途中、10時開店の『から揚げ屋』がとても美味しく・安いということで立ち寄る。焼き鳥1本30円、から揚げがグラム80円。から揚げを500円購入、大皿一杯、美味しい美味しいと半分は津田ちゃんが食べたかなー。その後、ジョンナビの湯(道の駅)に入り帰京。思いっきり休日を過ごした実感の3日間だった。

〈コースタイム〉
【4月21日】 鳩待峠駐車場(7:25) → 山ノ鼻(8:55~9:00) → ヨッピ橋 → 取付き(幕場)(12:00)
【4月22日】 幕場 → 与作岳(8:05~8:20) → 景鶴山(9:25~9:40) → 直下鞍部及び下降点(10:00~10:10) → 上ヨサク沢合流(11:10) → 幕場(11:45~12:45) → ヨッピ橋(13:00) → 山ノ鼻分岐(13:55) → 山ノ鼻(15:10) → 鳩待峠(17:10)

〈費用〉
鳩待峠駐車料金1日 2,500円
戸倉駐車場1日 1,000円
戸倉~鳩待峠間バス代 980円


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