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沢登り・日原川倉沢谷塩地谷
高橋 史生

山行日 2020年7月18日
メンバー (L)千葉(朋)、野畑、木嶋、高橋(史)

 コロナ自粛明けの足慣らしにと個人山行に数人で沢に行った帰りの車の中、助手席から「どうしよう・・・」と声が聞こえる。「なにが?」と半強制的に聞かされた。初めて例会で沢リーダーをやるという千葉(朋)の声だ。会に入りたての新米の私に聞いたって分かる筈もなく不安を漏らしただけなのであろう。適当に答えた・・・。
 サブリーダーに野畑さんと沢初級者の木嶋さんを加え竜喰谷に行くことになったが、梅雨も明けないこの時期の一之瀬は渡渉も不安が多く最後までリーダーは心配していた。
 出発の当日、先週から降り続く雨のなかちょいちょい曇りだのが混じるハッキリしない天気で、取り敢えず現地に行って明朝判断しようと「道の駅たばやま」で仮眠をとることになった。0:30道の駅には先客がいた。リーダーの知り合いだったようだ。お互いに気を付けましょうなどと少し話をしてそれぞれのテントに戻る。本当に世間は狭い。グイッと各々好みの酒を煽ってさっさと寝てしまう。
 朝起きると目の前の丹波川は白く増水している。直ぐに転進先の日原川倉沢谷塩地谷に変更した。望んでいた通りだ・・・原稿を書く私にはベストである。
 この転進先の候補が上がった時に私は三峰の過去の山行で千葉リーダー沢デビューの場所だと知ってしまっていたから都合が良い。成長の瞬間を目撃しそれを岩つばめに書くのだ。
作業員リーダー  倉沢橋7:30路面崩壊の為、通行止めで中に車を止めることが出来ず少し離れたところに駐車した。リーダーのオレンジのカッパが通行止めの看板とかぶって作業員にしか見えない。
 林道を進むが所々落石している。もう少しで魚留橋というところでごっそり道が落ちていたが、脇が通れたので問題はなかった。橋の付け根もごっそり道がなくなっている。去年の台風の影響だろう、水の力は恐ろしい・・・。魚留ノ滝の水量は多いが水は白く笹にごり程度である。茶色くないところを見ると表土まで達する増水ではないのだろう。
 魚留橋8:40沢支度を整えて出発、魚止滝を過ぎて地蔵橋の手前から入渓。平水とは程遠いとのことだが、初めてこの沢に入った私としては丁度良い気がした。3~4m程度の滝が少しあり沢登り初級者だが岩登りの出来る木嶋さんはヨダレを垂らしているかのように見えるが、リーダーは無視・・・ちょっと目が怖い・・・緊張しているのが伝わってくる。
小滝を登りたい木嶋さん  9:00地蔵滝 15m右岸から高巻く泥の斜面がキツイ・・・あまり足場は良くないが1ピッチで降りられるところから懸垂で沢に戻る。ここで、泳ぐために来た私はリーダーの気持ちなど考えず積極的に沢に浸かり小滝を登り出す・・・そして木嶋さんが続く、ワイワイと話をしながら進んでいくと水に入るのを微妙な顔で見ていたリーダーとサブリーダー野畑さんもしかたなく沢と戯れ始めた。
 暫く進み左岸の涸れ沢沿いを上がり6m程度の滝を巻く。少し高く上がってしまい全員少し不安になるが千葉がリーダーシップを発揮しルートを切り開いていく姿は、ちょっとカッコいい。野畑さんは常に最後を歩きブツブツ言いながらもリーダーを後押ししていた。木嶋さんも、岩をやっているだけあってワシャワシャ登っていく。リーチも長いしパワーも有る。羨ましい・・・。
 泥付を降りて沢に戻るが、直ぐに右岸を巻く。残置ロープが張ってあるが、より安定していそうなルートをリーダーが登りそれにつづいた。沢に戻り休憩を挟みながら暫くいくと、左から岸壁を滴り落ち流れ込んでいる沢が現れた。小ガッコー沢だ。千葉の2016年の記録にもあったが本当に変な名前だ。この辺から調子に乗ってハシャギまくり、登れる小滝は積極的に登った。野畑さんは冷めた目で見ていたが、「修行だ!」等と言って順番に滝行をして写真を撮る。リーダーの緊張はこの辺で崩壊したように感じた。完全に私の功績だろう、感謝して貰おう。
 13:00源頭部に詰めあがる手前には幅広の5m程度の滝が数段連なっている。増水のおかげで程よく水がチャラチャラと流れてとても美しく、滑らずホールドだらけで快適に登れて楽しい。

ネジの飛んだリーダー小滝で遊ぶ源頭部 5~10mすだれ状の滝

 後は一気に詰めあがる!!と言いたいところだが、自粛でついた7キロのミートテックが落ちきった太腿の筋肉に堪えて全然登れない・・・これが核心だ・・・と思ったのは僕だけのようで皆スイスイ登る。先程まで五月蝿く下らない話をしていた私の口は貝のように固く閉ざされ漏れるのは豚のような息だけ・・・ブーブー愚痴を吐きながら登っていく。皆の足を引っ張りながら何とか14:00に登山道に出た。ここで沢装備を解く。下草の間を穏やかな道が続き、木漏れ日も差し込み絵本にでも出てきそうなメルヘンな雰囲気を演出していた。2~3回木で組まれた橋を越えると尾根に到着した。棒杭尾根の道は明瞭だが所々あやふやな所がある。注意してみれば特に問題はない。ここで、地図読みを楽しんでいたリーダーにGPSを見せて嫌な顔をされた。一気に降り1時間程度で林道に出た。記念すべき沢例会の初リーダーを勤めあげ、成長したであろう千葉の顔を見る。
 特に変化は感じない・・・。

〈コースタイム〉
倉沢橋(7:30) → 魚留橋(8:40) → 地蔵滝(9:00) → 幅広の5m滝(13:00) → 一杯水(14:00)


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