山行日 2019年7月13日~16日
メンバー (L)青木、清水、千葉(朋)、眞鶴
行った人が皆、口を揃えて「いい山」という飯豊山。ずっと行ってみたいと思いながらも、交通の便や天候が良くなくて先延ばしになっていた山だ。どうせ行くならより長く歩いてみたいと思い、今回3泊4日で計画した。雄大で美しい稜線と多くの高山植物に彩られた縦走路。飯豊は噂にたがわぬ良い山だった。
【7月13日】 記録:千葉(朋)
「飯豊は豪雪の山である。降り積もった雪は雪崩となって沢を埋め、豊かな水は深い谷を削る。華やかなお花畑をともなって主稜は長く連なり、山腹をブナ林が覆う」(2019年度版山と高原地図『飯豊山』より)。
海の日の3連休と平日1日の3泊4日で、飯豊連峰を連峰の最北端に位置する杁差岳(1,636m)(新潟県関川村)から北股岳(2,024m)~飯豊山(2,105m)~三国岳(1,644m)~弥平四郎(福島県西会津町)まで縦走する青木さんの企画に参加した。梅雨明前ですっきりしない天気だが久々の縦走で楽しみだ。
7/12(金)、22:10に旅人でごった返しているバスタ新宿に集合。我々が乗る新潟行きの3列バスも満席だ。私は朝までぐっすり睡眠を取れた。翌23日(土)早朝、バスは新潟駅に到着。JR白新線が来るまで駅前のコンビニで朝ご飯タイム。真鶴くんに「水、買っておいた方がいいスかね」と聞かれ「そうだね」と適当に答えたところ、彼は2L買い、そのまま手つかずのまま縦走した。水場が少なく真鶴タンクは心の余裕となった。
白新線で新発田駅へ、羽越本線に乗り換え坂町駅へ、さらに米坂線で越後下関駅へ。越後下関駅はICカード不可の小さな駅だ。駅前には予約していたタクシーが待っていた。運転手の世間話を聞きながら25分程大石川沿いに走る。今年は雪が少なかったそうで小さな大石ダムはあまり水を貯めていない。この辺は過去に水害がありダムを小まめに放水しているそうだ。大石ダムを過ぎ奥の彫刻公園に到着。小雨が降っている。もう一台バンが停まり仙台からという4人組が降りて来た。
カッパを来て東俣川沿いの林道を1時間程歩く。本日の目標、杁差岳は1,636m。1,400m登る。西俣川のほうから登る大熊尾根は崖崩れがあって現在は通行止めだった。
みんなのザックは4日分の食料でずっしりしている。前杁差岳まではひたすら細い尾根を登る。足元は丁寧に刈払いされていて歩きやすいが、急で汗を絞り取られ息が上がる。前を歩く青木さんと真鶴くんのお尻が見える。二人は重いザックにペースを乱されることなく上がっていくので私はどんどん離されて、最後でいいというミーコさん(清水さん)とゆっくりのペースで歩く。霧雨は途中で上がりカッパを脱いだが、今度は暑くて仕方ない。初めて太ももが攣って騒いでいたらミーコさんが絶妙な素早さで芍薬甘草湯を差し出してくれた。
飯豊の山は豊かで、ブナは美しく、空には凄い数のトンボが飛びまくり、バッタ、蛙、トカゲが現れ、ウグイスは鳴きっぱなし、何者かの黒いフンが落ちていて、ゴルフボールくらいの巨大カタツムリが転がっていて踏みそうになったりとなんだか賑やかだった。
前杁差の手前でガスが晴れ、美しい緑の湿原がきらきらと光を浴びて広がった。真っ白な雪渓から心地よい風が吹き、点々とする池塘の透明な水の中を一匹の小さな蛙が気持ち良さそうに平泳ぎしている。疲れが吹き飛び、そのままテントを張ってしまいたいくらい気持ちが良かったが、予定通り杁差岳に向かう。杁差までは美しい景色に囲まれて楽しく歩く。青空が広がりほっとしているリーダーの姿を見ていろいろと気を遣ってくれているんだなと感じる。
