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沢登り・魚野川万太郎谷本谷
寺井 斉也
菊池 啓

山行日 2020年8月29日~30日
メンバー (L)小芝(泰)、宮本、小芝(麻)、寺井、菊池

 初めまして。寺井です。
 今回の岩つばめは1日目寺井、2日目菊池さんの二部構成でお送りします。

 魚野川水系・万太郎本谷。美しい花崗岩にナメ床、釜、トロ、大滝、源頭部の草原を経て谷川岳に詰めあがる名溪です。
 前日に入渓点の土樽に到着。入渓点直近の駐車場まで行きたかったものの道路の状況が悪かったため無理をせず、駐車場から北に300mほど戻ったところに駐車スペースがあったため、そこに車を停めて2時半まで宴会をした後に仮眠をとりました。

【8月29日】 記録:寺井
 7時に駐車場を出発。仮眠中に5台ほどの車が登って行ったので先行パーティーが複数いるのでしょうか。やはりこの沢の人気はすごいです。三峰入会後初めての山行で同期の菊池さんもおり、なんだか胸が高鳴ります。
ボルダリングを楽しむお方(宮本さん)  駐車場から10分程歩いたところから入渓。入渓点にはしっかり踏み跡がついていて入りやすくなっておりました。入渓後、堰堤を2、3ヶ所ほど越えるとナメ滝があり、ここで一本取ることに。ゴーロを歩いていくと関越トンネルの換気口が右手に見えます。なかなか違和感のある景色だけど分かり易い目標物でした。続いてオキドウキョウのトロに。左岸を巻いて進む事が出来ますが泳いで突破することにしました。泳ぎの必要なゴルジュ帯が二つに分かれており、泳ぎが得意ではない僕は一つ目のゴルジュ帯は左岸をへつって突破することが出来ましたが、二つ目のゴルジュ帯では滝の流れに負けて中々進むことが出来ません。それに加えて必要以上に浮かぶザックとヘルメットに邪魔をされ溺れそうになりました。そこに救世主の小芝さんがお助け紐を出してくれました。神の手助けを頂きなんとか上陸。そんな中左岸のハングした壁で一人ボルダリングを楽しんでいるお方が。すごい・・・、いや、むしろこわい。このお方の登攀技術に耐えきれず靴はしっかり崩壊しておりました。
一ノ滝登攀  そこからいくつかの小滝を越えた後に本日の核心である一ノ滝。
 ホールドも豊富にあり、さほど難しくはありませんでしたが、高度感があるとやはり少し怖いものです。小芝さんがリードで登ってゆく姿がとてもかっこよく見えて僕も早くリードを任せてもらえるようになりたいなぁと思ったのでした。
 一ノ滝の登攀を終えるとすぐに二ノ滝へ。二ノ滝も左岸側を登り、左岸側は岩が階段状になっておりましたが念のためロープも出して進みました。
 そして幕場探しへ。二ノ滝を越えてトイ状、小滝を越え5分程度歩いたあたりの右岸側に2つほど適地がありましたが、僕たち5人のパーティーには少し狭いのでさらに探索し、イシクラ沢出合あたりの本流の左岸に幕営することにしました。
 この幕営地がなかなかの一等地でリビングと寝室の2ルームで、ソファーや河原の岩石によるマッサージ機能付き。更にはミストシャワーまで浴びられるのです。
 早々に設営を済ませてお待ちかねの宴会。途中少し雨に降られながらも焚火をして楽しい夜を過ごすことが出来ました。ビーフシチューが疲れた体に染みわたりとても美味しかったです。

【8月30日】 記録:菊池
三ノ滝2本目登攀  ここからはこの山行にてダテのあだ名を拝命した菊池が続けます。
 夜中に雨に降られながらも快眠して5:30起床。みなさん慣れているのか昨晩の焚火の残り火で早々と朝食を食べ出発。
 1時間ほどで開けた二股の谷間の左側に今回の核心部三ノ滝があらわれてきました。
 三ノ滝は30m2段にもなる大滝で通常は高巻きするのですが小芝(泰)さんの判断でロープを出し登ることに。結果的にこの滝を登攀3ピッチ+懸垂下降1ピッチで抜けましたが、登攀初心者で初日に一ノ滝をユマールを借りても滑りながら登った自分としては緊張で胃が痛くなりそうでした。1段目の滝は水流の右側を約15m直登、上部がスラブ状になっていて安定できる箇所までヒヤヒヤ。
 そしてここからが本当の核心部2本目の15m登攀+10mトラバース。2段目の滝の向かい側、草つきの斜面を宮本さんがリードで登るも途中せり出した岩でルート確保に苦労していました。この時小芝(泰)さんが小芝(麻)さんに「落ちるかもしれないからそのつもりでビレイして」と言っていて自分の緊張はさらにMAXに。
大パノラマ  自分の番で登り始め、宮本さんが苦労していたせり出した岩の箇所に着くと・・・確かに手と足の置き場がない!!焦りながら周りを探すと岩の左下の陰に錆びた残置ハーケンが。これに足をかけ自分の全体重を託してなんとか岩を突破し草藪を左側へトラバース。このトラバースも1歩目が怖かったですがなんとか2本目の登攀終了。この難所を崩壊した靴でリードを行った宮本さんの技術に脱帽です!!
 3本目に三ノ滝上部の細い滝と藪をトラバース気味に登ると、本流の10mほど上に出るので懸垂下降。
 その後は本流を細かい滝と岩稜帯を越えて登っていくといつしか沢が消え、標高を上げながら後方が開けて大パノラマになっていきます。
 この後の詰めの登りも水流が消えてから2時間近く登るのと、途中スラブ状の岩場をいくつも越えるので意外ときつかったですが、開けた新潟側の景色を(ガスったり晴れたりしていましたが)見ながら登り詰め、最後に膝上ぐらいの笹薮とハイマツ地帯を越えると肩の小屋の直下に飛び出しました。
 ここまでくれば後はもう一般登山道。天神尾根を下りて15:40谷川岳ロープウェイ着、無事山行終了です。

肩の小屋での集合写真

【最後に】
 今回は初めての沢での泊まり、焚火、泳ぎ、ロープでの登攀とすべてが初めて尽くしの山行でしたが、自分の技術が足りず溺れそうになったり、滑落したり、最後は足を攣りそうになったりと同行していたメンバーの助けを借りて登り切った形になります。
 自分のレベル以上の沢であったために辛い部分もありましたがそれ以上に沢の美しさや泊まりの楽しさを体験させていただき、自分の拙い登山経験の中でも1・2を争う最高の山行になりました。
 山行へのお誘いと初心者の自分を終始サポートしてくれた小芝夫妻、登攀時の適切なアドバイスをしてくれた宮本さん、同期で年下なのに自分より冷静で助けてくれた寺井さん、本当にありがとうございました。

〈コースタイム〉
【8月29日】 吾策新道登山口(7:00) → 入渓点(7:15) → オキドウキョ沢(9:10) → 一ノ滝(12:05) → 二ノ滝(14:00) → 幕営地点着(15:15)
【8月30日】 幕営地点発(6:35) → 三ノ滝(7:30) → 谷川岳肩の小屋(14:00~14:10) → 谷川岳ロープーウェイ(15:40)

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