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雪山登山・平標山
渡辺 靖代

山行日 2018年12月1日~2日
メンバー (L)齊藤(慈)、野畑、清水、宮本、渡辺(靖)

 12月に入って最初の週末に、初冬の平標山に行ってきました。雪山シーズンはじめのトレーニングも兼ねての山行で、メンバーは5名のジャンボテント泊です。ですが、今年は11月の都内の平均気温が15℃近くと暖かく、雪の多いこの地方でもスキー場がまだオープンできていないほど雪が少ないようです。当初予定していた、日白山から平標という残雪期のルートもまだ歩けないということで、変更してこちらの一般道での周遊となりました。
 12月1日土曜の前夜に出発し、週の平日に降ったという雪を期待して、フル雪山装備を積み平標山登山口駐車場に着きました。朝から晴れて暖かく、残念ながら登山口付近の積雪は全くない様子です。これでは上の方も雪はあまり無いだろうと、持ってきたピッケル、わかん、アイゼン、スコップは全て車に置いていき、かわりに水各自2.5Lと軽アイゼンを持って登山口を出発しました。
 最初は木の階段の続く急登で、1時間程登ると大きな鉄塔の前に着きます。平標山頂までは合数表示があり、この鉄塔のあたりは四合目になります。今日は午後から天気がくずれる予報で、晴れていても風が強いです。軽く休憩をして、樹林をさらに登っていくと開けた笹原の道にでました。見通しが良く、陽のあたる所はぬかるんでいて少し歩きづらいです。景色の良い道をしばらくいくと、松手山というピークに到着します。ここまできてもまだ積雪と言えるほどの雪はありません。この松手山は、ピークといっても通過点という感じであまり広くはないのですが、腰をかけてみると、ここから平標へ続くきれいな稜線をとても良い位置から眺めることができ、晴れていればとても居心地が良い所です。

長めの休憩をして、見えている平標山を目指します平標山へ

 見てのとおりのなだらかな登りと階段が続いていき、このまま晴れていれば気持ち良い稜線歩きになるのだろうなと思い歩きだしたところ、残念ながら20分程歩いた七合目あたりからみぞれのような雪が降りだし、風も吹いて急激に天気が荒れていく一方となってしまいました。
 雪に降られつつ景色が何も見えなくなったので黙々と歩いていき、少し広くなった九合目へ到着。ここは普段から風が強く、雪が飛ばされてあまり積もってはいないですが、ようやく雪山へ来たぞ、という光景です。荒れた天気といい、先ほどまでのぽかぽか陽気からは想像もしていなかったので皆少し元気になって山頂へと急ぎます。さらにゆるやかになった道を登っていくと40分程で山頂に到着です。山頂はさらに風が強く周りは真っ白で、とてもゆっくりはしていられないほどの吹雪です。
平標山山頂 ここまでは余裕でした  この先進もうとしている仙ノ倉への稜線は全く見えません。とりあえず吹雪の中で記念撮影をします。
 こんな強風では仙ノ倉の稜線上で幕を張ることも出来ないのでここから下っていくしかないのですが、まだ時間はたっぷりあるし、写真を撮ったりする余裕もあってすぐに下りてしまうのももったいない、ということでピストンを決行することにしました。持ってきた軽アイゼンをつけ、アタックザックを持っていた野畑さんは大きな荷物をデポしていきます。仙ノ倉に向かって暴風の中へ入っていく皆の後ろ姿を撮影すると、なんだかすごい所に来たみたいでした。
ピストンで仙ノ倉へ向かいます  少し間を空けた5人パーティーの先頭はなんとか見えるくらいの視界の中、始めはラッセルもなく意外と順調に歩けていました。それが進むにつれて雪が膝下くらいにまでなり、さらに積りたての少ない雪のため階段の隙間にズボズボ足がはまってしまったり、突風が吹いて時々立ち止まったりと、だんだん進みづらくなってきます。真っ白い中をズンズンラッセルする齊藤さんを先頭に風に煽られながら皆がんばって前進していったのですが、40分経過した1,960mの地点で集まって協議した結果、ここで引き返すことにしました。山頂まではあと60m、おしかったです。
 同じくらいの時間をかけてようやく平標まで引き返し「やれやれ大変だったね」と余裕で話したりしながらも、一目散に風のない場所まで下っていきました。良い訓練になりました。
 その後は快調に下っていき、14時30分無事に平標山山の家に到着することができました。先に着いた宮本さんが小屋の外にいた男性に声をかけるとその方は管理人さんで、テントの受け付けを申し出たところ「受け付けはいいから好きに張っていいよ」と言ってくださり、小屋のお手洗いまで使わせてくださいました。今は冬季で小屋の営業はされていなく、避難小屋として使われているみたいでした。この日はたまたま管理人さんがいらっしゃったのでしょうか。3パーティーほどの方たちが中に宿泊しています。外は景色もよく夕日のみられるデッキもあって、とても素敵な小屋です。最近の暖かさのせいか、水場の水はたくさんでていました。
 夜は貸切りのテント場で豪華おつまみパーティーと、あったかい芋煮鍋をいただいて楽しみました。

