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縦走・月山~肘折温泉
内田 優生

山行日 2018年10月6日~8日
メンバー (L)内田、高木、碓井、杉本、成田、青木、森田(純)

 昨年の6月に山菜山行を兼ねて本道寺コースから月山に登った。東北の山に来るたび頻繁に見ていた月山・鳥海山の内ようやく1座登る事が出来て大満足だったが、頂上から四方八方へと繋がる道を見て、今度は是非紅葉の時期に肘折温泉へ縦走したいと思うようになった。たいてい実現には時間がかかるものだが、今回は思ったより早く達成することが出来た。それも楽しい仲間と秋の山の恵み付きで。

姥沢から月山への登山道  計画段階で7人もいるとたいてい1人くらい脱落してもおかしくないのだが、前夜バスタ新宿には現地合流の1人を除いて全員顔を揃え、まずは幸先良いスタートとなった。今回台風25号の行方が最後まではっきりせず、直前まで中止もあり得ると考えていたが、なんとか直撃は免れ2日目の午前中の強風さえ凌げばなんとかなりそうだという判断に至った。山形駅には朝の6時半に到着した。カーテンで閉め切られたバスを出ると外は快晴。空気は初秋らしくカラっとしていた。一気に皆のテンションが上がる。ここから山交(やまこう)バスに乗り月山口で降りて姥沢まではタクシーで向かう。もう少し時間に余裕があれば、タクシーを使わずとも西川ICでローカルのバスに乗り継ぎ姥沢まで入れるのだが、この時期、日が落ちるのが早くなっているので、余裕を持って行動する為ジャンボタクシーを手配した。姥沢のリフト乗り場には9時過ぎに到着した。3連休中の台風前の小春日和ということもあり、リフトを降りた登山道は既に人でごった返していた。ここからゆっくり休憩を挟みながら頂上を目指す。頂上までのなだらかな道は既に草紅葉となっていて、空には秋の雲がかかっていた。明日は一転強風予報なので、今日のうちに思う存分景色を堪能する。朝日、蔵王、葉山に鳥海山とその向こうに日本海まで見渡せる。
 頂上は上高地レベルに人が溢れかえっていたが、肘折温泉を指すサインに従いたった10m進んだだけで、そこは誰もいない静かな東北の山。やっと一息つくことが出来ると誰もが感じたのではないかと思う。ここからは素晴らしい紅葉と静かな山を独り占め出来る贅沢と引き換えに、登山道はゴロゴロとした急な下りへと一転。膝だの腰だのお尻?だのに不安を抱える一団なので、急がずゆっくりとしたペースで下降していく。途中水が汲めると期待していた千本桜手前の沢は干上がっていた。ここで清川の渡渉までは水は期待できなさそうだと悟った。
草紅葉の絨毯の上で休憩  清川に降り立つまでの最後の下りの200mは道の真ん中が抉れていて、右へ左へと移動しながら下る相当歩きにくい道で、北アルプスの神岡新道を彷彿とさせた。雪が多い地方特有なのだろうか。月山頂上から千メートル以上の高低差を一気に下るので、やはり健脚者向けなのかもしれない。肘折ルートが月山の登山道の中ではマイナーだという理由がわかる気がした。以前倒壊した清川にかかる橋は、今は立派なコンクリートに変わっていて安心して渡る事が出来た。ここでようやく水分を補給することが出来た。何しろ天気が良いのはありがたいが、夏山状態で汗をかくものだから水がすっからかんになってしまっていたのだ。
 清川を越えてしばらくは沢沿いの道を湿原まで上がっていく。途中かなり崩れた部分があるものの、梯子やロープがあり助かった。小屋までの湿原歩きは疲れてさえいなければ天国のような道だった。一段と赤味を増した木々に快適な木道。その脇には小川のせせらぎがあり、空には鱗雲がかかっていた。それは秋の夕暮れが全て詰まった風景だった。
 念仏ヶ原避難小屋に着いたのは5時前。小屋の2階では「ころぼっくる」の6名パーティが既に団らんしていたが、我々が到着すると快く場所を開けてくれ布団を物置に移動するのも手伝ってくれた。 小屋の1階には冬支度の為に橋を下ろしに来たという地元の男性3名がストーブを焚いてまったりと宴会していた。1階は誰かの家じゃないかと見紛うばかりにモノに埋め尽くされて、生活の匂いが漂っていた。1階のストーブで火を焚いていたので、2階はシュラフもいらない程暖かい夜となった。
 予報通り夜半から風が強まり、夜中には開けっ放しの窓から小屋に風が吹き荒れていた。しかし大量の酒が入っている為誰も起きて窓を閉めようとはしない...。

