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縦走・栂海新道
萩原 甲輔

山行日 2019年10月5日~7日
メンバー (L)小芝(麻)、津田、萩原

 7月に入会してだいぶ経ったが初めての例会参加となった。入会早々、幽霊会員になったわけではなく、スキルに合わなかったり、時期が合わなかったりで、例会に参加はできていなかったが、岩登りなどの個人山行には参加していた。
 今回の栂海新道は、以前中央アルプスを歩いた時に日本海側から太平洋側に縦走している人がいて、その人が最初に通った道と聞いて気になっていて、個人的に山行を計画していたが、ルームの後の飲み会か岩登りの帰りかでマキさんに話をしたら、行きたいと言ってくれたので、日程を調整し、せっかくだからと言うことでマキさんをリーダーとした例会での開催となった。
 距離と3,000m級の山から一気に海抜0mまで行くことを考えると、かなり大変な山行になると思ったが、3人ともケガせず無事に完遂することができた。
 前夜、新宿都庁下で集合し、まいたびの登山バスで移動。この週末の天気予報が微妙だったせいか乗車率は75%ぐらいで、自分の隣は不在だったので自由な姿勢で寝ることができた。

【10月5日】  1日目、予定より1時間早く猿倉に到着。朝方まで雨が降ったのかしっとりしていた。気温は涼しいくらい。水場は野外のトイレに併設されてあった。朝食をとったり準備したりスマホで自撮りの練習をして出発。出発時には雨は降っていなかったが、歩き出してすぐに雨が降ってきたので雨具を着た。白馬尻小屋の手前で雨があがったので小屋で雨具を脱ぎつつ小休憩した。ここで上空に晴れ間を見つけて少しテンションがあがった。白馬尻小屋から少し歩くと雪渓歩きが始まるが、かなり融解が進んでおり時間にしたら15分くらいだった。雪はカチコチで、登りはいいが下りはチェーンスパイクが必要かもしれない。  雪渓歩きは、ピンクテープを頼りに真ん中を歩いていたが近くでドカッという音が聞こえ、3人の足が止まり思わず顔を見合せると、ためらわず端に寄って歩いた。
 大雪渓を抜けてからは、急登で晴れて暑くなったこともあって3人の足取りも重くなった。

クレバスに怯えながら慎重に進む小屋が見えるところまできた

 稜線に出るとそこが村営の白馬岳頂上宿舎で、小屋閉め作業中のスタッフが談笑していた。小屋直下の水場で2食分+明日の行動水を補給した。白馬岳頂上宿舎からさらに上がると白馬山荘があり、この時期、登山客は少ないようで最小限の施設で運営中だった。白馬岳からは北アルプスの山々や朝日岳、小蓮華山までの稜線が見渡せ、稜線好きの自分はここまでの疲れが一気にふっとんだ。
 標高2,932mの白馬岳山頂で自撮りのスキルアップすることができた。

旭岳、杓子岳、白馬鑓ケ岳が見渡せた標高2,932mの白馬岳にて自撮り

 ここから海抜0mを目指す。雪倉避難小屋までは、風は強く冷たかったが、快晴の空の下、目標が視界の端に見えていたのでなんとか歩くことができた。トイレ付の小屋は自分たちで貸切だった。ただ、すきま風が入ってくるのでツェルトで間仕切りしたらずいぶん快適になった。なかなか出番の少ないツェルトだが、活用方法を見つけることができて得した気分だ。リーダー初日を無事に終えたマキさんは、オールフリーで祝杯。2日目は長い1日になるので、宴を早々に切り上げて早めに就寝した。津田さんは、寒がりだからと言ってシュラフカバーを付けていたが、自分は意外と大丈夫だった。

【10月6日】
 2日目、2時半起床。予報通り夜半から降り出した雨がまだ降り続いている中、4時前に出発。人は、雨の中、暗い道を歩くと緊張感からかも知れないが無口になると分かった。雪倉岳、朝日岳を言葉少なく登頂した3人だが、栂海新道入口の看板を見てテンション上がる。
 ここからは金色の湿原が続く。晴れたら遠くまできれいに見渡せたと思うけど、雨と霧の湿原も悪くなかった。こう思えるのは道が何よりも整備されていたからだと。

