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初級1日目
早川 錠

山行日 2018年7月7日~8日
メンバー (L)永岡、箭内、天内、小芝、野畑、清水、石毛、碓井(お試し)

 動機は、例会山行で救助訓練の総監督の下村さんと会ったことから、人格・生き方に、また講習の内容にもとても興味があったので参加させていただきました。
 大滝キャンプ場に9時集合。土日合わせて、総勢25名参加の大所帯。講習内容はハイキング・一般縦走でのセルフレスキューを網羅した初級コース、沢・岩などでのクライミング中のセルフレスキューである中級コースに分かれて、2日間に渡って開催。1日目は初級コース、2日目は途中から中級コースに参加させていただきました。
 初級コースの1日目の講習内容は、各パターンの背負搬送(スリングのみ、雨具のみ、ザックのみ、ザックとストック)、2人・複数人で搬送する方法、担架の作り方(ストックとテーピング、ストックとツェルト、ストックと銀マット、ツェルトのみ)であった。
 各パターンの背負搬送は4つの背負搬送について思考錯誤して試した。スリング180mmを事故者の腰とおしり下に巻き、そのスリングを両肩に巻く方法(図1)、雨具の上着をポケットに手袋等の引っかかるものを入れて下着と結び、かっぱの腕と足を結んでそこに事故者を乗せて背負う方法(図2)、ザックに事故者を乗せて運ぶ方法、ストック等の棒状のものに銀マット等を巻き付けたものをショルダーハーネスの下部に流して、そこに事故者を載せて背負う方法(図3)である。図3の搬送方法はこの形に至るまで背負いやすい形を探して、ザックを裏向きにしてみたり、足を入れる位置を変えてみたりと試して、メンバーたちがこの形が最も背負いやすいと試していた。

図1 背負搬送(スリングのみ)図2 背負搬送(雨具のみ)
図3-1 背負搬送(ザックとストック)図3-2 背負搬送(ザックとストック)

 2人での搬送方法は両サイドで肩と腕を組んだところに事故者を乗せて持ち上げる方法(図4)、スリング180mmの端部を2人の肩に掛け合ってそこに事故者を乗せて持ち上げる方法(図5)であった。後者はスリングが細いために肩への痛みはあるが、タオル等を間に入れれば痛みを軽減することができ、また腕への負担を減らせるので有効だと感じた。複数人での搬送方法は、両サイドから互い違いに手を組みあった上に事故者を乗せる方法であるが、写真は訓練に夢中になって撮りそびれてしまった。
 担架の作り方について、2本のストック(太い木でも良い)を30cm程度の幅で並べて、テーピングを斜めに巻き付ける方法を学んだ。(図6)この方法で訓練していた時、体重62kgにストックが耐え切れずに折れてしまった。テーピングの代用品として、ツェルトや銀マットでも試して(図7)、人が乗れることを実証した。また、ツェルトで担架を作る場合、カラビナを仕込んでそこにスリングをかけて肩にかける方法(図8)を試して、午前を終えた。

図4 2人で持ち上げる方法(1)図5 2人で持ち上げる方法(2)
図6 担架(ストックとテーピング)図7 担架(ストックとツェルト+銀マット)

図8 担架(ツェルトのみ)  昼からは外で背負搬送と担架での搬送を、全員が実践訓練。背負う感覚も背負われる感覚も、こういった講習でしか体験できないので貴重だった。あきら会長も合流し、都岳連では"レスキューネット(約4000円程度)"という搬送用のネットを扱っており、使用方法をご指導いただいた。(図9)永岡講師は約15時30分ごろに講習の終了宣言、その後、徐々に宴会モードに入っていった。
 中級コースの2日目の講習内容は本原稿では割愛。総監督の下村さんを筆頭に、各講師のおかげで貴重な2日間を過ごすことができました。

図9 レスキューネットによる搬送訓練図10 外での背負搬送風景
初級2日目
野畑 祐子

山行日 2018年7月8日
メンバー (L)永岡、箭内、天内、早川、森田(純)、清水、石毛、碓井、野畑

【2日目の訓練メニュー】
1. ツェルトの張り方
 まずは上級コースのツェルト講習を見学。ぴんと張れているか、風で倒れない強度になっているか等、チェックポイントを確認し、実際に自分たちでも張ってみる。支柱となるストックをセットし細引き2本を巻きつけて引くが、若干逆ハの字(上が開く)になるようにセットすると、途中倒れることもなく張ることができた。

