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岩登り・穂高屏風岩雲稜ルート

山行日 2019年9月14日~16日
メンバー (L)西村、古屋、青木、梅田

 山を始めて間もない頃、当然クライミングなど何も知らない自分が秋の紅葉まっさかりの涸沢への登山道を登った時に見た屏風岩、その畏怖堂々たる佇まいに圧倒され、いつか登れると良いなと憧れていた壁にとうとう取付く事が出来た。

【9月21日(土)】
いきなり核心となった渡渉  今日は横尾までのアプローチと取付き偵察のみ。朝は少しゆっくりとして8時半頃に上高地発し、のんびりと観光客に混じっての遊歩道のハイキングを楽しみお昼前に横尾着。とりあえず取付きへのアプローチの偵察に出発する。心配していた渡渉ポイントはそれほどの水量では無いが非常に冷たく、念のために沢ソックスを履いたが、それでも数メートル水につかって歩くだけで足の感覚が無くなるほど。

1時間足らずでT4尾根見えてくる  渡渉後はルンゼの押し出しを進むとほどなく屏風の全容が見えてくる。その存在を直下で見上げると、本当にこんなところを登れるのか?と弱気になってしまった。
 この日は翌日の予行演習も兼ねて下部岩壁の1P目だけを古屋さんのリードで登り、皆で感触を確かめる。下部岩壁とはいえしっかりと難度もある壁で気は抜けない。その後、取付きにガチャ類をデポしてその日は横尾に戻って乾杯。食当初の梅ちゃんのナポリタンは期待に反して?美味しかった!

【9月22日(日)】
雲稜1P目  日曜は2時半起床、3時半出発するも既に前に2パーティーいた。3連休で天気も良い事を考慮すると致し方ない。下部を危なげなく登ってT4テラスへ。ここからが本番。西村-梅田、古屋-青木でロープを結び、いざクライムオン!
 1P目は凹角を登る。5.7とのことだが50mという長さも踏まえるともう少し難しく感じるが、快晴のなか快適に高度を稼げる楽しいピッチ。

3Pの核心をあぶみで  2P目はピナクルを直上し右上したのちに左上。ピナクルを直上するところが難しいが、思い切って体を上げるとガバホールドが見える。このピッチは屈曲するルートのため、ロープが非常に重たく声も聞き取り難いので、クライミング技術以外の所で神経を使うが、たどり着いた扇岩テラスはセルフがいらないくらいに安定した場所で一息つける。
 3P目、ここが核心。前の組も苦労しており暫く待たされた。当然アブミの出番である。ただピンの間隔は短く、傾斜はそれほどでないうえに所々スタンスもあるのでフィフィを使うことなく無事にトップアウト。因みにこのルートはフリー化(11C)されており、グージョンとまではいかないまでも強固なアンカーが等間隔で打たれている。登れないグレードでは無いが、ここはもう少し上手くなって出来るだけテンションかけずになってからトライしたい。

 4P目は狭いバンドをトラバースして東壁ルンゼへ。トラバースはしっかりとしたガバがあるので事前情報で聞いたよりは怖くなかった。
 5P目はルンゼのクラックからスラブ状の岩へ。苔が生えて湿っぽい箇所がおっかないが、クラックはジャミングが効くのでこれが出来るか出来ないかで難易度は変わりそう。
 本当は6P目まで行きたかったが5P目終了点で2時を過ぎていたため、ここで下降開始。途中で梅ちゃんのクライミングシューズが谷底に落ちていくという、アルパインを始めてから見た事も無い光景を見る事が出来た。因みに落ちていったのは5.10のアナサジピンク。5.10の身売りにより、もう作られることの無い傑作ともいえるシューズである。梅ちゃん無念!とこんなハプニングに見舞われるも日が暮れるとほぼ同時に基部へ降りる事が出来た。因みに下降は微妙に同ルートではない。5P目からはルートを外れて真っ直ぐ下降。また2P終了点の扇テラスからはすぐ左下の大テラスへ降りて、そこから1PでT4テラスに降りられる。
 ヘッデンで横尾に戻って、まずは冷たいコーラを皆で回し飲みして喉を潤す、最高に美味い。なんだかんだの16時間行動。皆で長い1日の健闘を讃えて乾杯し、青木さんの作る期待どおり美味しいガパオライスで腹を満たす。

【9月23日(月)】
 最終日は上高地までの下山のみである。リーダーの我儘で徳沢ロッヂにてモーニングをとる。前からヨーロッパのおしゃれな山小屋風のここで朝食をとってみたいと思っていたのだ。恰好は少し場違いであったが、たっぷりと優雅でリッチな時間を楽しんで3日間を締めた。

 いつか登ってみたい屏風岩に皆の協力があったおかげで登る事が出来た。本当に感謝。
 次は屏風の頭まで抜ける&3P目をフォローでも良いのでフリーで登ってみたい。どなたかいればお付き合い願います!


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