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沢登り・笛吹川東沢釜ノ沢東俣
野畑 祐子

山行日 2018年8月25日~26日
メンバー (L)齊藤(慈)、石毛、野畑

 この週末も台風だった。今年の夏は、いったい何回台風に泣かされたことか。例会山行計画は宝川ナルミズ沢の予定だったが、週半ばに天気予報を見て、また気分が落ち込んだ。いっそのこと稜線に出て、馬蹄形縦走でもしようかと齊藤リーダーと悩んだが、比較的台風の影響が少なそうな、大菩薩嶺の小室川に転進を決めた。
 金曜夜、混みあう中央線に乗り22時に八王子駅に集合。道の駅たばやまに前泊する。来てはみたが、実際に沢に入るかどうかは翌朝の川の様子を見て決めようということになり、とりあえず就寝した。

【8月25日(土)】
 翌朝、下の丹波川の様子を見る。雨は止んでおり水も濁ってはいないものの、水量はいつもよりかなり多い。
 とりあえず、小室川の入渓点まで行ってみようと、三条新橋のゲートに車を止めて林道を歩きだした。林道を20分程歩いた入渓地点には「小室向中継点」という標識が立っている。そこから沢沿いへ降りると...こりゃだめだ。入ったら最後、流されるのは必須だろうという激流。しかたなく車へ戻る。
 どうしようかと悩みながら大菩薩峠側へ車を走らせる途中、過去の釜ノ沢遡行の話が出て、せっかくなので見てみようとそのまま西沢渓谷へ向かった。
 西沢渓谷駐車場に着き、沢装備を整える。重い渓中泊装備を持ち、東沢入渓点まで歩を進めた。
 東沢から釜ノ沢の出合まではほぼ沢沿いの登山道で行けるが、東沢も水量が増しており、何度かある渡渉点では流れが強く一歩を出すのに難儀した。齊藤さんが、渡渉しやすい場所の見つけ方や足の進め方、スクラム渡渉の方法を教えてくれて、何度か試すうちにようやく慣れてきた。

水量が多いほら貝のゴルジュ

乙女の滝と切り立った岩壁  ほら貝のゴルジュに着くころには陽が差し始めた。両岸に流れる乙女ノ沢、東のナメ沢、西のナメ沢や、切り立った岩のゴルジュの造形美に目を奪われながらも、足をすくわれないように注意しながら進む。水量が少なければ水線沿いを行きたいところも、今回は登山道を選択し進んだ。
 途中他の15名ほどの大人数パーティーに出合ったが、今日中に釜ノ沢の幕場到着は難しいとの判断だろう、出合より大分手前の高台にタープを張り始めていた。
 私たちは先へ進む。思ったより時間がかかったが、3時間経ってやっとのことで釜ノ沢出合に到着した。
 魚止めの滝の巻きは、ちょっといやらしい。右岸の岩壁にロープを出してもらい登ったが、下側の足を掛けられる箇所の間隔が広く、ちびっこには足が届かない。小室川用に準備したフェルト靴では壁面へのフリクションが効かず、ロープに全荷重をかけ引っ張り上げられながら、腕の力で無理やり体を持ち上げ、やっとのことで上に辿りついた。

魚止めの滝魚止めの滝の美しい落口

 滝を越えて進むと、釜ノ沢の最大の見どころ、千畳のナメが現れる。しかしそこは、戦場のナメになっていた。おだやかな水量なら、広々としておりさぞかし美しいナメなのだろうが、私たちが通った時には、その水流の強さに、置いた足の後ろに見事な飛沫が飛び上がり、動かずにしてサーフィンをしているような風体であった。こんな機会もそうそうあるまいと、調子に乗って写真を撮りまくる。
 両門の滝は東俣右を巻いて難なく通過し、17時ごろに広河原にて幕を張った。ここで、石毛さんの思わぬ特技が披露された。倒木で薪を作ったのだが、ノコギリで木を切るのが異常に速い。私の5倍ほどのスピードで手早く薪を作っていく(それで「ノコちゃん」というあだ名を付けたが、まだ会では定着していない)。
 その夜は、齊藤さんが持ってきてくれた手持ち花火をやったりして楽しんだ。朝からの転進劇で疲れていたのか、皆早々に眠りについた。

まるで水の上を高速移動しているよう夜は花火で盛り上がる

【8月26日(日)】
ポンプ小屋到着!  翌日も晴天。2日目の行程は、大滝の高巻き以外は単調なゴーロ歩きとなる。
 遡行図には大滝は左岸を巻くと書いてあるが、この左岸の巻道が不明瞭でよくわからない。前のパーティーは右側のガレに登って行ってしまったが、どうやらそこではなく、立ち往生している。少し戻ってみると、滝の右側をあがってすぐのところに、色が白っぽく変色してしまっているピンクテープがあった。そこを上にまっすぐ登っていくようだ。ただ、この巻道もかなり悪い。ボサや枝をつかみながら、細かいホールドを拾って体を無理やり持ち上げる。
 大滝を越えるとまたナメ滝になり、最後は長いガレ登り。息がすっかりあがったころに、ポンプ小屋が小さく見えた。齊藤リーダーの「あそこまで行ってから休もう!」という掛け声のもと、ポンプ小屋まで登りきる。
 到着し冷たい水を飲んでいたら、3人組のパーティーが追い付いてきた。大滝の巻道から一緒だったパーティーだ。うち一人の若い女性はわらじを履いており、おお!と思ったが、その彼女がポンプ小屋の水を丁寧に浄水器で濾過しており、わらじという古風な道具と浄水器という最新グッズのアンバランスな感じに、少し笑ってしまった。
下山途中の賽の河原から  ポンプ小屋から10分ほど登山道を登ると、甲武信小屋に到着。沢靴を脱いで干しながら、小屋前にいた徳ちゃんと雑談する。徳ちゃんによると、数日前に沢に入った1名の男性の行方がわからなくなっているそうだ。この土曜には、一ノ瀬川本流に入ったご夫婦が流されてお亡くなりになった事故もあった。沢登りは危険な遊びだと改めて思った。
 しばし徳ちゃんと話した後で、熱さでバテながら徳ちゃん新道で下山した。
 今回も、渡渉方法や高巻きのルートファインディング等、色々と学ぶことが多かった。また、転進にあたって、準備不足や自身の知識・経験不足等の反省点も多々あった。これらの経験を忘れないよう、しっかりと胸に刻んで研鑽していきたい。
 齊藤リーダー、ご指導いただきありがとうございました。

〈コースタイム〉
【8月25日】 三条新橋ゲート(7:10) → 小室川入渓点(7:30) → 三条新橋ゲート(7:50) 西沢渓谷入口(9:50) → 東沢入渓点(10:30) → ほら貝のゴルジュ(11:18) → 釜ノ沢出合、魚止めの滝(14:15) → 千畳のナメ(14:45) → 両門の滝(15:15) → 幕営地(17:00)
【8月26日】 幕営地(7:00) → ポンプ小屋(9:00) → 甲武信小屋(10:20) → 西沢渓谷入口(13:30)

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