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藪漕ぎ山行・餓鬼岳
鈴木 一彦
小芝 麻紀子

山行日 2019年9月14日~16日
メンバー (L)飯塚、千葉(朋)、菅原、渡辺(靖)、鈴木(一)、小芝(麻)

【9月14日】 記録:鈴木(一)
 私にとっては、三峰入会後初めての例会山行。集合場所に近づくにつれ、思ったよりも緊張していることを自覚する。新宿西口を21時半に出発し、中房温泉を目指す。三連休初日の駐車場は想像以上の混み具合だ。飯塚リーダーの機転とチャームで林道ゲートを通過し、何とか駐車スペースを確保できた。車中泊で休息を取り、稜線の輪郭が反映できるようになった5時過ぎ頃、手早く共同装備を分けて、ひとまず有明荘を目指す。身支度を整えた後、6時に有明山登山口から入山した。
有明山の頂上にてBポーズ  最初から急登続きで寝不足の身に堪える。所々、手を使って登るようなところもあり、まだまだ重い荷物が肩に食い込む。稜線が近付くにつれて道はトラバースに変わり、悪場も出てきた。数十メートルの上り下りを繰り返し、少しうんざりしてきた所で、急に視界が開けて有明山への分岐点に飛び出した。ここでひと息つき、空身で有明山の山頂を目指す。上機嫌で山道を歩いていると、山頂近くで大眺望に恵まれた。遠くは妙高山、振り返ると燕岳や大天井岳が一望できた。快晴の北アルプスの眺望を楽しみながら、立派な鳥居のある有明山頂に到着。しばし記念撮影大会の後、二峰、三峰も訪問して有明山を後にした。ザックを回収し、今日の幕場を目指す。
 ここからはバリエーションルート。最初は拍子抜けするほど踏み跡がハッキリしており、2,283Pにはあっけなく到着。樹林帯の中で眺望はなく、とても北アルプスにいるとは思えない雰囲気。思ったよりも早く幕場に着きそうとウキウキ気分で歩みが早くなる。もう少し先に進む?との声もあったが、予定通り2,166Pの幕場で設営開始。持ち寄ったおつまみを披露し合い、楽しい宴会の後、足りなかった睡眠時間を取り戻すべく早めの就寝となった。

【9月15日】 記録:小芝(麻)
 薄明るくなり始めた5時半に出発する。本日はいよいよ本格的な藪ルートとなる。幕場から清水岳までは笹薮となるが、踏み跡はけっこうしっかりあり、またピンクリボンも所々ついている。ルートファインディング自体はそれほど難しくはないが、何箇所か尾根が分かれており、そこをしっかり確認しながら自分が進むべき尾根を歩いていく。順調に足を運び、8時前、東餓鬼岳手前の標高2,400m地点。本格的な藪に備え各自装備を整える。やっちゃんがホームセンターにて1,500円で購入したというメガネは藪こぎに良さそうだ。身支度が済み、いよいよ出発する。30分ほど歩くと、シャクナゲの密度が濃くなっていく。枝が絡み合い、私はどこを歩いていいのか戸惑っていたが、流石ベテランの陽子さんと菅原さんは枝が薄くなっている所を狙って淡々と前進していく。自分は皆の後を必死についていく。頂上から少し下で陽子さんが「先頭を歩いてみる?」とのお言葉に、「やってみたいです!」とつい張り切って言ってしまった。そんなんで先頭を歩き始めると、藪こぎの大変さを身をもって体験する。折れた枝が腕や足にささったり、掻き分けた枝が跳ね返ってきたり、顔面に枝があたったり。想像以上に体力を消耗する。頂上が近づくにつれ、松の木の数の割合が増えてくる。まっすぐ進むのがだんだん難しくなってきて、松の木をよけながら進まなければいけない。そうこうしているうちに、尾根から少し下をトラバース気味に進んでいた私に、「そろそろ頂上が近いから上に登ろう」とのリーダーである陽子さんからの指示。先頭を千葉らっちに代わってもらい、ハイマツの中に突入。上に登っていくと直ぐに突如視界が開け、真っ白な岩肌の東餓鬼岳の山頂に到達。いいタイミングで頂上に辿り着く。陽子さんの指示がドンピシャだ。地獄から天国に出たかの様に、藪の中から突然現れた真っ青な空と北アルプスの山々。そうか、これが藪こぎの醍醐味なのか。
まだまだ続く藪こぎ  ここで濃い藪が終わりかと思ったら大間違い。東沢岳までは稜線歩きとなるが意外と踏み跡はなく、シャクナゲと松の絡み合う濃い藪をこぎながら進む為、思ったよりもペースは上がらない。日差しの暑さも襲ってくる。ブルーベリーが生えていて、時々食べ喉の渇きを癒す。陽子さん、菅原さん、千葉らっちと先頭を変わりながら、予想よりも手こずりつつも東沢岳の縦走路に合流。ここで藪こぎ終了となる。
 一般縦走路に入ると鈴木さんが熱中症でダウン。東餓鬼岳から熱い日差しを受けながら何時間も藪と格闘しながら歩くので、熱中症には要注意だ。二手に分かれて歩き始める。千葉らっち、やっちゃんと自分は先発チームとして一足先に小屋を目指す。剣ズリでちょっとしたスリルを味わいながら、なんとか餓鬼小屋に到着する。心配していた鈴木さんも思ったよりも早く小屋に到着。顔色も良く一安心。今夜のビールはほどほどにね、と皆に言われている姿が微笑ましい。
 この日は十五夜の翌日で、美しい月夜が広がる。雲海が広がり、山々が月夜に照らされ神秘的な一夜となる。千葉らっちが素晴らしい夜景の写真を撮る。呼び名の由来にもある通り写真を撮るのは得意のようだ(笑)