清川にかかる橋念仏ヶ原避難小屋手前の湿原

出発前に小屋の前で記念撮影  朝起きて外に出てみると昨日とは打って変わってどんよりとした空に足元はツルツルの木道が待ち受けていた。風は時おり突風となり、周りの木々を激しく揺らすものの稜線は左右どちらかに防風林となる樹林がある為、風をまともに受ける事なく歩くことが出来た。これは本当にありがたかった。昨日歩いた稜線は今日は一体どんな状態なんだろうと気になった。人で溢れかえっていた頂上は今日は閑散としているのかな?そもそもリフトが動いているわけがないか、など考えながら黙々と歩く。小岳を過ぎると登山道脇の林の中にチラホラと少量のキノコが散見された。でも今日は残念ながら下山するのみで温泉宿は2食付き。だいたい疲れてキノコの処理なんて出来るわけがないと思いここは眺めるだけにする。ところがしばらく下っていくと遂に小沢を跨ぐあたりで大木にビッシリと張り付いたナラタケを発見!これぞ金脈ならぬ菌脈!!もうこうなると後先考えず、とりあえずナイフを出し大木にしがみつき、あとは採って採りまくる。沢で下山日だというのに、魚影を見るとついつい竿を出してしまう三峰釣りキチ達と同じ狩猟本能が働くらしい。その後もあっちゃんの動物的な視覚と嗅覚で林の中のキノコたちを目ざとく捉え、足軽(私)が取りに行くという行動を何度か繰り返す。用意していたビニール袋はブナハリとナラタケとクリタケで心地よい重さになった。
理性を失わせたナラタケの群生  肘折温泉までの下山路は昨日の月山から念仏ヶ原避難小屋までの道のりと比べると悪いところもさほどなく、快適に歩くことが出来た。昨日の下山ペースを考えると若干心配だったが、大休止することもなくいいペースで歩くことが出来た。12時半前には肘折の登山口に到着。ここから約1時間程トボトボと歩き、肘折温泉の宿「勇蔵」を目指す。14時には旅館に到着した。小さいながらも温かみのある宿だった。早速内湯に浸かり雨に打たれて冷え切った体をじんわりと温めてから宴会に突入した。下山路で採ったキノコは宿の自炊用キッチンでスープや炒め物へと変貌を遂げあっという間に皆の胃袋に収まった。翌朝は6時から開く名物の朝市を覗き、ちょこちょこ買い物して10時には新庄行きのバスに乗りこみ夕方前には帰京した。
 今回は普段あまり参加しないメンバーも加わり、新旧会員が入り混じる非常に三峰らしい山行となった。それにしても東北の山はいいな~と再認識。次はこの界隈にまた山菜山行で来よう!

活気づく肘折温泉名物の朝市

【交通】
 深夜バス: バスタ新宿23時30分→山形駅西口6時30分(6,900円)
 山交バス: 山形駅山交ビル7時20分→月山口8時22分(1,670円)
 月山観光タクシー: 月山口発8時25分→姥沢8時50分(ジャンボタクシー 9,700円)
 月山ペアリフト(580円)
 大蔵村営バス: 肘折温泉10時発→新庄駅 11時
 新幹線: 新庄駅11時17分→東京駅14時48分

〈コースタイム〉
【10月6日】 姥沢リフト降り口(9:30) → 月山(11:30~12:00) → 清川橋(15:45~15:50) → 念仏ヶ原避難小屋(16:50)
【10月7日】 念仏ヶ原避難小屋(6:10) → 磐梯朝日国立公園入口(7:25~7:35) → 月山登山口(肘折口)(12:15~12:30) → 肘折温泉(14:00)

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