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沢登り・薄根川川場谷
野畑 祐子

山行日 2019年8月24日~25日
メンバー (L)野畑、清水、坂井

【8月24日 薄曇りから晴れ】
 5:50ごろに前夜泊した道の駅田園プラザかわばを出発する。睡眠時間は相変わらず短いが、屋根付きのスペースでぐっすり眠れた。
 20分ほど車を走らせ旭小屋駐車場に到着。支度を整え、林道を歩き始める。1時間半ほど進むと桐の木平キャンプ場へ着き、すぐ横にはもう川場谷の流れが見える。土曜の朝だからかキャンプサイトには2組のファミリーがいただけで、静かだった。
 キャンプ場を一番奥まで進み左側にあるダンプの轍がある道へと入ったが、轍が非常にぬかるんでいて、入ってすぐの窪地のところでうっかり脛まで沈み込み、アプローチシューズも靴下もドロドロになってしまった。後を歩いていた坂井さんも同様に埋まってしまい、最後だった清水さんは冷静に、渡る手前で待っていた。坂井さん、巻き添えにしてしまいすみません...これ以上泥に沈みたくなかったので、すぐ脇で入渓支度を整え、気を取り直してそのまま沢沿いの工事用道を進む。堰堤を巻いてから入渓と記録にあったが、堰堤がどこかわからないまま、100mほど先の道がなくなるところから入渓した。
なかなかの水量  入渓して15分程歩くと、すぐにうなぎの寝床と呼ばれるゴルジュが現れる。どこかの遡行記録にはそのまま沢を歩いて通過できる、とあるが...白泡をあげてジェット水流が流れている。またもや今回も水量多めのようだ。大人しく右岸から巻く。

美しいナメ床が続く  その後はいきなり美しいナメ床が現れる。広く長いナメ床に、きらきらと木漏れ陽が差し込み、思わず「きれい~!」と黄色い歓声が上がる。

獅子の牢  ひとしきり写真撮影しながら、しばらくは標高を稼げないゆるゆるとした沢を進む。1時間ほどすると、目の前に薄暗いゴルジュが現れた。獅子の牢だ。両岸から岩が覆いかぶさるように抉れており、先ほどまでの開けた風景から一変する。清水さんはすかさず、壁から落ちる細い水流で打たせ湯を実践。さすが笑いの神様である。牢の出口の小滝は左を越えられそうかな...と思って覗き込んだが、二人に腕で大きい×を出された。確かにこの水量で行くのはずぶ濡れ必須だし、取付く前にはがされるかも。ここも大人しく小さく巻く。

川底の自分の影もくっきり!  ビバーク可能な石室を通過ししばらくの間小ゴルジュ帯を進む。途中途中に小滝が出てくるが、どれも白泡で水中のスタンスも見えづらく、水流際を行くか小巻きしながら進んだ。人が多く入るせいか巻道が明瞭で助かる。
 ゴルジュ帯を越えると、沢はまたナメ床と平凡な河原を繰り返す。水は陽の光を受け透明に澄んでいて、自分の影が川底にはっきりと映るほど。小滝の釜は大体が結構深く、水量がそれほどでもない暑い日ならば、無邪気に泳げるだろう。美しい光景を眺めながらゆっくり休憩しつつ進む。
 途中岩質が変わり、赤いナメ床が広がる。その後も真横になった太い倒木の間から小滝が流れていたり、CS滝があったりと遡行者を飽きさせない。
 水線横を行ったり巻いたりしながら進むと、右手より川場剣ヶ峰沢が出合う。緩いナメになっている剣ヶ峰沢の方から左岸にあがり、ポットホールを持つ川場谷のナメ滝を巻く。平水時と思われる写真を事前に見ており、ポットホールで遊びたいと思っていたが、本日のホールは白泡の立つジェットバスだった。さすがに入浴は無理とやりすごす。

CS小滝が多い赤ナメ床
剣ヶ峰沢出合<BR>左がポットホールを持つ川場谷本流うれしい登攀!