ぴんと張れたツェルト

2. ハーネスがない場合の危険箇所の通過
 以下を教わる。
 - スリングで簡易ハーネスを作る方法
 - ロープで簡易ハーネスを作る方法
 - 支点構築:クローブヒッチ(インクノット、マスト結び)
 - 引き上げ:ムンター(イタリアンヒッチ、半マスト)※ロープ結び方のみ
 - ロープを使った急斜面の登り下り
 ①ロープのみで手の力で登る方法(ゴボウ)
 ②ロープの途中に数箇所手がかりとなる結び目を作る方法
 ③懸垂下降(肩がらみ、腕がらみ、カラビナとムンター、エイト環、ATC)

ムンターでの下降

 ④フリクションノットで登る方法
 ⑤アッセンダーで登る方法
 - トラバースのロープでの通過方法
 ※掛け替えするときは、自分のカラビナはロープから外さず、中間支点のカラビナの方を外して自分のカラビナを通過させ、再度中間支点のカラビナをロープに掛けること

トラバースの通過

 2日間の講習では、大先輩方が実践の中で培ってきたことを教えていただくことができ、大変勉強になった。非常時にすぐに対応出来るよう、何度も繰り返し復習したい。

中級
青木 綾子

山行日 2018年7月7日~8日
メンバー (L)下村、他14名(参加者は文中参照)

 救助講習中級(岩登り)の備忘録
 今回はチーフ講師役として下村さんが実践に近い形での救助を想定して準備してくれた。

 講師役:下村、軽部、渡辺(靖)、青木
 メンバー:佐藤、紺野、菅原、渡辺(守)、津田、内田、吉岡、千葉(快)、早川、大田、千葉(朋)(早川、大田、千葉(朋)は2日目のみ)

事前準備をお願いしたこと
①基本ノットの確認
・ムンターミュール
・立木にボーライン
・立木にクローブヒッチ
②ツェルトの張り方(張綱を用意)
③参考テキスト
「都岳連セルフレスキューテキスト」
「セルフレスキュー」ヤマケイテクニカルブック

講習内容
【1日目】
①搬送法(大滝キャンプ場ロッジ前にて)
 ザックを利用した背負い搬送
・ザックとハーネスを連結
・ザック、ストック、マットを利用
・ロープを利用した簡易ストレッチャー(デモのみ)
 銀マットをストック等に巻きつけてショルダーストラップにかけ、事故者が腰かけるようにしてザックを担ぐと双方が比較的楽に担げた。ロープを利用したストレッチャーは1人を多人数で担げる方法ではあるが、編み方や手順をしっかり頭に入れておく必要がある。

鬼石沢近辺へ移動し、実践を意識した練習
②下降
 (状況)クライミング途中でのパートナー負傷。事故者を降ろす。
・ウォーミングアップ:立木に支点をとり沢へ懸垂下降
・介助懸垂:ポイントは懸垂下降のバックアップ方法、振り分けのセットなど
・背負い下降:事故者を背負って第三者にロワリングしてもらう。
③引き上げ
 (状況)セカンドをビレイ中にセカンドが負傷。トップが事故者を引き上げる。
・ATCのオートロックはそのままにして1/3システムで引き揚げ...ロープとギアとの摩擦もあり重い。完全にぶら下がった状態での引き上げは難しい。
・バイパスを作ってATCを解除、1/3システムで引き揚げ...最初の方法よりは引き揚げやすい。折り返し部分にプーリーを使ったり各種ギアを試してみた。
④チロリアントラバース
 (状況)沢をはさんでロープを張り、事故者を移動させる。
 樹林帯で立木を利用してデモのみ行う。離れた場所にある立木に渡したロープをビンビンにテンションをかけて張るのに結構力を使う。ロープを外すときも大変だった。

【2日目】
①ツェルト張り
 ツェルトは持っているけど実際に使ったことのない人もいるのではないだろうか。広い河原で立木がない状況で各々ツェルトを張ってみる。最後は他の人の張ったものを見学して品評会。いざというときのため、ツェルトを張る経験をしておくのはよいと思った。

皆でツェルト張り品評会

②空中での登下降
 立木の上からロープを固定し、登り返し、停止、下降器のセットなど。
③斜面での搬送シミユレーション
 (状況)沢で仲間が足を骨折。救助要請しヘリ到着地まで事故者を搬送する。
 これまで練習したことを組み合わせてのシミュレーション。3チームに分けて事故者搬送を行った。あらかじめ計測した場所の緯度経度のみ情報を与え、そこまで事故者を運んでもらう。
 流れ:状況の確認→警察への通報・ヘリ要請→搬送方法を考える→歩きやすい登山道へ引き上げる→登山道を搬送→ヘリ地点に到着

事故者を1/3システムで引き上げ

 事故者を背負った仲間を1/3または1/5システムで引き上げ、大人1人を担いで運ぶというのはかなりの重労働であった。岩場や沢でトラブルがあった際に、自己脱出して仲間を安全な場所まで移動するとういのは重要なスキルなので定期的にこのような訓練をしておきたいと思った。


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