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縦走・中央アルプス南部
小芝 麻紀子

山行日 2019年11月2日~4日
メンバー (L)千葉(快)、野畑、清水、小芝(麻)

【11月2日】
 人生初めての中央アルプス縦走に高揚しつつ東京から車を走らせ、駒ヶ根スキー場駐車場に深夜到着。駐車場はとても広く、3連休だが駐車スペースは余裕がある。テントを駐車場に張り、仮眠をとる。
 朝5時に出発する。入り口には「熊注意」の看板があるが、今回の賑やかなメンバーには熊鈴は不要な代物だ。結局自分が持っていた熊鈴は一度も出番がなかった(笑)。出だしはハイキングコースが入り交じる登山道を歩く。しばらく歩いていると後方から軽快な足取りで登ってくる男性がいる。斎藤さんだ。別パーティで登山に来ていたが本日は我らと同じルートで同じ避難小屋に泊まるという。少し談話をしながら一緒に歩くが、歩くのが速い斎藤さんは10分もすると一人先をゆく。あっという間に姿が消えてしまった。昨晩は2時間程度しか仮眠が取れていないせいか、斎藤さんとは打って変わって、皆足取りが重い。また今日一日で標高約900mから2,800mまで登る。1,900mの高低差も拍車をかける。
 タカウチ場から池山の南側の巻き道である登山道を進む。池山小屋から15分程度手前には、旧池山小屋跡地の看板に水場が記されている。山と高原地図には記載されていない水場だ。登山道から5分ほど下ったところに沢が流れているのでそこで水を汲むことも可能だ。また、山と高原地図に記載されている池山小屋手前にも水場がある。水はどちらも潤沢に確保できた。
空木岳頂上にて  空木岳手前の分岐で、北側のルートの駒石経由を快晴君と自分、南側ルートの空木平経由をバタコさんとミーコさんに別れて空木岳を目指そうという事になった。北側ルートは尾根上を歩き、ここまで来るとハイマツのような低木となるため見晴らしがいい。駒石に着くと、何とか石の上まで登れないかと1周し、裏の方から登ってみるが、登っても降りるのが大変になりそうだったため、断念する。その後、秋晴れの中をルンルン気分で歩き、駒峰ヒュッテまであっという間に到着した。下を見ると、バタコさんとミーコさんが登ってくるのが見えた。南側は沢筋を歩くルートだ。駒峰ヒュッテが上にあるので飲んでも問題ないかは良く分からないが、空木平避難小屋の隣を流れる沢でも水が取れる。時期もあるかもしれないが、この時の水量は豊富だった。バタコさんとミーコさんがそんな谷道から上がってきた最初の一声が「暗いし、寒い」。北側のポカポカ登山道とは大違いのようだ。4名再度集結したところで、全員で空木岳山頂を目指す。空木岳からの眺めは最高だが山頂は寒いため一休みすると、すぐさま稜線を歩き始めた。
 赤梛岳を超え、一気に下り、擂鉢窪避難小屋に辿りつく。最近改修された小屋は綺麗で、外に小綺麗なトイレもある。小屋の中には雨水を入れたポリタンクが置かれ、それを利用できた(ちょうど山小屋を閉めるので管理者の方が雨水を置いていってくれたとのこと。時期的に利用できない可能性もあるので事前に役所に確認することをお勧めする)。朝別れた斎藤さんに小屋で合流し、今夜は5名での宴会を楽しむ。夕飯の食当はバタコさん。何と山で豚バラの酢豚丼がでる。片栗粉を忘れたというが、それが自分にとっては肉が柔らかくヒットだ。パイナップルまで入っていて、酸味が疲れた体を癒してくれる。

