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ハイキング・小赤沢温泉~苗場山
芦川 佳子

山行日 2019年10月26日~27日
メンバー (L)峯川、鈴木(一)、安田、芦川、他1名

 当初の予定は、「母さん僕のあの帽子どうしたでせうね。ええ、夏碓氷から霧積へ行く道で渓谷へ落とした、あの麦わら帽子ですよ...」で始まる、森村誠一先生の有名な小説『人間の証明」の宿、霧積温泉の金湯館さんに宿泊し、翌日は鼻曲山に登るという文芸的な山行であった。私は、松田優作さん版の映画を昔見ており、いつかこの宿に泊まってみたいと企んでいて、峯川リーダーが企画を出してくれた時はぜひと手を挙げ、予習として渡辺謙さん版のドラマの『人間の証明』を見て気分を高めていた。
 ところが、山行の前週に台風19号が猛威をふるい、残念ながら宿への林道が崩れてしまったのである。当初は、宿は営業しているので予定通り行こうとしていたが、やはり危険があるということで中止となった。そして、その変更案として、峯川リーダーが、マタギの宿として有名な出口屋さんに泊まり、翌日、苗場山に泊まるというこれまた素敵なプランを立ててくれた。以前から苗場山には行ってみたいと思っており、さらにマタギの宿ということでご飯が美味しいこと間違いないとこれまた喜んで参加させてもらった。
 この企画は、三峰山岳会とMTC(峯川リーダー主宰のサークルMountain Trip Club)との共同開催で、MTC側から2名女性が参加する予定だったが、金曜日に千葉県に大雨が降り、MTCから参加する予定の1名の方がご自宅に帰宅できないという非常事態で参加できなくなってしまったのである。自然災害で仕方がないとはいえ残念である。
 さて、初日は朝7時に駒込駅に集合し、新潟に向けて出発した。すぐに宿に行ってもやることがないので、無印良品の津南キャンプ場に行ってみることにした。キャンプ場までの山道は、こんなところに無印が?と不安になるような道であったが、キャンプ場に着いたら、そこはもう無印の世界。シンプルながらおしゃれな雰囲気で、手ぶらでもキャンプができる設備がそろっており、夏にはブルーノートのライブもやるという、さすが無印、顧客のニーズ把握が出来ている。せっかく来たのだからとキャンプ場の池の周りを1時間程度周遊したが、これまたここは本当に新潟かしらという素敵な雰囲気であった。
 無印キャンプ場に満足した我々は、またたび祭りを行っている道の駅に寄って、昼食をとり、酒を買い込み、本日のお宿、出口屋さんに向かった。出口屋さんがあるのは秋山郷という山間の集落でちょうど紅葉が綺麗であった。出口屋さんは、マタギの宿らしく鹿の角や何かの皮などが玄関で出迎えてくれる。まだ夕飯には早いので近くにある小赤沢温泉楽養館の温泉に行った。

宿からちょっと先にある小赤沢温泉・楽養館  この温泉は黄土色で硫黄が強く、湯船の底にもろもろした砂のようなものが溜まった今まで入ったことのない不思議な温泉であった。

小赤沢温泉でゆっくりと(イラスト By やっさん)  温泉に入った後、酒を飲んで山の話などしていたら夕飯になった。夕飯は山菜天ぷらから、鹿の肉、キノコと山の幸がふんだんのとても美味しい夕飯であった。これで1泊7,000円は本当に安い。

さすが、マタギの宿です!

 2日目は、早朝に朝食を宿で食べ(これもとても美味しい)、苗場山の小赤沢コースの3合目登山口に向かう。天気はあいにくの雨模様で、登山口で一人ならこんな天気の日は登らないんだけどなと文句を言いつつ、雨具を着込み樹林帯を登っていく。
雨ですが紅葉を楽しみます!  昨晩からの雨で道はぐちゃぐちゃで至る所に水たまりができている。最初は水たまりを避けながら歩いていたが、避けた先でも水たまりができており、途中から避けるのが面倒になって、ばんえい競馬のように靴がドロドロになるのも気にせず登って行った。こんなコンデションが悪いにもかかわらず、さすが百名山、何人も登っていく人にすれ違った。小赤沢コースは天皇陛下が皇太子時代に登ったこともあり、とても道が整備されている。途中鎖場も何か所かあったが、しっかり三点支持すれば問題ない。
数カ所の鎖場を通過します  クマ目撃情報も聞き、鈴を鳴らしながら登っていくと、急に視界が開け、大きな山頂付近の湿地帯に出た。やっさんが初めてこの山に登った人はびっくりしただろうな~と感想を言っていたが本当にそのとおりである。
奇跡的に雨があがり、水墨画のような風景  この頃には雨も止んでおり、見渡す限りの湿地帯の風景が広がった木道をスキップでもしたい気持ちで山頂に向けて快適に歩く。山頂はなぜか見晴らしの良くない少し残念な場所にあったが、せっかくなので皆で写真を撮り、自然交流センターの近くで、宿で頼んだ大きなおむすびを二つ食べた。
雨が奇跡的に止んで、静かな苗場山山頂  自然交流センターはこの日で終わりのようで、片付けの方が何人も上がってきていた。寒いのであまり山頂ではゆっくりせずに、また湿地帯の快適な歩きから、ばんえい競馬場へ現実に戻りながらぐちゃぐちゃになり下山した。
この景色が見られただけでも来てよかった!  帰りは秋山郷の別の温泉の結東温泉につかり冷えた体を温めて東京に戻った。
 急な予定変更になったがメンバーに恵まれとても楽しい山行となった。
紆余曲折ありましたが、皆さんお疲れ様でした!  最後に、このたびの台風19号に被災された皆様が一日も早く平常な生活に戻ることかできますようお祈り申し上げます。

〈コースタイム〉
小赤沢登山口(7:15) → 5合目(8:10) → 8合目(11:00) → 山頂(10:15) → 8合目(11:00) → 小赤沢登山口(13:00)


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