ここから栂海新道がはじまるテンション上げ上げである

緑と赤色で装飾された山荘  マキさんが今回の山行にあたり栂海新道を切り開いた人達の本を読んだらしく歩きながら内容を聞かせてもらった。その内容を聞くと強い思いと行動力で成し遂げられており、切り開いたあともきちんと整備が続けられていることに感謝しかない。雨は止むこともなく、むしろ日本海に近づくにつれて雨脚が強くなった気がする。
 そんな中、栂海山荘に到着。雨の中、足元が悪いのに予定通り12時間で歩けた。津田さんは久々の山行で体力を心配していたが、さすがといったところだ。栂海山荘は管理人不在だが事前連絡が必要である。無人だが山荘と名がつくだけあって、40人は泊まれる大きな小屋(一部2階もあり)でステンドグラスがあったり銀マットと毛布が完備されていたりと快適な山荘だ。ただ、トイレは前左右下と解放感があるので女性の方は戸惑うと思う。この日も、宿泊客は自分たちだけだったので、1日雨に打たれて濡れた靴、服やザックを乾かしたりとゆったりと使わせてもらった。そして、マキさんは今日もオールフリーで祝杯をあげ、その後、黒霧島に移行し、明日は本物のビールを絶対に飲むんだ、と宣言して就寝した。

【10月7日】
 3日目、朝起きると雨はあがっており、満天の星がきれいに見えた。暗い中ヘッデンを付けて出発。鹿に遭遇し、お互いびっくり。朝焼けと共に、昨日山荘に着いたときには見えなかった日本海が姿を現しテンションがあがる。白鳥小屋からは、高度を下げるだけと思ったが、木々の間からは日本海が見え、車の音や電車の音が聞こえてくるが、なかなか高度は下がらず単調なアップダウンの繰り返しばかりで、終いには、単なる車道を登山口と勘違いして一喜一憂した。さらに、入道山の山頂を踏んだときは、名前からしてもうこれ以上の登りはないと小躍りしたのに、この後小ピークが2つもあり、心をバキバキに折られた。そしてちゃんと車が走ってる道が見えて、ようやく終わったんだと確信した。後半からずっと自分が先頭だったが、登山口を目の前にして、マキさんに先頭を代わろうと提案したら、みんなで手をつないでゴールしたいと言い出し、津田さんと笑ったが、本人は本気だったらしく、リーダーの指示通り3人で手をつないでゴールした。ゴールした証跡となる写真もちゃんと自撮りした。登山口の目の前の幹線道路を渡ると、入浴と駅までの送迎をお願いしていたホテルがあり、崖の下に降りる階段の先が海岸だ。荷物をデポし、海抜0mの日本海の海岸へ。自分の時計の高度計は-60mを示していたが気にしない。海岸で何かをされていた方がいたので記念撮影をお願いした。
海抜0mでみんな笑顔  ホテルの玄関には、ブラシと水道があって靴やストックの泥を落とせた。ホテルで入浴(日本海が見渡せる浴場)して親不知駅まで送ってもらった。糸魚川駅周辺で祝杯をあげようと思ったが、だいたいのお店が17時からなので待つのは断念した。ローカル線から北陸新幹線への乗り継ぎは15分ぐらいしかないので、切符購入後、キオスクで本物のビールとおつまみをダッシュで買い、3日間の労をねぎらって新幹線の中で祝杯をあげた。安心したら小腹が減っていたのを思い出して新幹線の中でご当地駅弁を買おうとしたが、車内販売は弁当や軽食の取り扱いが無かった。嘆いても仕方ないので行動食の残りで飢えをしのいだ。

 栂海新道はもっとツライ山行になるのだろうと心配していたが、道が整備されていて楽に歩けたのと、水場の水量も豊富で安心できたし、何より一緒に歩いてくれた仲間がいてほんと助けられた感じでした。次に栂海新道を歩く機会があれば、天気のよい日に親不知側から歩いてみたい。
 今回、やりたいことを話したら理解してくれる人がいて、共感してくれる人がいて、一緒に行こうと言ってくれる人がいた。それがほんとうれしかった。山岳会に入ってほんとによかったと思えた。

〈コースタイム〉
【10月5日】 猿倉(5:30) → 白馬尻荘(7:00) → 村営頂上宿(11:15) → 白馬山荘(11:40) → 白馬岳(12:40) → 三国境(13:17) → 雪倉岳避難小屋(15:30)
【10月6日】 雪倉岳避難小屋(4:00) → 雪倉岳(4:40) → 水場(6:00) → 水平道分岐(7:50) → 朝日岳(8:20) → 千代ノ吹上(8:50) → 黒岩平(11:40) → 黒岩山(12:25) → サワガニ山(13:50) → 北又の水(14:30) → 栂海山荘(15:50)
【10月7日】 栂海山荘(5:00) → 黄連の水(6:30) → 白鳥の水場(8:10) → 白鳥山(8:40) → シキ割りの水場(9:55) → 尻高山(11:25) → 栂海新道登山口(13:30)

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