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沢登り・釜川ヤド沢
内田 優生

山行日 2019年8月3日~4日
メンバー (L)内田、永岡、小芝(泰)、深谷、金子

 釜川は盛夏の沢だ。昨年右俣を遡行した際、晴天の中の三ツ釜があまりにも素晴らしく、是非もう一度行きたいと思っていた。ヤド沢も遡行価値が高いと色々な記録にあったので、今年はここだと思い計画した。気がかりは幕場だけだった。通常日帰りの沢だが、5人で遡行するのでとても通常の遡行時間で行けるとは思えない。ただ泊まりの記録も乏しく、それもかなり上流まで幕場適地はないとある。まぁ、まだ日も長いしなんとかなるだろうと思い、出発した。

巨岩帯エリア チョックストーン  大字秋成の民家あたりから駐車場までの道はまるでウサギがつけたかのように、何筋も道が派生していて迷いやすい。ナビには出ない程の道なので、最後はGPSを見つつ当たりを付けて進んだ。 無事到着してみると既に車は4台程止まっている。この沢はすっきりしたルートとアクセスの良さからいつの間にか(昔から?)大人気ルートになったようだ。その後も次々と車が到着する。こんな人数(少なくとも6パーティ以上)で沢に入るのか!と思いちょっと辟易したが、幸いな事に沢に入るとうまい具合にバラけ、さらに全パーティ右俣だったようでホッとする。 水量は平水。昨年ロープを出した長いトロの淵も全員スルスルと泳いでいく。金子さんが若干苦戦していたので、KGが空身で泳いで戻り金子さんのザックを引っ張るが、金子さんからすると浮きにしていたザックが取り上げられそうになり、親切心が仇?のパターンとなっていた。

三ツ釜直前のトイ状は突っ張りで越える  巨岩帯はそれぞれ好きなルート取りが出来るので、乗っ越すのに疲れるが面白い。

三ツ釜で記念写真  トイ状の急な水流を突っ張りで越えると、目の前には三ツ釜が巨大スラブの上にドドーンと鎮座した光景が広がる。いつ見ても圧巻だ。千明さんはだいぶ前に三ツ釜を遡行して、もう一度来たいと切に願っていたようで、とても満足そうだった。一緒に来られて良かった!

ポットホールでスリル満点の滑り台  三ツ釜の一段目は緩い傾斜から始まり、最後の数メートルが若干厭らしいのでお助けスリングを出した方がよいかも。その後対岸に渡る記録もあるが、我々は安全にヤド沢方面に高巻き、ヤド沢に降りてから三ツ釜のポットホールまで戻り、ここで小一時間程遊んだ。
 大人になってこんなに遊ぶことはないという程、滑り台やら飛び込みやらで動画を撮りながらキャーキャー騒いだ。もう今回の遡行目的の8割は達成されてしまった。散々遊んだ後、水から上がりヤド沢へ歩を進める。上から見ると後続パーティの男性二人組がカムでセルフを取りながら、我々が散々飛び込んだポットホールにおそるおそる浸かっていて、なんだかちょっと滑稽な絵図だった。もしくは我々がクレイジーすぎたのか!?(注)滑り台はあくまで自己責任で!私はもちろんやりませんでした。

15滝は右壁を登る  ヤド沢に入ると途端に人の気配が消えた。高巻きも滝も先程より手ごわく残置物もない。そして先程までの気持ちの良いフリクションが一変してヌルヌルの岩質に変わった。 これが登攀をワンランク厳しくしている。 高さは大してないけど、滑るんじゃないかという恐怖心が常にあった。ヤド沢の登りでロープを使ったのは2か所。美滝15mの右壁と30m滝左壁の緩傾斜のリッジ。15m滝は途中までは傾斜も緩く、右のブッシュで支点が取れたが最後の5mくらいが立っていて、完全なシャワークライミングとなる。あまりまともな支点も取れないので慎重に上がった。上部は実際右のヤブに入っていき高巻くことも可能。水量もそこまでないので、今回は直登してしまったが後続にはあまり嬉しくないライン取りだったようだ。

30m滝はリッジをフリクションで登る  もう一か所は30m滝のリッジ。リッジではなく左の溝を使って登った記録もいくつか見たが、ヌルヌルなので迷わずリッジを選択。ここはフリクション抜群で登れるが、さすがに40m一度も支点を取らずに登ると、なんだか体がムズムズする感覚があった。空身で登ってしまったので、さぁどうやって荷物を回収しに行こうかと思いあぐねていると、下から芝ちゃんがユマールをカシャカシャ言わせて、ダブルザックで上がってくるでなはいか! その様相はさながらターミネーターのようだった。助かった~。ちなみに今回40mロープ持参で正解だった。
 その後出てくる小滝は高巻き、薄暗くなってきた頃50m大滝に到着。ここで時間切れとなり、増水にはとても耐えられないであろう左岸の岸を丁寧に整地して幕を張る。千明さんのご馳走をたんまり頂くと、皆、酒も空けないまま眠りについた。今日は10時間行動でそこそこハードな1日だった。

50m大滝手前の左岸を整地50m大滝にて

 ここまで来ると2日目の行程は長くはないので、遅めの起床で久々に沢でのんびりとした朝を過ごし8時半出発。
 改めて高巻きポイントを探すと、我々が幕を張ったあたりのリッジから踏み跡が続いていたので、あとはこれをひたすら高巻く。しばらく上がり滝に向かいトラバースを開始する。ところどころ踏み跡が消えるがヤブを越えるとまた踏み跡が出てくるといった具合で、踏み跡を丁寧に辿りながら進むと、ちょうど4段の滝下に出る道が続いていた。しかし一番下の段が厳しそうだったので、このままさらに高巻く。傾斜が緩くなったあたりでひたすらトラバースし、その後40mロープを使い2回の懸垂で4段の滝の落ち口に降りる。朝から高巻きに2時間近くかけてしまった。この先は一転してずっとナメが続く。途中右岸に整地すればそこそこの幕場になるエリアが出てきたが、どうあがいても昨日ここまで来ることは無理だったろう。その後ナメや2-3mの小滝を越え快適に歩いていくと、沢が二俣に分かれ、もうすぐ林道が近いことがわかる。ここで右に入りしばらく行くと最後に足がつかないくらいの深さの釜が出てくる。ここで最後の水浴びをする。二俣に入ってから豆腐のような不思議な石の塊が散見された。石灰石?触るとヌルヌルした粘土質で片手で簡単に潰せるほど脆い。詰めた先の水が不味いという記録があったけど、はたしてこれが原因なのか?沢が林道と交差するところで遡行終了。林道は思ったより長く、水浴び効果も薄れ暑さに耐えられなくなってきた頃、曲がり角の先に駐車場が突如現れた。時間は14時近かった。まだ、ずらっと車が残っているのを見ると、右俣に入ったパーティの混雑状況がうかがえる。ヤド沢は右俣同様に素晴らしい沢ではあるが、おそらく幕場適地が少ない事で、遡行者の数という点において右俣に軍配が上がっているように思う。その後はグリーンピア津南でお風呂に入り、湯沢の人参亭でとんかつを食べて、関越の合計70キロの渋滞に飛び込んで帰路についた。釜川はやはり盛夏の沢だった。今後は夏の恒例行事になるかも。

〈コースタイム〉
【8月3日】 駐車場(7:20) → 二俣(9:07) → 三ツ釜 (11:48~12:40) → 15m滝(13:20~14:20) → 30m滝(15:20~16:20) → 50m大滝(17:10)
【8月4日】 50m大滝(8:35~10:30) → 林道(12:30) → 駐車場(14:00)

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