山行日 2019年3月21日~24日
メンバー (L)千葉(快)、金子、野畑
積雪期で南アルプス100名山。ここ数年毎年1~2座ずつ挑戦している。南アルプスに100名山は8座あるのだが残すところやっと3座になった。今回は南アルプスの最も奥地でアプローチのしにくい悪沢岳への挑戦だ。とにかく林道アプローチの長い行程であったがお付き合い頂いた仲間との会話でそれも幾分かは紛れ楽しい山行となったのであった。
【3月21日】雨時々曇り
前日は沼平ゲート付近で仮眠。朝の目覚めは最悪な場面から始まった。前日テントのベンチレーターを全開にしたまま寝ていたせいで、何とテントの中に大量の水が入り込み半ば浸水していた。どうやら夜中に雨に降られたようだ。しかも残雪期だと油断していてフライを忘れる始末。3連休初日は何とも骨の折れるテントの大掃除から始まった。
今日の行程は椹島までとにかく歩く。夏場なら快適にバスに乗れば良いがシーズンオフにこのルートが敬遠される理由はこの林道に核心があるからなのは言うまでもない。朝一の事件によりテンションの上がらないままカッパを羽織り、雨に打たれながらトボトボと林道を歩く。途中かなりの台数の大型トラックに追い越され、運よく便乗させてもらえないかなど妄想を膨らませながらの行軍であったのだが、残念ながら歩く姿が元気過ぎたのか願いかなわず残念無念。
7時間近く歩いたであろうか椹島に到着すると、もの凄い工事音と共に結構な人数の作業者の姿が見える。冬季の椹島と言えばとても静かなイメージを想像していたのだが全くかけ離れていて、大量のプレハブ小屋に重機の音がする都会の工事現場と全く変わらない。おまけに椹島ロッジは工事関係者専用施設としてお風呂まで解放されていた。流石にお風呂は無理だが汲み上げられたお水の利用と自販機でビールの購入は許可された。わざわざビールを担いできたが想定外の出来事にちょっと拍子抜けしてしまった。去年の秋口に快適であった冬季小屋は開発により撤去、夏なら芝生の気持ち良い幕場もロープで範囲を囲まれた狭い敷地へと追いやられていた。管理人はいるが営業はしていないので幕場代はいらないとの事。それでも有り難く幕場を使わせて頂いた。夜は明日からの山談義に花が咲いたが、外へ出るとこの都会の風景に興ざめしてしまうのであった。
【3月22日】 曇り
今日の朝は快適そのもの、雨もなく乾いたテントを撤収。少し林道を行くと登山口だが、去年辺りまで歩いていた沢沿いの入口は崩落による立入禁止で、少し先の新設されたかなり立派で丈夫な橋が新しい登山口入口となっていた。1シーズンで付けられた道にしてはかなり踏まれしっかりした登山道を行く。途中大きな松の倒木があったが、まあこれもシーズンオフなのでしょうがない。鉄塔までは急な登りで雪もない。
途中荷揚げ用林道を何回か交え、小石下辺りまでくると待望の雪が出現。雪はドンドン深くなり清水平付近で一気に膝下ラッセル状態になった。「清水平の水場は枯れるのを聞いたことがない」、東海フォレストの方からは心強い言葉を頂いていたが、この日は噂通りパイプからはかなりしっかりした水が出ていた。厳冬期の積雪の時期ならもしかしたら埋まるかも知れないが何とも分からない。足に纏わり付く残雪の重い雪に苦しめられ中々行程はかどらず、途中でワカンに履き替えたのだが足を上げる度に団子状態になりこっちもはかどらない。
何とか明るい内に今夜の目標地点の千枚冬季小屋に着き、明日の取り付きを確認したかったので清水平よりも先の地点でトレースを付けるのもあり先行させて頂いた。何時間歩いているのであろうか、何とか荷揚げ用リフトの終点辺りまでは明るく歩けたのだが、だんだんとラッセルのペースも落ち、孤独の寂しさも増し、日も暮れ始め、最後に気分も落ちかけた。時折ピンクリボンを確認しながらトレースを刻むのだがもはや疲れてしまって雪の中でもがいている感じであった。もうそろそろ着いても良いころではないか、そう思い始め最後の急斜面を登りきるとようやく小屋が見え、辺りはすっかり暗くなりヘッデンを出すか出さないかギリギリの状態で冬季小屋に転がりこんだ。
少し休み気分が落ち着くと、今回の先行作戦は失敗だったと今更ながら思った。もはや取り付きは暗くて確認は困難、それよりも置いて来てしまった後続のメンバーが無事この小屋に辿り着けるのかどうか。ひょっとしたら体力尽き途中ビバークになっているかも知れない。そう思うと気が気ではない。既に時刻は18:30を回りそんな考えが頭をよぎったのだが、ふと小屋の下を見るとヘッデンの灯りが見え間もなく後続も小屋に辿り着いた。これで一安心、今夜も宴会モードと一瞬思ったが誰もがヘロヘロ。夜は適度に切り上げスピード就寝となった。
