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岩登り・大堂海岸・クライミングトリップ
荻原 健一

山行日 2018年12月29日~2019年1月2日
メンバー (L)荻原、西村、澤野、石毛、永岡、小芝、(O氏)、(T氏)、(小芝夫人)

 大堂海岸は高知県足摺岬より更に西に位置する、「最果ての地」と呼ぶにふさわしい岩場である。ルートの大部分はクラックであり、ポピュラーなルートの終了点を除いて、残置物はほとんどない。碧い空と海、白く輝く花崗岩とのコントラストは日本離れしていて、まるで海外にいるよう、まさに"クラック天国"であり、クラックをかじった者にとって一見・一登の価値は十分あると言えよう。

 大堂海岸の存在を知ったのは今年の4月。瑞浪(岐阜)でクラックを登った時に同行の軽部っちから聞いた。その時一緒にいた眞鶴君と3人で是非今度の正月に行こう!と盛り上がった気がするが、いろいろあってその時のメンバーで残ったのは私ひとり。それでも早々に賛同してくれた西村君がいろいろと盛り上げてくれて最終的に会員外メンバー3名を含む合計9名の大所帯でこの企画を実行することと相成った。

モンキーエリア 【12月29日】
 今日は移動日。前夜22:30に新宿に集合し、いざ高知県へ!結局仮眠はとらず交代しながら大堂海岸のある高知県大月町へ。14時頃の到着だったので15時間運転しっぱなしだったことになる。今日は登る時間は無いので予定通り偵察のみとする。宿に荷物を置いて15分も車で走ると大堂海岸だ。明日登る予定の「モンキーエリア」へ続く林道は昨年秋の台風で崩壊しているとのことであったが、土砂崩れで埋まっている箇所の手前の広場で車を止め、そこから15分も歩けば取付きへ下降する踏み跡入口に到着出来た。ここから10分くらいフィックスロープなども使いながら降りていくとモンキーエリアの取付きだ。10名くらいのクライマーがあちこちのルートに取り付いている。
豪華!海鮮料理  写真で見た風景以上に素晴らしいロケーションを実際にこの目で確認出来て、明日に向けてのモチベーションは最高潮だ。時間があったので隣の「ハーバーエリア」にも寄り道してから民宿に戻る。民宿の夕飯は評判以上の豪華海鮮料理で宴会も盛り上がる。

【12月30日】
 6:30起床で7:00に宿を出発する。途中のコンビニで朝食を取り大堂海岸へ。このルーティンは12/31、1/1と3日間全て同じ行動となる。モンキーエリアの取付きには8:00過ぎに到着し、テーピングその他の準備をしていると結局クライム・オンは9:00前くらいになってしまう。そして9:00-16:00までクライミングというのも3日間同じルーティンとなった。初日のメンバーは小芝夫妻を除く7名だが、結局KGは一度も登ることなく実質的に6名でのクライミングとなり、それぞれのレベルに合わせて好きなルートに分かれて登る。

スーパークラック  ここからは私の登ったルートを中心に記述することになるが、「大堂海岸と言えば、まずはこの1本でしょ!」と目を付けていた正面壁の"スーパークラック"(5.9)にトライする。ハンドジャムのルートだが、フリクションが良く効き快適にOSする。

モンキールーフ  次は"モンキールーフ"(5.10a)へ。スーパークラックが楽勝だったので自信満々でOSトライするが、ルーフ越えでモタモタしているうちに力尽きて残念ながらフォール。ワンテン後に落ち着いてムーブを組み立ててトップアウト。2便目で無事にRP出来た。

 さてこの2本が大堂海岸での私の最低目標だったのだが、初日で早々に達成してしまってもう大満足!10月下旬からの2ケ月余りで「大堂海岸への道シリーズ」と称して小川山、瑞牆、岐阜の瑞浪、湯川、城ヶ崎とクラックを登りまくった成果が出たかな?この日はまだ時間があったので東壁の"うず潮"(5.8)にもトライ、無事OSして終了となる。夜は小芝夫妻も合流して、またまた豪華な海鮮料理に加えてKGが親戚から入手した清水鯖のサバ寿司が油が乗っていて本当に美味!今夜も大いに盛り上がった。

