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雪稜登攀・白馬岳主稜
青木 綾子

山行日 2018年4月21日~22日
メンバー (L)西村、山蔦、古屋、青木

 金曜夜に東京を出発し、道の駅白馬にて仮眠。翌朝、二股のゲート前に到着すると既に道路には車がいっぱい。発電所敷地の入口にギリギリ1台車を停められるスペースを確保し、ここから猿倉まで1時間半ほどの歩きとなる。ゲートから猿倉までの舗装路に雪は全くなし。だったら早めにゲートを開けてくれればいいのにと思うが、決められた期日まで開通が早まることはないようだ。このゲートが開くのは翌週の予定である。
 猿倉からは雪上歩きだが白馬尻までは危険な場所はないのでつぼ足で行く。白馬尻にはいたるところに大きなデブリ跡があった。開けていて、テント張り放題のような場所ではあるが、ここで幕営する場合は設営場所をよく見極めなければならない。東京で集合したときにはなんとなく重い荷物を担ぎあげるのが億劫で、白馬尻に幕営して軽身で頂上を目指すのはどうかとの案もあった。しかしそうすると初日の行動終了には時間が早すぎるし、古屋さんの「稜線上で泊まりたい」との意見もあり今回はテン泊装備を担いで登る。
白馬岳山頂へ続く稜線  時期や天候によってはラッセルや氷化した雪壁などで苦労するのだろうが、今回はアイゼンの前爪を使うような場所もほとんどなく、雪稜というより雪山歩きという感じでひたすら登っていく。人気のルートだけあってトレースはバッチリ。今日も数パーティが先行しているようだ。日陰がほとんどないうえに快晴無風で汗が噴き出す。
 雪解けが進み、何ヶ所か雪の割れている場所があり慎重に歩く。途中テントが2-3張は張れそうな場所もあり、早く休みたいなーという願いを込めて「ここにも幕張れますねぇ!」と言いながら(チラッ)リーダーの様子を伺うが、まだまだ行動終了する気はないようだ。「まだダメ!2峰と3峰の間のコルまでは行く!」と厳しい西村軍曹の檄がとんだ。白馬ブートキャンプである。
 4・5峰のコルあたりで整地すれば平らになりそうな場所を見つけた。もっと上まで行くつもりだったが先行パーティに陣取られている可能性もあるので、ここを本日の幕営地とする。
 いつものように食事とお酒で楽しいひと時を過ごして就寝。深夜、日中の快晴無風が嘘のような強風がテントを叩き翌日の天候が不安になったが、朝にはピタリと風がやみ美しい朝焼けも望むことができた。西村さんはエアマットに穴があいてペチャンコになり寒くて眠れなかったそうだ。背中が冷えるのでうつぶせになったり仰向けになったりとぐるぐる回転しながら寝ていたら後ろも前もまんべんなく冷えてしまって「腹の調子がヤバイ」と、いろいろ大変そう。
 テントを撤収し朝日に照らされた山頂を目指して出発。日中はグズグズだった雪も明け方はいい感じに締まって歩きやすかった。振り向くと、歩いてきたスノーリッジがくねくねと曲線を描いて伸びている。
屈曲したスノーリッジを歩く  途中の短い雪壁でロープを出していた山スキーヤー2人を追い抜き、頂上直下、約60度の雪壁の前のコルへ出る。ここは少し広くなって安定しているので最後のピッチを登っている先行4人パーティを眺めながら順番待ち。山頂へ突き上げる雪壁は50mロープでは頂上まで足りないので2ピッチに切る必要がある。下の1段はフリーであがり、最後のピッチを西村さんが山頂までリードした。ロープを出したのはここ1箇所だったがトレースが階段状についていたおかげでそれほど難しい登りではなかった。
ハイライトの雪壁を越え山頂へ飛び出す  剱・立山方面の絶景を眺めながら白馬岳山頂から白馬山荘方面へ下りて休憩。あとは暑さでグズグズになり始めた白馬大雪渓を下山した。西村さんがシリセード中に新調したばかりのアイゼンを片方落として来てしまい、だいぶ登り返して探しに行ったが見つからずに戻ってきた。シリセードの際はアイゼンやザックに外付けしたものがいつのまにかなくなっていることがあるので落し物に注意である。
シリセード下山  下山後の温泉は、倉下の湯(600円)。北アルプスを眺めながら入れる露天風呂で、緑の濁り湯でなかなか良い湯であった。それから長野市まで足を延ばして「たなぼた庵」にて天もり蕎麦1,100円を頂く。普通でもお手頃価格なのに2人前はありそうな盛りのよさ、そのうえ「これで今日最後の蕎麦なので」とさらに1人前をサービスして頂き、お腹もいっぱい満足で帰宅の途についた。

〈コースタイム〉
【4月21日】 二股(8:00) → 猿倉荘(9:30) → 白馬尻(11:10) → 4.5峰のコル(幕)(15:40)
【4月22日】 4・5峰のコル(幕)(6:00) → 白馬岳山頂(8:40) → 白馬大雪渓 → 猿倉荘(11:30) → 二股(12:50)

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