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台高山脈半分縦走
鈴木 章子

山行日 2019年4月28日~5月2日
メンバー (L)鈴木(章)

 10日間のGWをどう過ごすか。頭の中で多くのルートが錯乱。
 もう大きな荷物を持って歩き続ける体力も機会も少なくなってきている。
 無雪期で15キロ位なら単独行でもゆっくり行けば可能かなと、以前から気になっていた台高山脈縦走でもと出発。
 台高山脈は大峰山脈の隣の山だが条件が全く違う。開発されたのも明治以降で、年間360日雨が降ると言われ『谷深く尾根細し』と聞いたことがある。私には未知の世界だ。
高見山山頂  全山縦走を計画したが、天候不良、知らない山域の一歩一歩のルート確認に時間が掛かったこと、3日の夜に用事があったことなどでほぼ半分の池木屋山で下山することになってしまった。
 東京からのアプローチは私にとっては、さほど長いとは思われない。連休1週間前でも東京=名古屋間の夜行バス予約は可能。そこから2時間ほどで榛原駅。事前連絡は必須だが、奈良バス菟田野乗換~東吉野コミュニティーバスで登山口へ。
 初日は寝ていないので、下の小屋泊を考えたが、翌日午後から天気は下り坂。小屋で水を取り山頂小屋まで持ち上げた。小さな山頂に石作りの立派な祠があり三百名山に入っているとのこと。訪れる人が多いのも納得できる。山頂避難小屋は展望台の台座部分にあり、寒いがセメント作りでしっかりしていた。小屋の中にテントを張りゆっくりしていたが、17時ころまで人が登ってくるのに驚いた。高見山は美しい三角形の山だが山頂部分で落ち着けるスペースは非常に少ない。展望台は大切な休憩地になっている。

明神平  翌朝3時に起床、身支度を整え再び山頂へ。いよいよ縦走が始まる。東吉野村管理の明神平までは、登山道も整備され、テープ・指導標も充分あり、周りの景色を楽しむことも出来た。
 伊勢辻辺り、周辺は馬酔木の花が満開でほっと一息つける場所だった。馬駈ヶ辻から登りが始まり国見山から石の多い水無山に着く。広い広い明神平は眼下。もう少しだ。水無山から一気下ると明神平に着いた。少し天気が下り坂になってきていた。
 本日は、明神平の東屋下にテントを張ることを決定。明日は停滞になるかもしれない。テント100張り以上は可能の大草原。未開放の小屋2棟と東屋が有り水は東に5分ほどで沢に出る。焚火の後も多少はあった。
 大草原の真ん中の東屋を利用させてもらったが、夕方から降り出した雨は風も強く、通りの良い東屋では期待するほどの効果はなかった。2日間の水を確保してテントに入ったが、翌日も風雨が強くトイレ以外テントから出掛けられず一日中寝て暮らした。

池木屋山山頂  3日目、晴れるのを期待して5:30に出発をしたが、濃い霧、地図読み不足、日にちが経ち過ぎて自然の色に同化されたテープで前山付近を3時間ほどウロウロした。やっと見つけた明神岳の山名柱に、この先行くのを迷いながらも、池木屋山までは行くことにした。
 雨こそ降らなかったが霧で展望はなく、木の根が張った尾根は細く、時々現れる同化されたテープで何度も方角を確認。思いのほか進めなかった。霧降山辺りから雨も降りだし気分は全く乗らない。池小屋山に着いたのは2時。体も冷えだしたので行動水だけでも一晩は過ごせそうだったので、10mほど下がった鞍部にテントを張った。テント設営中、トレランの男性が一人雨に濡れながらセミのようなザック姿で、「寝ずに走り続ける予定です」と、言って通り過ぎて行った。
 彼は一体どこから来て何処に行くのだろうか?全く分からなかった。

高滝  テントの中で今後の行動を考えた。初めての山域、見当が全くつかない。
 このまま進んでもエスケープがない。下山できてもその後の足確保がない。大台ヶ原まで行くには日にちがない。結局、下山がベスト。沢筋は避けたいと思ったが、当日は何故か最短の宮ノ口コースを選んでしまった。

 翌朝、雨は上がったようだが視界が今一つ。迷いながらも6:30下山開始。
 下り始めから木の根の張った、飛び込むような斜度の痩せ尾根。沢と合流後は、3つの大滝の高巻きと渡渉。良くこんなコースを作ったと感心するばかり。
 幾多の沢登りで高巻きを経験してきたことが幸いして何とか下山。特に50m落差の高滝を巻くのは虎ロープが頼り。どこで落ちても不思議ではない。途中にお地蔵さまが祀られていたのも分かる気がした。このコースは登り以外には考えない方が良いのかもしれない。

 高滝を過ぎると道は安定した登山道に変わる。蛇滝辺りから2組の観光客とすれ違うと、40分ほどで宮ノ口駐車場に着いた。初めてゆっくり休んだ。
 左手首の静脈に吸い付いたダニ2匹も滝を下るロープの動きで動く時計のせいで、どこかに飛ばされてしまった。シャツには血糊がベットリ。ダニのショックよりも緊張した時間が過ぎたことが嬉しかった。
 宮ノ口からバス停までの3時間の車道歩きは、緩い下りのせいもあり安堵に包まれた、ある意味では幸せな歩行だったかもしれない。
 バス時刻は3時15分と5時22分があったのでゆっくり入浴することが出来た。松坂駅まで1時間40分の道のり。仮眠状態で過ごした。

〈コースタイム〉
【4月28日】前夜発 晴 近鉄名古屋=榛原=菟田野(奈良バス)=下平野(東吉野町コミュニティバス)登山口(11:10) → 避難小屋(12:19) → 山頂避難小屋(泊)(14:10)
【4月29日】晴れ 夕方から風雨強い 小屋(5:35) → 高見峠(6:15) → 雲ヶ瀬山(7:20) → 地蔵谷の頭(9:00) → 伊勢辻(9:55) → 国見山(11:15) → 水無山(11:40) → 明神平(泊)(12:00)
【4月30日】1日中風雨強い 停滞
【5月1日】霧深く午後から雨 明神平 → 前山 → 明神岳(8:18) → 笹ヶ峰(9:00) → 千石山(9:55) → 水場(10:30) → 赤グラ山(12:30) → 霧降山(13:20) → 池木屋山(泊)(14:15)
【5月2日】曇りのち晴れ 池木屋山(6:30) → (宮ノ谷出合に下山) → 尾根終了(沢出合)(8:15) → 高滝下部(10:50) → 蛇滝(11:35) → 宮ノ口車道(12:15) → 奥香肌峡(ダム)(14:50) → スメールバス停(15:05)=松坂駅=名古屋

〈費用〉
入浴料  ¥700
奈良バス ¥51
吉野コミュニティーバス 無料
三重バス ¥1,650
松坂=名古屋(近鉄) ¥1,260
名古屋=榛原(近鉄) ¥1,800


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