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沢登り・小黒川本谷
内田 優生

山行日 2018年7月14日~15日
メンバー (L)内田、金子、永岡、千葉(快)、野畑

 三峰では何故か例会に上がることがなかった小黒川本谷。 この沢は今年4月に行った伊那の種平小屋のオーナー夫妻からおススメされて、初心者向けだというので例会に出してみた。早速、今期沢に燃えている2名が手を挙げ、残り2枠をベテランが固め幸先良いスタートとなった。
堰堤にかかる長い階段  それにしても今年は7月から猛暑が続いている。3連休も沢にはうってつけの天気となり、小黒川本谷の後にオマケで日帰り沢まで計画することになってしまった。前夜、桂小場まで車を入れ仮眠を取る。既に林道には車が数台泊まっていた。翌朝林道を10分程歩いたところで小黒川にぶつかる。今回遡行する小黒川本谷はほぼ信大ルートが沢に沿って通っており、何かあれば藪を漕いですぐに登山道に上がれるというところも、初心者向けの沢と言われる点なのかもしれない。入渓してすぐに巨大堰堤にぶつかる。ここは堰堤の左に梯子や階段が設置されており簡単に巻くことが出来る。
 ほどなくしてマナイタダラ沢と出合う。マナイタダラ沢を過ぎると、8mの連続した滝が現れる。1段目は水流の左壁をまっすぐ上がり、いったんピッチを切り後続を引き上げる。そのすぐ上の8mは水流より手前の右岸を上がり、若干厭らしい草付きのトラバースをして滝の真上に出る。途中には真新しいボルトが打ってあり、ありがたく使わせて頂く。今回ロープを出したのはここだけだった。
 その後すぐに将棋頭沢と出合い長めに休憩を取る。平水時の水量は定かではないが、つっぱりで登るというトイ状の滝の水量があまりに威圧的なのでスゴスゴと巻いてしまうこと数回。

8mの連瀑(唯一ロープを出した箇所)水量豊富なトイ状の滝

 しかしこの沢は本当によくフリクションが効く。どんなスラブも忍者のごとく登れる。奥秩父や尾瀬の沢とは全く違う爽快感。その後今回一番印象に残った4m巨岩滝が現れる。ここは滝のカーテンをくぐり裏側を通ると岩に囲まれたスペースがぽっかりと開いていてそこから巨岩を乗っ越す。相当な水量なのでこの滝のカーテンで一同ずぶ濡れになるがこれがなんとも面白い!一瞬目の前が全く見えず、とにかく前の人にくっつきキャーキャー言いながらシャワーカーテンを潜ると気分はすっかり夏休み!

4m巨岩の滝滝の裏側を突破

 猛暑ならではの楽しみ方で、秋口にはちょっと厳しいかもしれない。滝はその後も続くがほぼ全て直登できる易しいものばかりで、各々のルートで皆快適に登っていく。
 順調に高度を上げ2,200メートルの二俣には2時前くらいに到着した。記録にある通り、ここ以外は幕場となるような場所はなかったように思う。そして快適な幕場と書かれていた場所は今シーズン誰もまだ泊まった形跡がないほど藪に覆われていて、しばし整地作業に時間を費やす。

快適に登れる滝が多い整地後快適な幕場へ変身

 その後薪集めとなるが、残念な事に薪がそこまで豊富ではない。ほとんどの薪が濡れていて、男性陣が太い流木を切って相当量集めてくれたものの、なかなか火がついてくれない。やっとついたかなと思う頃に激しい夕立となりあえなく鎮火。仕方なくタープの下で宴会を続行する。今日誕生日を迎えたKGのために野畑さんがサプライズでケーキを担ぎ上げていた。あっぱれ。AKG48も大満足な様子。仲間にお祝いしてもらってよかったね。この後、前夜の寝不足も相まって皆早々に就寝。
西駒山荘へと続く登山道  翌朝も快晴の中7時に出発した。幕場の二俣は左右どちらでも行ける。左に行くと西駒山荘直下に突き上げ、右に行くと稜線の下を通る登山道に出る。左の方が近道のように思えるが、右俣がほとんど藪コギなく稜線へ出られるとの事だったので、ここは右俣をチョイス。幕場から約2時間で登山道に乗り上げた。
 ほとんどのメンバーがこの辺りをまともに歩いた事がなかったので、ここに荷物をデポして時間も早いので濃ヶ池まで空身で散歩することにした。西駒山荘まで上がると、小屋番のお兄さんが石室の小屋の屋根に布団を干していた。長閑な風景で時間がゆっくりと流れていた。この石の小屋内部は非常にキレイで真新しい暖炉もあった。この小屋は冬季も開放しているようなので、是非いつか冬にこの小屋を訪れてみたいと思う。
 濃ヶ池までの道のりは途中に「聖職の碑」に出てくる遭難記念碑があるのだが、どういうわけか気づかず通り過ぎてしまった。 濃ヶ池はだいぶ干上がりかけていて、もはや池塘レベルだった。 若干残念な感じもしたが、青空に映える緑の稜線と奥に見える宝剣岳がそれを補って余りある風景へと変えていた。

稜線で喜びを表現水の少ない濃ヶ池

 稜線にはチングルマやコマクサが咲き乱れていて7月のアルプスを満喫することが出来た。西駒山荘に戻って来る途中に今回はちゃんと遭難記念碑を見る事が出来た。途中人一人入るくらいの岩小屋が登山道脇にあり、あーあれが生徒と教師が暴風雨の中一晩を明かして生還した岩小屋なのかな?など想像を膨らませて歩いた。碑は西南を向いて立っているので、木曽駒方面に歩いているとうっかり見落としてしまうのだろう。帰りは当初信大ルートの予定だったが、藪の状態がはっきりわからないので、ビールへの確実な道ということで一般道で下山した。中央アルプスにはアクセスも良く魅力的な沢がまだまだありそうなので、またこのエリアを再訪したいと思う。

〈コースタイム〉
【7月14日】 桂小場(7:05) → 小黒川入渓(7:20) → 将棋頭沢出合(10:15) → 二俣(2,200m)幕場(14:00)
【7月15日】 二俣(2,200m)幕場(7:00) → 稜線(9:00) → 西駒山荘(9:25) → 濃ヶ池(10:30) → 桂小場(15:15)

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