剣ヶ峰沢出合  次の滝もとても登れる感じではなく、巻く。ほどなくしてまたナメ床となり、ようやく核心と言われている8m滝に到着した。水流左側から登れそうだが...二人をくるっと振り返ると、よほど私が「登りたい!」という目で訴えていたのか(はたまた口に出ていたのか)、OKが出た。やったぁ!とばかり、いそいそ30mロープを出し、引き揚げ方法と笛の合図を決めて登り始めた。スタンスは豊富で、残置ハーケンも3、4本あり、それに導かれ迷うところはない。滑るとの記録もあったが特段ひどいという印象もなく、一番上は左に軽く逃げてあがった。
 8m滝を越えるとスダレ状幅広滝が連続する。ここは纏めて右岸を巻いたが、踏み跡が薄く、何度か迷いながら結構上がってしまった。ただ、すぐに下降点が見つかり、ロープを出すことなく滝の落ち口へ降りられた。
 ほどなくして剣ヶ峰沢と出合い、そこから30分程で剣ヶ峰沢出合に到着した。
 そこからは幕場を探しながらの遡行となる。剣ヶ峰上の沢・家の串下の沢を過ぎ、事前に調べておいたビバーク地を探すが、両岸は笹薮の高台で広河原もなく、17時になったので1,570m付近にある左岸のちょっとした河原で幕を張ることにした。焚火スペースを勘案すると3、4人が限度か。うろうろしたが薪はほとんどなく、なんとか寄せ集めたもので坂井さんがぱぱっと火を付けてくれた。その間に清水さんは薪を切り、私はタープを張る。特に何も話していないのに3人分担ですっと物事が運ぶのは、実に居心地よかった。
 その後は、清水さんの作ってくれた美味しいおつまみをアテにビールで乾杯し、焼きマシュマロ片手に女子トークで盛り上がって、いつの間にかうとうとと眠りについた。

【8月25日 晴れ時々曇り】
幕場は3、4人が限度だが、整地すれば快適  朝は5時半に起きて7時に出よう、と話していたが、みな何故か5時過ぎには起床。坂井さんが早速焚火を起こそうと格闘するが、夜中に降った小雨でオキも鎮火しており、煙が出てくるだけで終わってしまった。朝食を取って7時前には出発する。
 しばらくは、またナメ床や小滝が続くが、2時間ほど歩いた1,800m付近で水流が急に細くなった。しばらくはピンクテープに導かれ沢筋を進んだが、途中の二股で間違えてどうやら右俣に入ってしまったようだ。左に、左に、と自分で言っていたのに、大いに反省...その末に、背丈を越えるイタドリをかき分け、沢筋が消えた後は強烈な密笹薮漕ぎとなった。

背丈以上のイタドリをかき分ける。まるでジブリの世界!<BR>だが、この後は密笹薮が待っていた  笹は幸い背丈ぎりぎり越えないサイズだったが、なんせ急登の密藪。なるべくコルに近いところに出ようとトラバースも交えながら進む。途中何度も足を滑らせ腕力であがっていたら、腕がパンプしてしまい、休み休み交代しながら藪を漕いでいった。高度計が1,970mを指し、あと10mほどのトラバースで登山道に着くのではないかというところで、清水さんが果敢にハイマツと石楠花交じりの藪に飛び込む。おそるおそる付いていくと、数mでいきなり整備された道にポンと出た。登山道に詰め上げたのだ。3人で喜ぶが、いかんせん藪漕ぎが堪えて、その場で座り込んで沢装備を解きつつ1時間ほどゆっくり休憩した。
 その後上州武尊山に登り、トレランの練習に来ていた人に集合写真を撮ってもらって、川場谷野営場に向かう。

沢から詰め上げ大満足の上州武尊山頂!  下山ルートも家の串山の岩場や急な下りがあり、距離も長いため、慎重に進む。17時にようやく川場谷キャンプ場に着き、一息つこうと座ったところで、ソロのオジサマが駐車場から車を出そうとしていた。坂井さんが「乗せてってくれたりしないかしら...」とぼそっとつぶやく。私は旭小屋駐車場まであと30分歩くことしか考えていなかったので、それはアリだ!とヒッチハイクにトライする。気の良いオジサマで、荷物を片付けて快く沢臭い3人を乗せてくれた。歩き30分が車5分になったのは本当にありがたかった。下山後は川場田園プラザホテルの日帰り温泉に浸かり帰宅した。

〈コースタイム〉
【8月24日】 旭小屋駐車スペース(6:30) → 桐の木平キャンプ場から川場谷入渓(7:30~8:30) → うなぎの寝床(8:45) → 獅子の牢(9:50) → 川場剣ヶ峰沢出合(13:50) → ナメの沢出合(14:00) → 8m滝(14:30) → 剣ヶ峰沢(15:30) → 剣ヶ峰上の沢・家の串下の沢出合(15:55) → 幕営地・1,570m付近(17:00)
【8月25日】 幕営地(6:50) → 登山道・1,970m付近(11:00~11:50) → 武尊山山頂(12:20~12:35) → 家の串山頂(13:27) → 川場谷野営場(17:00)

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