【11月3日】
 夜明け前ヘッデンでのスタート。小屋を出て昨日下った道を登り返し稜線にでる。稜線は岩稜帯になっていて、後方を歩いているミーコさんの「オギャ!」という声が響き渡る。この声が聞こえるとミーコさんの調子がいいことは前回の山行で学習した。稜線をオギャオギャと歩き、仙涯嶺で小休止を取る。
 快晴君は愉快な人だ。何故山歩きをしていてそんな会話になったのかは覚えてないが、快晴君が小学校生の時に受けていた音楽の授業の話を始めた。「音楽の授業の始めにお腹の体操って歌を歌いませんでした?」前を歩く快晴君が、前を向いたまま言ったかと思うと、突然歌いだす。「こんな感じの歌ですよ。お腹の体操、あははははっ!」朝から快晴君の歌声でパワーをもらった。
笹に埋もれながら前に進む  越百山へ向かっていると、越百山で折り返し歩いてきた斎藤さんに出会う。ここから藪が始まっているとのコメント受け、斎藤さんに挨拶し、我ら4人は先に進む。コメント通り、越百山の手前から藪が生い茂り始めていて、想定より早く藪が始まっていた。しかし、このあたりの笹は刈られた後があるので登山道は明瞭だ。奥念丈岳まではアップダウンはあるものの藪は歩きにくくはない。秋の枯れ笹の藪ということもあるかもしれない。
 問題は奥念丈岳から先だ。笹は密度を増す。歩けど歩けど目的地に着かない。数か所迷いやすい場所はあるものの基本的には尾根上を歩くのでルーファイは難しいというわけではないが、背丈を超える笹で前が見えず、自分の歩いているところがあっているのか不安になる。途中自分も笹薮を先頭で歩いてみるが、ついつい歩きづらいところを歩いてしまう。ちょっと立ち止まり、目を凝らして、笹が薄くなっていそうなところを見極め歩いていかないと、辛くなるばかりだ。
 先頭をみんなで代わる代わる歩く。ミーコさんのオギャオギャの声も流石に小さくなってくる。みんな疲れが段々と濃くなってくるが、笹薮の中ではなかなか休憩を取ることもできない。黙々とただただ笹薮を漕いでいくと、だんだんと笹が低くなってきた。安平路山だ。山頂手前は右に巻く登山道のようだが道を見失ってしまい、私たちは登山道を逸れ、そのまま直上して頂上に到着した。安平路山から安平路避難小屋までは整備された登山道だ。登山道のありがたみを感じつつ、登山道から見える水場で水を汲み、避難小屋にかけこんだ。今夜のビールはおいしい。ミーコさんが作ってくれた唐揚げ親子丼と、快晴君がもってきた鴨スモークを食べ、肉が体の疲労を回復してくれた。

【11月4日】
 5時小屋を後にする。ヘッドランプをつけて歩き始めるが、程なくすると日の出の時間を迎える。朝日で赤く染まる南アルプスは絶景だ。笹薮の中に切り開かれた登山道を歩いていく。白ビソ山、摺古木山を過ぎ、林道にでると後はひたすら歩くのみだ。途中猿の影が見えると、快晴君はまたあの歌を歌い始めた。「お腹の体操、あははははっ!」猿も熊もこれでいなくなるね、と。そんなたわいもない話をしながら歩いているとコースタイムより早く大平に辿り着いた。
摺古木山にて  タクシーの手配は前夜安平路避難小屋で行っていた。タクシーを待つ間、大平宿では私たちが歩いてきた林道を整備する人に会い、空木岳から縦走してきたことを告げるととても感動してくれた。タクシーの運転手さんにもあの道を歩いてきた人に初めて会ったとこれまた感動されてしまった。何だかすごいことをした気分になる。飯田駅までタクシーでいき、そこから電車に乗り、駒ヶ根駅で下車。タクシーに乗り、駒ヶ根駐車場に辿り着いた。
 今回歩いた縦走路は人が少なく、中央アルプスの良さに浸れる道でした。文才がないので良さが上手く伝えられないのが悔しく。ぜひ皆さんも歩いてみてください。

〈コースタイム〉
【11月2日】 駒ヶ根スキー場駐車場(7:00) → 池山小屋手前水場(9:00) → 駒石手前分岐(12:50) → 空木岳山頂(14:30) → 摺鉢窪避難小屋(16:30)
【11月3日】 摺鉢窪避難小屋(5:30) → 越百山(8:20) → 奥念丈岳(10:50) → 安平路山(16:00) → 安平路避難小屋(17:00)
【11月4日】 安平路避難小屋(4:30) → 摺古木山(6:30) → 大平(9:30)

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