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雪稜登攀・横岳西壁中山尾根
青木 綾子

山行日 2019年2月16日~17日
メンバー (L)青木、古屋、内田

 八ヶ岳西面で目標にしていたルートのひとつ、中山尾根に挑戦することにした。三峰に入会前、ガイド講習で一度訪れたが天候が悪く1ピッチだけしか登れず消化不良で終わったところだ。今回のメンバーは雪稜やバリエーションを何度か共にした頼もしい二人。バリエーションを始めたのはガイド講習がきっかけだったが、ガイドに頼らず仲間と協力し合っていく山は数倍楽しい。

【2月16日】
下部岩壁の取付き  土曜の朝に東京発、美濃戸口から行者小屋を経由して取付きまで向かう。今日は偵察だけだし、小屋泊まりなので荷物も軽くて気楽だ。中山尾根へは中山乗越の標識からそのまま尾根を登っていけばいいので分かりやすい。幸いトレースがあり中山乗越から40分ほどで下部岩壁取付きへ。時間も早いので1ピッチだけ登ってみることにした。1ピッチ目は右に回り込むと階段状の凹角があり易しい、とトポには書いてあるが正面にもハンガーボルトとハーケンがある。右に回り込むトラバースがあまりよくなかったので試しに正面から登ってみることに。リードで取付いてみると…わるい!一見登りやすそうに見えたが、ホールドはスローパー状態だしグローブをつけた手が滑りめちゃくちゃ登りにくい。かといって手袋を取ったら凍傷になってしまう。底冷えのする八ヶ岳は少し風が吹いただけでも凍えるように寒いのである。
 とりあえず偵察だし、と言い訳のA0を交えて1ピッチ登った。
 赤岳鉱泉には17時前に到着。我々は大部屋に案内され1人1枚のふとんは確保できたが、小屋は満員状態。それでも暖かい部屋で寝られるのはありがたい。トイレ脇の臭くて寒い廊下にも人が寝ていた。部屋でプチ宴会した後は名物ステーキの夕食でお腹いっぱいになり就寝。

【2月17日】
 5:40、まだ薄暗い赤岳鉱泉を出発。人気ルートなので渋滞は避けたい。狙い通り1番に岩に取付くが、意外にも後続は1パーティーだけだった。

■1ピッチ目:正面壁フェース(Ⅳ)
 内田リード。もちろん彼女はやさしめの右凹角からなんて行かない。正面突破で取付いた。スタート核心の悪いホールドをグイグイつかんで体を上げていく。上部の凹角を抜けたところでビレイ。

■2ピッチ目:急斜面の草付き
 古屋リード。垂壁を左から巻いて草付きを登る。草付きは登りやすいのかと思ったらとんでもない。カチカチツルンツルンの氷壁だった。特に出だしの傾斜が強く、アイゼンの爪とアックスを氷に打ち込みながら登るが「落ちるかも」と不安になるほどだった。

■3ピッチ目:雪稜~岩稜 120m
 コンテで歩き。

■4ピッチ目:上部岸壁 フェース右~かぶった凹角(Ⅳ+)
 青木リード。支点の右手にある、見るからに登って下さいという溝からスタート。いったん安定したテラスへ乗り、その奥の垂直のチムニー状を登る。上部がかぶり気味のチムニーに入り下を見るとなかなかの高度感。こわ~!足を両壁に突っ張るように広げてジワジワと体を上げチムニーから脱出するとしっかりした支点があった。怖いけど終わってみれば楽しいピッチ。

■5ピッチ目:草付きの雪稜
 コンテで進む。

■6ピッチ目:小ハング
 青木リード。ハングといっても小さく短いので難しくない。右寄りを登っていくとハングの上に出た。岩のリッジを数メートル進んだ岩陰が終了点。

小ハングを越えてリッジに出る、背後に阿弥陀岳登攀終了、よい笑顔。

 トサカ状岩壁の基部でロープをしまって休憩する。ここから右側のバンドを縫ってトラバースすれば縦走路に合流だ。冬の八ヶ岳ではいつも寒くて死にそうな思いをするが、前日より風も穏やかで終日天気に恵まれた。雪の状態もよく快適な登攀であった。このところ八ヶ岳バリエーションではヘッデン下山が常だったので明るいうちに美濃戸口まで戻ることができほっとした。
 中山尾根は他にもルート取りができそうだし、積雪によっても難易度が変わるだろう。またいつか来てみたい。

〈コースタイム〉
赤岳鉱泉(5:40) → 中山乗越(6:20) → 下部岩壁取付き(7:00) → 終了点(11:10) → 行者小屋(12:30)


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