 2日目は6時起床、快晴で今日は天気がくずれることもなさそうです。夜中に降った雨のせいでズンッと重くなったジャンボテントの本体は、齊藤さんが持ってくれます。ありがとうございます。
 朝もまた外に出ていた管理人さんを見かけて周辺の道を教えてもらい、「ありがとうございました。お世話になりました!」とみんなで言うと笑顔で見送って下さいました。夏の営業中にまた来たいです。
 今日のコースは、大源太山、毛無山までは一般登山道を行き、そこからは地図上には道のない下山出来そうな尾根があり、そこを地図読みしながら下りてみよう、という予定です。
 最初に目指す大源太山までは1時間ほどの尾根歩き。今日はアイゼンをつけなくても歩けそうです。青空の下で銀色に輝いている谷川連峰はとても美しく、何度も立ち止まって眺めながら歩きました。スキーヤーでスキー場に詳しい清水さんは苗場山や榛名山など、この辺の地理をいろいろと教えてくれます。
 大源太山の山頂へはメインの道をそれてピストンする形になっていたので荷物を置いて登ってみます。登りきると小ぢんまりした所でしたが、先ほどまで見てきた景色が360度見渡せるとても眺望の良い山頂です。

大源太山山頂大源太山山頂からの眺め

 岩と雪の険しい谷川岳と、草原でなだらかな平標、仙ノ倉が対照的でした。
 景色を満喫してもとの道へ戻り、次は毛無山へ向かって歩きます。三角山というところから西へ300m程急な坂をくだり、正面に見える鉄塔まで登り返すとその先が毛無山山頂となります。ここからは今日のメインとしていた、バリエーションルートで下山という予定のため、そちらへ入れそうなところを探してみます。行こうと思っていた尾根はここからだと見たところ、肩くらいまでのヤブになっていて、入っていくのは少し大変そうです。そこで山頂のすぐ下まできている林道へ出て、少し下ったところでまた同じ尾根に戻ってみたのですが、やはりそうそう簡単に進めそうな感じではありません。この先もどうなっているか分からない、やめておこう、と諦めて林道へ戻ってきました。
 という事で仕方なく本日の山歩きはこれで終了です。
 この林道はこの先、上信越自然歩道という道にぶつかり平標登山口まで続いているため、ここをひたすら歩くこと1時間半。無事に登山口駐車場まで帰ってきました。
 昨日はこの場所で「雪がない~!」と困っていたのに、まさかの暴風雪敗退や素晴らしい景色、楽しい宴会など良いことが沢山ありました。「雪山シーズン初めの美味しいとこ取り、良い訓練になりました」とリーダーの齊藤さん。どうもありがとうございました!

とっても地味な下山口になってしまいました
〈コースタイム〉
【12月1日】 平標山登山口(7:50) → 松手山(10:00) → 平標山頂(12:15) → 仙ノ倉稜線1,960m(13:15) → 平標山頂(14:00) → 平標山山の家(14:30)
【12月2日】 平標山山の家(8:30) → 大源太山(9:30) → 三角山(10:25) → 毛無山(11:30) → 林道 → 平標登山口駐車場(13:15)

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