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ハイキング・鳥海山
内田 優生

山行日 2020年7月23日~24日
メンバー (L)内田、峯川、箭内、木村(咲)、長浜、(川口)

鶴間池で一休み  鳥海山は過去何度か計画して未だに未登頂の山だった。なんせ遠いので早々気軽には行けない。梅雨時真っただ中で中止のリスクはあるものの、7月の花々がベストなシーズンで挑む事にした。ルートは身重の身なので一番短く麓に小屋のある湯ノ台道ルートに決めた。水曜夜に出発したが東北道はまさかの大混雑で目標の仮眠地である安積まではたどり着けず、那須塩原で仮眠を取ることにした。翌日の行程は滝ノ小屋までの徒歩15分なので、滝ノ小屋登山口のちょっと手前にある鶴間池を散策することにした。「車を林道に止めて30分程歩くとブナの原生林に囲まれた神秘的な火口湖が現れる」という言葉に従いユルユル散歩気分で歩き始めると想定外にも梯子とロープが連続する急登を下らされる。全然ユルい散歩じゃないじゃん!という事で我々はこの池をマンズル池と命名した。ブナの森はジトっと暑く、沢の水が冷たくて気持ち良い。鶴間池は思ったより大きく、キレイなブルーグリーンの湖水は神秘的で癒される。各々木の根っこに座りここでランチをとった。
 滝ノ小屋登山口の駐車場は連休らしくずらっと車が並び、なんとか空いているスポットに車を滑り込ませる。登山口には大きく立派な建物があり、箭内さんは以前山スキーで来た際にそこを起点としたこともあるらしい。15分歩いて、本日のお宿の滝ノ小屋に到着。上からは登山者が続々と降りてくる。このルートは朝発であれば日帰りルートとなるので、小屋に泊まる人はそう多くはないらしい。小屋の前にはちょっとした芝生のスペースがあり、早速ここを陣取り宴会スタート。
小屋の前で宴会スタート  箭内さんから全員に嬉しいビールの差し入れがあった。小屋の中では小屋番の男性の一人が大量のネマガリを処理していた。今夜の夕飯に出るのかと思い聞いてみると、こちらは小屋番の方の賄いメシらしい。我々にはカレーライスが出されるとのこと。なーんだ、ガッカリ。この小屋はバイオトイレが完備されほとんど匂わない!こんなことでも山小屋全体の印象はあがる(女性には)。この日は4パーティ程、総勢12-3名が宿泊していた。夜になり小屋で出された夕飯のカレーライスを黙々と食べていると、箭内さんが小屋番に「ネマガリ汁あるんだろ~。出してくれよ~」と絡み始めた。箭内さんが厚顔ぶりを発揮したお陰で全員美味しいネマガリ汁にあずかることが出来た。こういうメンバーがパーティに1人いるとちょっと恥ずかしいがありがたいこともある。チェックイン時には「20時半就寝でお願いしますよ!」と何度も山小屋の人に言われたが、当の山小屋のおっちゃん達(3-4人いる)の仕事が一段落すると、おもむろに登山客と飲み始め本格的に夜の宴へと突入。山葡萄酒やら日本酒やらを宿泊者に振舞い始め、山の歌を歌い始め(もちろん手拍子付き)、最後は千鳥足になり何度か床に派手にぶっ倒れていた。まるで三峰の重鎮メンバーの誰かを見ているようで、非常に親近感が湧く。結局就寝時間をきっちり守り床に入った我々の真下で、小屋番と登山客の宴会はいつ終わるともなくヒートアップしていき、そんな喧噪の中長い1日の眠りに落ちていった。なんだかユルくていい小屋だな~。

