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縦走・天子ヶ岳~毛無山
千葉 朋子

山行日 2018年11月10日~11日
メンバー (L)飯塚、深谷、三澤、渡辺(守)、和田、山蔦、鈴木(辰)、千葉(朋)

 毛無山は、山梨県南巨摩郡身延町と静岡県富士宮市の県境に位置する標高1,964mの山で、天子山地の最高峰、山梨県百名山だ。今回は天子山地を南から北上し、白糸から天子ヶ岳、長者ヶ岳、破線ルートを辿って毛無山へ向かう。道中、東には富士山、西には南アルプスの白根南領を望む。
 予定外に空いた週末を埋められず直前の水曜日にルームでこの楽しそうな大所帯のパーティに混ぜてもらった。
 前夜、22時半に駒込駅に集合し車2台で道の駅「朝霧高原」へ向かう。夜更けの朝霧高原は小雨が降り牛の匂いが立ち込めていた。メンバーが揃い乾杯して仮眠。
 翌日は5時起床、6時出発。雨が止んで艶やかな草原の間を走る。キャンパーの和田さんがこの辺りのキャンプ場はその広大さ故隣人を気にせず富士山の絶景を一人占めできることで超人気と教えてくれた。
 下山口に車を1台停め残り2台で登山口に向かう。毛無山の猫の額ほどの駐車場には既に1台が停められていて我々もきっちり詰めて駐車し8時半に出発。
 天子ヶ岳までの尾根は急登。気温が高くテントを持ってくれた新人の鈴木さんは頭からジョーロのように汗を落としている。尾根に乗るとガスで隠れていた富士山が姿を現し和田さんがハーモニカで『富士山』を奏で、一行はいつもの賑やかな感じになってきた。
 10時頃、公園のように広い天子ヶ岳の頂上に到着。落ち葉が敷き詰められている。古いツツジが立っているらしいがどれか分からない。

そのツツジの枝を折ると暴風雨に見舞われるそう天子ヶ岳から見た富士山が一番きれいだった

 12時頃、もっさりと木々に囲まれた長者ヶ岳頂上に到着。地元の年配の方々で賑わっている。この先の地蔵峠は通行止めとの情報を得る。ここから毛無山の手前までが破線ルートとなる。今日の目標はその中間地点の熊森山だ。踏み跡はしっかりあるが緩急を繰り返し登り応えがある道だ。千明さんは股関節が痛いから途中敗退して地蔵峠から降りるかも知れないと言っている。広葉樹の落ち葉は立体的な形のまま落ちていて歩くとカサコソと音を立て心地良い。森の中はガスが濃く木々の枝の影もかすれるほどになった。気温が高く風がないので鞍部で谷の風がそよと抜けるととても気持ちがいい。小ピークはだいたい広くてどこへでも幕が張れそうで、ついゴロンとしてビールで喉を潤したくなる。鉄塔の下に巡視小屋がある開けた草地で休憩した。

くるくるでふかふかの落ち葉巡視小屋は風除けにもなりそう

 山蔦さんがテントを受け取って先行し熊森山の手前の丸山のピークで幕を広げてくれていた。木立のなか平らで広々とした素晴らしい物件だ。景色はないが枝越しに空が見える。地面は落葉でふかふか。いい物件には熊も来るみたいで木の幹には引っ掻き傷がバーンとあり真っ黒い糞も散見された。暖かいので宴会は外で始まった。陽子さんと千明さんと和田さんが揃っているのである。宴会が盛り上がらないはずはない。皆で心行くまで気兼ねなく大騒ぎをして歌って踊って夜が更けた。山蔦さんと和田さんは外が気持ち良いとか言ってそのまま外で寝た。  翌日は4時起床。晩御飯のキムチ鍋の残りとラーメンを食べて出発。水が丁度なくなった。ここから熊森山までは急登。熊森山の頂上は例によって平たいが昨日の幕場のほうが広くて良さそうだった。熊森山で和田さんのハーモニカが2回目の『森のクマさん』を奏でる。ここから毛無山まではなだらかで長くない道だ。
森の熊さんたち  毛無山の手前から人が増え破線が終わったことを知る。破線では我々のパーティ以外、誰にも出会わなかった。途中、下部温泉に降りる道があり情報の通り地蔵峠の最初の分岐には通行止のビニール紐が張られていた。毛無山頂はのどかな賑わいで地元から愛されている山という印象を持った。
 下山の道は急だったが破線と比べると登山道は歩きやすい。途中、谷に水を落とす不動の滝が登山道から遠くに見えた。二段の滝で落差は100mあるという。滝の中腹にはなんとも言えない良い感じのお釜があり遠くからその揺らめく水面に釘付けになった。魚はいるのだろうか。展望が開けたところで西洋の男性が腰掛けて絵を描いていた。後ろから覗いたがそんな上手くなかった。

最後のピーク毛無山山頂にて近くに泊まってみたくなるお釜

 下界に近付くにつれ気温は上がり汗が滴る。麓を流れる川の筋を眺めて涼を想う。ヘリのホバリングスペースを抜けて川まで降りるともうすぐ駐車場だ。この辺りは紅葉がまだ真っ赤で綺麗だった。川床が整備されて真っ平らな人工的な流れから離れ神社を過ぎるとすぐ下が駐車場だ。和田さんが三澤さんと山蔦さんを乗せて車を回収に行ってくれた。
 静かな山域での賑やかな山行となった。

下界ではまだ紅葉が美しい
〈コースタイム〉
【11月10日】 天子ヶ岳登山口駐車場(8:30) → 天子ヶ岳(10:00) → 長者ヶ岳(12:00) → 1,320m(13:20) → 巡視小屋(14:00) → 幕(15:20)
【11月11日】 幕(5:30) → 熊森山頂(6:40) → 地蔵峠(9:00) → 下部温泉への分岐(9:30) → 丸山(10:30) → 毛無山(11:00) → 毛無山6合目(12:00) → ヘリポート(12:10) → 不動の滝展望台(12:50) → 林道入口(13:15) → 毛無山駐車場(13:45)

朝霧温泉 風の音 900円


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