美しい月夜が広がった

【9月16日】 記録:小芝(麻)
餓鬼岳の頂上にて  天気がよければ唐沢岳までピストンする予定だったが、餓鬼岳山頂に立つと霧で唐沢岳が見えない。眺望が期待できないため唐沢岳登頂は諦め、予定を変更してこのまま下山することにする。
 テントを撤収し、幕場を後にする。一般縦走路だが快適な下山道とは言い難い。沢沿いの道を歩くのだが、腐って数本折れているハシゴに気を配り、川の脇をへつり気味に歩き、濡れて滑べる岩場に神経をすり減らせながら下山をする。雨の日は歩きたくない道だ。しかし沢の水は綺麗で、魚止めの滝は迫力がある。そんな素晴らしい景色を前に写真を撮っていると、足元がツルっと滑り、下半身が沢に浸かってしまった。暑かったら、ちょうどいいかと思いつつ歩き始める。ほどなくすると、この行程での初めての水場に到着。水の美味しさに感動し、一同再び元気が漲る。
 そうこう歩くこと6時間。無事に下山できた。車を走らせ大町市の上原の湯で入浴。体中についた松脂を洗い落とす。藪こぎで青アザとすり傷だらけになった自分の体を見て、「良くやったね」と、自分で自分をついつい褒めてしまった。脱いだズボンには藪こぎで破けた個所がある。どうやって補修するか。ルームの時にアッコさんに相談してみよう。
 藪ルートは自分にとって初めての経験。藪こぎのコツや、ルートファインディングの方法など勉強になることが盛り沢山だった。藪ルートの魅力が少し分かってきた気がする。

沢沿いを下山

〈幕場情報〉
 2,166Pの手前(沼地の先)に幕を張ったが、他にも幕が張れそうな場所があった。
 ・2,166Pの後、笹薮を抜けたところ
 ・清水岳のピークまでは藪や木の根が多く幕場適地はないが、ピークを過ぎたあたりに数箇所張れる場所あり

〈コースタイム〉
【9月14日】 中房温泉第2駐車場(6:05) → 有明山3峰ピストン(10:10~10:40) → 2,283P(12:00) → 2,166P(幕場)(14:00)
【9月15日】 2,166P手前(幕場)(5:30) → 清水岳 → 東餓鬼岳(9:30) → 東沢岳(12:00) → 剣ズリ(15:30) → 餓鬼小屋テン場(16:30)
【9月16日】 餓鬼小屋テン場(5:00) → 餓鬼岳山頂(5:20) → 餓鬼小屋テン場(撤収)(5:50~7:00) → 大凪山(9:10) → 1,500m水場(10:35) → 白沢登山口(13:00)

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