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縦走・五色ヶ原
渡辺 守
内藤 美智子

山行日 2018年7月21日~23日
メンバー (L)渡辺(靖)、内藤、石毛、渡辺(守)

 新宿駅23時発の室堂行きアルペンバス。集合は残念ながら駅前のバスタではなく、熱気の籠る地下道を歩いて都庁バス乗り場へ。バス料金1万5千円は高く感じるが、翌朝の室堂到着や、扇沢からのコストを考えれば納得。リーダーの予約が良かったのか、足がゆったりのリクライニングし放題シートは大満足。今回はやや若い2人とややシニア2名の4名のメンバー構成。一般ルートとはいえ、北アルプス縦走の中では厳しいルートであり、災害級の猛暑がこの週末も続くとの予報で、気は抜けない。
 結果から言えば、とても素晴らしい縦走山行となった。特に2日目の長丁場前半戦、朝日を浴びなら雲海が少しずつ晴れていく稜線の景色は「やっぱり来てよかった!」。ザックからスマホを取り出し、渾身の一枚、遠くに笠ヶ岳、そして目指す北薬師、薬師岳への山道が続き、そこをメンバーが進む。左手にはもちろん槍、水晶、赤牛、野口五郎、烏帽子が見渡せる。その後の道のりは酷暑に阻まれなかなか大変ではあったが、無事に歩き通すことができた(詳細は内藤さんパートで)。

長年の課題だった薬師岳へ続く稜線を踏破

【7月21日】(記録:渡辺(守))
静かな五色ヶ原  話は夏山シーズン真っ盛りの室堂に戻る。青空の中、それぞれのパーティーが各方面に散っていく。やっぱり寝不足、歩きにくいコンクリート道で力がなかなか入らないが、我々は五色ヶ原方面にゆっくりと進み始める。ザラ峠あたりで面倒になるが、あと1時間と思ってぼちぼち進むと、きれいな草原が見えてくると木道になり、五色ヶ原に到着。
 小屋との分岐を過ぎキャンプ場に着く。三峰某ベテラン女子曰く、「雲ノ平よりいい」とのことだが、確かにそう思った。名前に魅かれてずいぶん前から来てみたかったので、実現できて良かった。草原に雪渓、小川と木道、雄大な山々に包み込まれるように存在するここには、是非とも次は連泊してゆっくりしたい。今回は軽量化目的に食当はこの日の夕食のみ。リーダーが豪華な豚野菜丼を振る舞ってくれる。下ごしらえばっちり、手際よく用意してくれて感謝、感謝!

