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縦走・白峰三山
小芝 泰規

山行日 2018年8月25日~26日
メンバー (L)小芝、竹中

 この数年、時間を見つけては夏山の百名山へ行っている。三峰ではこのあたりの夏山はとうの昔に行ってしまったという会員が多く、もっとディープな山の楽しみを満喫している人たちばかりなので例会に出ることが少ない。私も岩登りに傾向していたこともあり、この一般的な縦走ルートをあまり良く知らないが、百名山といって親しまれているからにはそれなりの魅力があるはず。一度は行ってみたいと思っていた縦走路の一つがこの白峰三山だった。しかし、最近は仕事の都合であまり山に行けていなかったので体力が目に見えて落ちていて、2日で縦走できるのか不安な部分があった。まあ、百名山縦走企画は参加者ゼロの可能性もあるから、1人で登ってきつくなったら下山して健康ランドにでも行っちゃおうと高を括っていたところ、ハセツネカップ常連の竹中さんから、私も参加していいですか、という申し出があった。例会に出して参加者がいないというのは結構寂しい気持ちになるものだ。そこで手を挙げてくれたのは正直ありがたいし、嬉しい。しかし、その申し出を聞いたとき、なぜか額から汗が出てきた。
 山行日までの2週間、付け焼刃ではあるが走り込みと筋トレをした甲斐があり、以前より体が軽く感じられる。リタイヤせずに済みそうだ。そこで今回はせっかく体力のある竹中さんと行くことになったのだから、贅沢な食材は持たず、軽量化してスピードを意識した山行にチャレンジしたい。つまり、ウインナー山行にしたいと話してみたところ、その提案を快諾してくれた。
 山行当日の夜中に奈良田の駐車場に到着したとき、広い駐車場に車は数台しか止まっていなかった。雨が降っていたので車の中で軽く飲み、天気の回復を願って眠りについた。朝5時前に起きると雨は止んでいて、駐車場もだいぶ車で埋まっていた。5時半発のバスは満席で、広河原に到着した時には夜叉神峠からのバスも到着したばかりで、登山客でにぎわっていた。空は明るいが強い雨が降っており、雨が上がるのを待つ人と、カッパを着て歩き出す人に分かれた。私たちは10分ほど待って小雨になったのを見計らい歩き出した。
 小雨が続いているのと高い湿度で上半身はすぐに濡れてしまったが、気温が高いので時折吹く風が涼しく、不快感はない。自分の場合、登り始めで飛ばすと後半にバテやすくなるので一定のペースをキープし、体がなじむまで抑えめで歩いた。薄くガスがかかっているものの雨は上がり、いいペースで登り続けることができた。小太郎尾根に乗ると西からの強い風が吹き付けるようになり、時折よろけながら北岳に辿り着くと、なぜか山頂だけは無風だった。一口だけ水を飲んでから、また強風とガスの中を歩き進めて昼前に北岳山荘へたどり着いた。まだテン場には一張もなく時間も大分早い。小屋で会った、私たちと同ルートを辿ると言っていたパーティは、距離を稼ぐために農鳥小屋まで歩を進めると言って強風の中を出て行ったが、私たちは翌日の天候回復にかけて予定通り北岳山荘止まりとした。時間はたっぷりあっても気の利いたつまみは出せないので、炊事場に行動食の乾き物を持ち込んでチビチビやった。普段は気にしないが、他人が料理を作るのを見ていると、それぞれのこだわりを見つけたりして興味深かった。
待望の朝日  夜になっても風とガスは収まらなかったが、朝方目覚ましで起きた竹中さんが外をのぞくと、おおっ、星が見える!と言っている。シュラフから這い出て外をのぞき込むと、風も無く絶好のコンディションだった。早速湯を沸かし、アルファ米で朝食を摂ると出発の準備に取り掛かった。竹中さんはサクサクとパッキングを済ませ、刻々と白んでいく空をバックに山の写真を撮っている。
 わたしも準備を終えると、予定の時間よりだいぶ早く出発することができた。
 2日目は体が軽い。稜線歩きと下りしかないので朝からペースを上げるが、竹中さんは呼吸の乱れもなく、適度な距離を保って私の後ろを付いてくる。そして時折、新たに見えてきた山や、現在地までのコースタイムなどを教えてくれる。トレランでは基本的に止まって休憩をとることはないそうで、平坦なポイントなどでペースを落としてエネルギー補給をする程度だという。なので、休憩ポイントは私の好みの場所に合わせもらうことになるのだが、その都度写真を撮ったり山を眺めたりして楽しんでくれているようだった。
爽やかな風が吹く間の岳山頂  風が爽やかで気持ちがいい。前日出発したパーティに多少の背徳感を感じつつ、大パノラマの稜線歩きを堪能した。
 山行中は、最近は歩いてないから体力が落ちたとか、足の調子が悪いなど、無様にもペースへの布石を打ちまくりながら歩いて、昼、奈良田に到着した。しかし、蓋を開ければコースタイム×0.6ちょいのハイペースで、これは単独では無理なペース。竹中さんの存在が影響して頑張れたのだと思う。ゆっくり山歩きをするのは楽しいですよね。と言って急かすこともなく私のペースに合わせてくれた竹中さんにはほんとに感謝している。
 今回は竹中さんと2人だったので色々な話をすることができたことも良かった。トレランに打ち込むストイックな一面とは別人格の一面もあり、人間味のある人でとても親しみを感じた。美味しい居酒屋もたくさん知っているので、山に限らず今後も仲良くしていただきたい。

〈コースタイム〉
【8月25日】 広河原(6:25) → 北岳(10:10) → 北岳山荘(11:25)
【8月26日】 北岳山荘(4:40) → 間の岳(5:40) → 農鳥岳(7:20) → 大門沢下降点(8:00) → 大門沢小屋(9:40) → 奈良田(11:40)

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