 翌朝、好天期待に反して外は濃霧。それでも歩き始めて1時間もすると徐々に青空が顔を覗かせ、くっきりとした大きな虹と雪渓の先には外輪山がはっきりと見えるようになり、テンションも徐々に上がってくる。
 途中様々な花が現れては皆で言い当てながら歩いていく。この時期鳥海山で見られる花を写真付きでまとめたものを、予め箭内さんがプリントしてきてくれ同定するのに非常に役に立った。八丁坂を1時間も歩くと河原宿小屋(現在は閉鎖)に到着。ここにはキレイな水洗トイレがあった。一般登山道においてトイレは山の印象を構成する重要な要素だと思うのでこれは◎。ここを過ぎると間もなくして雪渓が現れた。

朝もやに浮かび上がる滝ノ小屋長く続く心字雪渓

 スキー板を持って上がる人もいる。雪の上を歩くトカゲ発見?と思ったらなんとサンショウウオだった。新人の木村咲稀ちゃんがこの手の爬虫類にとても詳しく、そしてカワイイ~と言って容赦なく素手で掴むものだから一同びっくり。比較的歩き易い登山道を黙々と上がると伏拝岳に到着。目の前には新山と御室小屋の全景がどーんと聳えている。
 西側の御浜小屋の方からは列をなして歩いてくる登山客が見える。今日は貴重な梅雨の晴れ間なので相当な数の人があがってくるのだろう。ここからは外輪に沿って歩くのみ。登山道脇にはイワギキョウやイワブクロ、ミヤマキンバイにハクサンフウロなどが咲き乱れていて、まさに花の山を体現していた。9時半前には七高山に到着。

外輪から新山を眺める七高山頂上で

 頂上は登山客で溢れかえっていた。長めの休憩をしてもと来た道を辿っていく。雪渓では木村咲稀ちゃんが尻セードを試みるがイマイチ滑りが悪い。斜度が足りないのかな。あっという間に小屋に戻り、デポさせて頂いた荷物をピックアップして下山した。今回出発直前に小池都知事から「連休は遠出を控えるように」とアナウンスもあり(遅いわ!)、コロナ禍の山行で多少気も使ったが、総じて田舎は田舎らしくノンビリとした空気だったように思う。下山後入った立ち寄り温泉では、マスクをしている我々が目立ってしまうくらい、山形県民はマスクをせず若干のカルチャーショックすらあった。それにしても、こんなに連日の雨の中、唯一スッキリと晴れ渡った日に鳥海山に登ることが出来たのはまさに奇跡。天気とメンバーには感謝だ。この後の行程はすっかり観光旅行へと趣が変わったので、立ち寄った場所のみ下記に記載させて頂きます。どこも素晴らしく、せっかく遠方から訪れるのであれば、是非足を伸ばしてもらいたいと思う。

みさき公園キャンプ場で打ち上げ その①酒田のシンボル・山居倉庫
出羽三山の一つ・羽黒山出羽三山の一つ・湯殿山
湯田川温泉・隼人旅館で打ち上げ その②

立ち寄り湯:あぽん西浜 400円
キャンプ場:三崎公園キャンプ場(夕日が見える海沿いのキャンプ場で三峰御用達らしい)
蚶満寺:古くから文人墨客が訪れた名刹(余談だが、象潟は昔「東の松島、西の象潟」と呼ばれ松島同様に無数の小島が浮かぶ入江だったのが、1804年の大地震で隆起し陸地化したらしい)
羽黒山:出羽三山のひとつ。五重塔は必見。
土門拳記念館:鶴岡にある写真専門の美術館で、土門拳の写真の力強さは見る価値があります。
湯田川温泉・隼人旅館(源泉かけ流しの宿・料理もボリューム満点!)
湯殿山:出羽三山の一つ。撮影禁止なのが残念だが、裸足になってご神体(源泉?)に登拝する経験は貴重です!

〈コースタイム〉
【7月23日】 鶴間池散策(11:30~13:00) → 滝ノ小屋駐車場(13:45) → 滝ノ小屋到着(14:00)
【7月24日】 滝ノ小屋出発(5:00) → 伏拝岳(8:35~8:50) → 七高山頂上(9:20~9:40) → 滝ノ小屋到着(12:40~13:05) → 滝ノ小屋登山口(13:20)

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