清水鯖のサバ寿司宴会風景

アメフラシ 【12月31日】
 今日も「モンキーエリア」へ。まずは"もぐらたたき"(5.7)でアップ。次に私がクラック技術を教わったクライミングジム「ジャムセッション三鷹」のオーナーが絶賛していた"アメフラシ"(5.9)に石毛さんと挑戦。このルートは正確には大滝エリアというところにあって、モンキーエリアからは海岸線沿いに歩いて5分程度だ。見た目はワイドだが、ワイドムーブはそれ程必要ない。但し6番や5番のデカ・カムは必要。またルートが長いので60mロープでぎりぎりといったところだ。最上部の核心手前で6番を決めてフィストよりやや広めのクラックを慎重にこなすと終了点だ。無事にOSして石毛さんはトップロープで登る。
 午後は"スーパークラック"の左隣りにある"岡山ルート"(5.10c)にトップロープで挑戦(終了点は同じ)。1回目はフィンガーの核心でテンションをかけてしまったが、2回目は余裕を持ってノーテンでトップアウト。次回のRPの課題としたい。その他メンバーは東壁の"あみだくじ"(5.8-9)や"胎内クラック"(5.9+)、"シャトル"(5.9+)などをリードやトップロープで登り、我々とは次元が違うO氏やT氏はモンキーロード(5.10c/d)や三ッ星のセイシ・クラック(5.10b)、"ビッグ・ウェーブ"(5.10b/c)などをリードで登っていた。トップロープで登った岡山ルートに加えてセイシ・クラックやビッグ・ウェーブなどは次回の私のOS、RPの課題としたい。
 一方、昨日一切登らなかったKGは朝から釣りに挑戦。昨日地元のおやじ達が30匹くらいのメジナ(グレ)を釣り上げていたポイントに行くが、釣り始めて数分で早速に型の良いグレを釣り上げる。その後も次々と釣り上げ結局20匹以上のグレや大きなアイゴが本日の釣果となる。澤野さんや石毛さん、そして私も少々やらせて貰い、土佐のグレの引きの感覚を楽しませて頂いた。
 本日は小芝夫妻も加わったエンジョイ・クライミングとメジナ(グレ)の大漁に皆大満足。釣った魚は宿の方に刺身や焼き魚にして頂き、夜も大いに盛り上がった。

釣り師K本日の釣果

帰れずエリア 【1月1日】
 今日は「帰れずエリア」へ。この名の由来は潮の干満によっては本当に帰れなくなる恐れがあるというものなので、行く場合はそこを頭に入れておく必要がある。水位以外にもアプローチは思っていた以上に悪く、結構時間がかかってしまう。しかし辿り着いた場所はモンキーエリアに引けをとらず素晴らしいところだ。高さはモンキーエリア以上で実際に60mロープではいろいろ工夫が必要でこのエリアに来るなら70mロープがあった方が良いだろう。
 準備してまずは"オールマイティ"(1P 5.8、2P 5.9)を登る(1Pと2Pは繋げて登れる)。なんとかOSするが、グレードが低い1P目の方が難しく感じられ、結構苦労した。一本目で思った以上に苦労したので"熱風セレナーデ"(5.10a)は弱気になってトップロープでのトライとする。無事にノーテンで登れたので、これも次回のRP課題としたい。最後に皆が面白いよ!と言う"南風"(5.7)にトライして気持ちよくOSで登り終了となる。この他のルートでメンバーが登ったのは"砂かけ爺"(5.7)、"イースター"(5.9、5.10d)、"大フレーク・オットット"(5.7、5.9+)など。中でも圧巻だったのはT氏が登ったイースター、核心は見ている方も痺れる渾身の力登で見事なOSだった。
 KGはこの日も釣りに専念。10匹以上のグレと大きなブダイを釣り上げていた。
本日も大漁!  結局、最終日の今日も16:00近くまでクライミングをしてしまい風呂(ホテル・ベルリーフ大月で600円)に入ってからKGの叔父が経営する居酒屋に向かう。車で40分くらいだった。今日は1/1なのでもちろんお店はお休み。我々三峰チームの貸し切りだ。鯨の刺身、鯨のすき焼き、ヒオウギガイの味噌焼き、本マグロの幼魚の刺身、ハガツオの照り焼き等々、普段なかなか食べられない御馳走が食卓を埋め尽くす。しばらくするとご主人(KGの伯父)も同席して下さり、独特のキャラと面白話しで大いに宴会を盛り上げてくれた。本当なら今日の朝一で剣山に向けて出発する予定だった小芝夫妻もクライミングや宴会が楽しすぎて、結局夜の22時くらいまで我々に付き合う羽目になってしまった。酒宴は夜遅くまで続いたようだが、私は早々に日本酒で気持ちよくなり、後は良く覚えていない。
ご一族の面々

【1月2日】
 今日は帰京日だ。7時過ぎには起きるが、荷物をまとめたりご挨拶などをしていて出発は9時前になってしまう。帰りも仮眠なしでひたすら運転を続け、メンバー全員を自宅に送り届け自宅に戻ったのは翌日未明の2時近くになっていた。
 今回は山岳会の正月企画としてはかなりの番外編であったが、現地では東京の複数の山岳会メンバーにも会い、クライミングが盛んな山岳会では既に正月の定番企画になっているようだ。冬の剱や、槍ヶ岳など昔からの変わらぬ伝統は大切に守りながら、このような時代の変化に合わせた新しいカルチャーも柔軟に取り込んで行ける会であること、それがこれから先も持続可能な山岳会の条件の一つなのかもしれない。なーんちゃって!笑

おしまい。


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