【7月22日 晴れ】(記録:内藤)
 この日は五色ヶ原から薬師峠までコースタイム約12時間の長丁場。前日の様子を見ても1番心配なのは暑さ。少しでも涼しいうちに距離を稼ごうと3時起床、まだ薄暗い4時過ぎに出発する。五色ヶ原山荘を通過する頃には明るくなった。しばらくはお花畑の中に木道が続き、鳶山にゆるく登って行く。
 鳶山を過ぎた頃にそれまで覆っていたガスが急速に晴れて、前方に素晴らしい景観が広がった。目指す薬師岳だ。
浮かび上がる薬師岳  ガスが晴れたのは良いがどんどん気温が上がってくる。暑くなってきて帽子をかぶってないことに気付く。テントの中につるしたまま回収するのを忘れたのだった。そのままテントと一緒にたたまれてしまったに違いない。最初の休憩でテントを出してもらい広げてみるが帽子はなかった。自分のザックの中にもない。テン場に着いて荷物を広げたらどこかから出てくるかもと思ったが、結局見つからず、なくしてしまった。帽子を2つ持ってきたと言う靖代さんに貸してもらい、下山まで無事に過ごすことができた。
 越中沢岳の登りは広く、緩やか、ガスがあると迷いそうなところだ。振り返ると五色ヶ原の向こうに小さく剣岳の山頂が見えた。この辺りまではまだそれほど暑くもなく、快調に進んできたと言えよう。
 越中沢岳の頂上からは目の前に薬師岳が大きく見え、スゴ乗越小屋を確認することができた。この日のコースではスゴ乗越小屋が中間地点、あそこまで行けば何とか先のめどがつくのだけれど。山頂標識に「近くて遠いはスゴの小屋 アップダウンが続くよ!」と書いてあった。
 越中沢岳からはザレ、ガレの急な下りのあとに足場の悪いトラバースもあり、神経を使う。まだ朝と言える時間だけれど暑さもひどくなっていく。わたしは段々と他のメンバーから遅れがちになった。山行前にひいた風邪が治りきっておらず、体調がいまひとつ良くない。スゴの頭への登りはほとんど日影がなく、とにかく暑くて気が遠くなりそうだった。スゴの頭の休憩でみんなに追いつくもすぐにまた遅れがちになる。スゴの頭からの下りは登山道が西側になるところは風が吹きあがってきて涼しく、東側になるとカンカン照りで暑い。スゴ乗越は日当たりが良すぎて休む気も起きなかった。
 中間地点のスゴ乗越小屋に着いたのは10時過ぎ。ここまで休憩込みで6時間くらいで来られたので薬師峠までなんとか行けそうな気がしてきた。しかし私は他のメンバーより遅れ気味だったので守さんがわたしが持っていた共同装備のテントポールを引き受けてくれた。
 後から思い返すとこの越中沢岳からスゴ乗越小屋の間が一番暑くて大変だった。このあとも同じような暑さが続いていたら、私は薬師峠まで辿り着けなかったかも知れない。
 スゴ乗越小屋からしばらくはまだ樹林帯の中で暑かったが、やがてハイマツとお花畑の間を行くようになると風が出てしのぎやすくなった。小屋から1時間ちょっとで間山。間山から先はずっとガレた登山道が続く。午後になり、時折ガスが湧くようになった。北薬師岳の登りは大きな岩の上を辿る。風が常に西側から吹き上がっており、暑さを感じなくなる。
 北薬師岳の頂上からは目の前に薬師岳が見える。すぐ横に見えているけれど、金作谷カールを隔ててぐるっと回っていくので近いようで遠い。北薬師岳から薬師岳までは細い岩尾根を登ったり下ったりでかなり緊張する。気を付けていけば普通に歩ける一般ルートとは言え、転べば命にかかわるようなところだ。
 午後3時、この山行の最高峰薬師岳の頂上にようやく辿り着いた。先に着いていてもう下山開始しようとしていた守さんを引き留めて4人で写真に納まった。
薬師岳頂上、南側は雲で見えず  今まで通過してきた山頂の標識はみなボロボロだったけれど、薬師岳はさすがにちゃんとしたものが立っていた。さっきいた北薬師岳や東側の赤牛岳は見えていたが、黒部五郎岳や槍ヶ岳などが見えるはずの南側は雲に覆われて何も見えなかったのがちょっと残念。
 あとは薬師峠まで下るだけ。と言っても疲れた体にはこれも長く感じられた。薬師岳山荘までは植物がほとんどない砂利道。山荘から下はハイマツ帯とお花畑。30分ほどで木道が通りケルンとベンチがある薬師平となる。そこを過ぎ、沢沿いに出るとうってかわって整備されていない登山道となる。沢で顔を洗っているうちに先に行くメンバーが見えなくなってしまい、あまりにも登山道らしくないので間違っているのではと不安になり、行ったり来たりする。他に道はなく沢沿いに下って行くが、沢に慣れない人には大変そうな下りだ。折立から薬師峠までの至れり尽くせりの整備具合を知っているのでその落差に驚く。
 午後5時すぎに本日のテン場、薬師峠に到着。みんなよりかなり遅れ、ヘロヘロになりながらも2日目の長丁場、なんとか歩き通せた。個人的には長年の課題だった薬師岳に登れたことがとても嬉しく、この例会を出してくれた靖代さん、一緒に歩いてくれた守さんや石毛さんに感謝したい。

【7月23日】(記録:渡辺(守))
 3日目は8時50分のバスに間に合うよう5時半には出発。薬師沢、赤木沢の二本を遡り、黒部五郎、雲ノ平、野口五郎と縦走したのは何年前のことか。その夏も暑かった。そんなことを考えながら太郎平小屋を過ぎ、折立に予定通り下山。バスで着いた有峰口駅は何たる暑さ。富山方面に向かう地元のおばさん数人も集まってきて、世間話が始まる。そして声をかけられ、山の話となる。いつもの和む風景だが、それにしても暑い。富山駅より一つ手前の稲荷町で下車し、いなり鉱泉でさっぱりする。タクシーを呼び富山駅に向かい解散となる。
 素晴らしい山旅であったが、個人的には残された北アルプス一般縦走ルートを、去年の白馬不帰キレットと今回で踏破できたので、満足度はさらに高かった。リーダーに改めて感謝。

〈コースタイム〉
【7月21日】 立山室堂ターミナル(7:55) → 浄土山(9:40~10:00) → 龍王岳(10:30) → 獅子岳(12:10) → ザラ峠(13:20) → 五色ヶ原キャンプ場(14:05)
【7月22日】 五色ヶ原キャンプ場(4:15) → 鳶山(5:10) → 越中沢岳(7:00~7:15) → スゴの頭(8:30~8:45) → スゴ乗越小屋(10:10~10:35) → 間山(11:50~12:00) → 北薬師岳(13:50~14:00) → 薬師岳(15:00~15:20) → 薬師峠キャンプ場(17:15)
【7月23日】 薬師峠キャンプ場(5:05) → 五光岩ベンチ(6:05~6:15) → 三角点(7:15)~折立(8:20)

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