【3月23日】 曇り時々雪
冬季小屋とは何と快適なのだろう。昨夜は寒くもなくグッスリであった。朝食をそそくさと済ませると、不要な荷物は小屋にデポし身軽になり出発。
今日の行程は、悪沢岳山頂を果たし、小屋の荷物を撤収して椹島まで戻らなくてはいけない。
昨夜は暗くなり気分も落ち込んでいたが、明るいとこうも足取りが軽いものか、取り付きも難なく確認でき小屋の真後ろの斜面をいきなり直登していった。夏道ならブッシュを避け蛇行するルート取りだが、こちらは急ではあるが直登出来るのは何とも爽快ではないか。爽快と言っても終始膝下までのラッセルはある。途中で本来の夏道上に復帰したが行程をショートカットしちょっとしたお得感があった。
本日は全行程の中で最大の難所千枚岳越えがある。ここは千枚岳直下のトラバース道を行くのだが雪の付き方次第ではザイルを出すかも知れない。いざそれっぽい現場に着くとほんの僅かな区間だが確かに落ちたらやばそうなトラバースがある。何とか尾根上を行けないか模索したが尾根上は雪が少なく逆に危険に見えた。ここはしっかり手と足場を作りやや斜め下方に移動しながらのトラバースとなり難なく通過。その後もハシゴの下りと少しスリリングな場面もあり楽しめた。少し行くと千枚岳山頂!ここにくれば夏道なら大した時間もかからない。天候は良くはないが雲の隙間から悪沢岳山頂が見え隠れしている。
ここまできてようやく本来なら最高の景色の稜線なのだが、相変わらずの強風、横殴りの雪で景色を中々拝ませてはくれない。
夏道を歩いていくと丸山を通過するのだが、それも面倒臭くトラバース気味で広い雪原を歩いていく。途中大きな岩陰で風を避け休憩を取りまっすぐ山頂に向かって歩いて行く。夏道の時はハイマツやら岩稜帯の通過があったのだが、千枚岳より先は殆どどこでも歩ける。この辺は変なラッセルもなく夏道よりも早いのではないか。そんな事を考えているうちに、山頂看板っぽい物が見える峰が先に見えている。流石にまだ早いだろうと思ったのだが行ってみれば、そこが目指していた「荒川東岳」の山頂標識であった。景色もなくとにかく風が冷たい。記念撮影をそそくさと済ませると直ぐ風の避けられる大岩まで戻りそこで休憩となった。まだ山頂の見える景色に名残を惜しみそのまま千枚岳まで問題なく下る。先ほどの核心のトラバースは下山時は登りになり、何故か下るのよりも気分も楽で、直ぐ終わってしまった。下りは本当に爽快そのもの冬季小屋までもあっと言う間。
小屋で暖を取り身支度をし、大休憩の後出発。直ぐ樹林帯となり雪風からは解放された。しかし自分たちで築いたトレースは妙な安心感があるのか、行きと違い下りなので速い速い。速いと言ってもこの荷物なので手ごたえはあるがそれでも行きとは段違い。悪沢岳を登頂できたと言う達成感を味わいながら快適とまでは行かないが気分よく下山。鉄塔まで降りてくる頃には日が沈み、その先はヘッデンで下山。この辺はもう雪もなくだいぶ歩きやすいが、椹島到着は既に19:30近くになっていた。
さー今日は宴会!自販機でビールを購入し気分はもう明日の温泉しか頭にない。行きの不安も何も取っ払い気分も良いもんだ。疲れていたがテントでは盛り上がった。
【3月24日】曇り
今日は下山のみ。朝起きると東海フォレストの方が今季の千枚岳小屋の様子を聞いてきた。普段だと雪は屋根の直ぐ下まであるそうなのだが、今回は相当低い位置であったらしい。この話を聞いてきた方は、千枚岳小屋の管理人さんで以前お話した事があるのではっきり覚えていた。今年は工事の関係で早めに東海フォレストに来ているのだろうか。テント撤収し、行きに歩いた長い長い雪のない林道をまた歩いて沼平へ。もはやこの道の通過は作業にしか思えない。期待していた沼平までのヒッチハイクも妄想に終わり下山となった。
下山後は定番の「白樺荘」へ。暖かい食事をすませ帰路についた。今回嫌厭されがちな長い林道アプローチをお付き合い頂いた仲間には感謝しきれない。
南アルプスはアクセス悪いのだが人気もなく良いコースばかりで、今回も3連休登山者とは会っていない。積雪期南アルプス残り2座。塩見岳と光岳は来年中には完結させたい。
【3月21日】 | 沼平ゲート(7:00) → 中ノ宿吊り橋(10:40) → 聖沢登山口(13:20) → 椹島(14:30) |
【3月22日】 | 椹島(7:20) → 清水平(11:00) → 駒鳥池(16:45) → 千枚小屋(18:30) |
【3月23日】 | 千枚小屋(5:40) → 千枚岳(6:50) → 悪沢岳(9:40) → 鉄塔(18:10) → 椹島(19:30) |
【3月24日】 | 椹島(5:40) → 沼平(13:00) |