杁差岳の標識が頂上にちょんと見え、上がって行くと太陽に煌めく日本海が広がった。後方にはこれまで歩いてきた峰々、前方には明日から歩く尾根が連なる。遠くには鳥海、朝日連峰の姿が見える。聞くとこんなに晴れたのは久しぶりらしい。なんてラッキーなんだろう!絶景を満喫していると頂上の真下の小屋から大声で「いらっしゃああい」と呼ばれ降りて行くと盛大な歓迎を受けた。どうやら仙台のパーティと勘違いしたようだ。
水場は小屋の下の雪渓を3分下るとどしゃどしゃ出ていてプラティパス8本分の水を採った。
杁差の避難小屋は小ぎれいな2階建て。1階にはソロの男性が2人いた。
いつものようにつまみを広げて山行の始まりに乾杯した。食事当番の真鶴くんが豚を炒めていると窓の外が騒がしくなった。鍋を置いて皆で外に出ると、空と雲と海がピンク色に染まっていて夕陽が真っ赤になっていた。サンダルのまま杁差の頂上に駆け上がると360度ピンク色の空気に包まれた。天気予報では今日はずっと雨のはずだったので、みんなの感激はひとしおだ。しばらく夕陽のなかではしゃぎ段々と顔が見えなくなって、海にイカ釣り船の白い光がぽつぽつと灯った。「明日も天気がいいといいね」と言い合いながら小屋に戻り、豚キムチ丼を堪能した。
【7月14日】記録:清水
昨日の真っ赤な夕焼け空からガラリと変わり真っ白なガスの中、杁差小屋を出発。今日は梅花皮小屋までの稜線歩きです。沢山の花に出会えるかな。歩き始めるとまもなくニッコウキスゲの縦走路が出現し、テンションがあがります。
時折ヒメサユリやハクサンフウロも咲いていて、ピンク色と黄色のコラボレーションが綺麗でした。大石山を過ぎ頼母木小屋にて休憩。この小屋のトイレは自転車のペダルを漕いで処理するバイオトイレです。小屋の中を覗くと「リピート山中、山小屋コンサート」のポスターが貼ってあり、頼母木小屋で昨日今日と開催するらしく本人らしき人がお散歩していました。
頼母木山、地頭山とピークを越え少し疲れてきたな~と思う頃に一瞬ガスが取れ、雄大な縦走路と雪渓とお花畑が現れて、(勝手に)ご褒美と解釈しながら進みます。やがて門内岳に到着です。直下に門内小屋があり、周り一面にミヤマキンポウゲが咲き乱れていました。
本日最高峰の北股岳に到着し休憩を取り、宿泊地の梅花皮小屋に向かって下ります。小屋が見えてくると同時に石転び沢も見え、小屋に詰め上がる直下の斜度は45度あるかな?かなり急に見えました。梅花皮小屋は大きな小屋で到着時には小屋泊よりテントの数の方が多かったですが、夜には小屋もほぼ満員になっていました。テント設営後に雨が降ったがすぐに止み、明日は長丁場なので夕食後早めの就寝となりました。
【7月15日】記録:青木
4日間で最も行程が長いので、頑張って早起きして4時に出発。初日以外の朝食は個食にしたので準備に手間はかからない。清水さんが朝食にカップ焼きそばを食べていたのは斬新だった。腹持ちが良いそうだ。
まだ暗い梅花皮小屋の幕場をヘッデンで出発し、烏帽子岳へと進むと次第に空が白んでくる。ガスが晴れると遠くの峰で濃い新緑と真っ白な雪渓が美しいコントラストを見せていた。傾斜はそれほどきつくはないが、ところどころ雪渓が残っているので念のため軽アイゼンを履く。しかしまたすぐに雪渓は消え、アイゼンをとったりつけたりと面倒くさい。
御西小屋はたくさんの小さな黄色い花に囲まれてメルヘンチックな雰囲気だった。宿泊した杁差小屋と梅花皮小屋はどちらも水が豊富に出ていたが、今年は雪解けが遅く御西小屋の水場はまだ水がとれる状態ではないらしい。ここに重い荷物をデポして軽身で飯豊山の最高峰、大日岳をめざす。真鶴君は元気いっぱいで、テントや初日に買った2Lの水もそのまま担いで行くという。
大日岳直下は岩稜帯で、岩をつかんで登って行く。コースタイムより早めの1時間半で山頂に着いた。ガスに囲まれて展望がなく残念だったが皆で記念撮影し、休憩していると途中で我々を追い抜いたソロの男性が山頂から少し下りた水場で水をくんで戻ってきた。水場は急斜面にあり、行かないで済むなら行かないほうがいいそうだ。
御西小屋に戻りいよいよ飯豊本山へ。湿地帯のお花畑の中を歩いていく。ガスっているが、良く言えば幻想的か?ポジティブに考えよう。アップダウンを繰り返し、本山はまだかな、まだかな、と思っていたらいつの間にか山頂に着いていた。賑やかな山頂を想像していたのだが、意外にも静かな山頂で休憩をとる。ここから宿泊予定地の切合小屋まではおよそ1時半。本山小屋を過ぎると、登山道はぐんぐん高度を下げていく。途中お秘所(おひそ)と呼ばれる切り立った岩場の難所もあるが、くさり越しに慎重に下れば特に問題はない。
切合小屋の手前は、地図には「下山時迷い易い」と書いてある。地形は開けて広くなっており、雪渓で登山道が隠れて霧で周りがよく見えない状態では確かに方向を間違えそうだ。
15:40、ようやく切合避難小屋に到着。明日は平日ということもあり広い幕場は我々の貸切りだ。水場は小屋の目の前にホースで引かれていてありがたい。小屋前では登山客がビールを飲みながら談笑している。飯豊のビールは日本一高いと聞いていたが、数日ここにいると感覚がマヒしてしまう。350ml缶で800円。う~ん、高級ビールが乾いたのどに染み渡る!明日は下山なので残ったつまみが皆のザックから次々と出てきて、今日も楽しい宴会で締めくくりとなった。
【7月16日】記録:眞鶴
切合避難小屋4時起床。くもり。テントから這い出るとガスの隙間から大日岳と飯豊本山を拝ませてくれたが、しばらくすると谷から湧き上がってくるガスに隠されてしまった。
朝食の準備の最中、歓声が小屋前から聞こえてきて、せっかくなので朝食(ウインナー茶漬け)を手に持って小屋前へ行くと、目の前に雲海その遠くに左から朝日連峰、蔵王連峰、磐梯山が見渡せた。朝陽がこちらを照らして素敵なモーニングタイムになった。
テントを撤収し小屋番さんに一言挨拶をして6時に出発。切合避難小屋と疣岩山の間に雪渓が2、3ヶ所あったが慎重に足をおけばアイゼン無しでも滑る箇所はなかった。平日火曜日ともあってか、すれ違った登山者は2人のみ。静かな登山道をときおり後ろを振り返ると、前日踏んだピークや稜線にまだ残雪ある沢が突き上がっていて綺麗だった。
三国岳、上ノ越あたりで休憩しながら弥平四郎登山口に無事下山し、4人で握手し完歩を喜び合い、計画時刻ぴったりのタクシーに乗込み帰路へついた。
【7月13日】 | 東俣彫刻公園(8:30) → カモス峰(12:00) → 前杁差岳(15:20) → 杁差岳(16:30) → 杁差小屋(16:50) |
【7月14日】 | 杁差小屋(6:30) → 頼母木小屋(9:00) → 門内小屋(11:30) → 北股岳(13:00) → 梅花皮小屋(14:00) |
【7月15日】 | 梅花皮小屋(4:00) → 御西小屋(8:20) → 大日岳(10:20) → 飯豊山(13:20) → 切合小屋(15:40) |
【7月16日】 | 切合小屋(6:00) → 疣岩山(8:40) → 弥平四郎登山口(11:50) |
〈交通費〉
【行き】
新宿-新潟 高速バス 6,900円
新潟駅-越後下関駅(JR信越本線・米坂線) 1,140円
越後下関駅-東俣彫刻公園 タクシー20分 約4,000円
【帰り】
弥平四郎登山口-野沢駅 タクシー1時間 約10,000円
野沢駅-会津若松駅(JR磐越西線) 780円
会津若松-新宿 高速バス 4,660円
〈下山後の風呂〉
富士の湯 会津若松駅から歩10分 450円
〈下山後の食事〉
マルモ食堂 会津若松バスターミナル隣り、創業120年の定食屋。定食もラーメンもおいしい。おかみさんも親切です。