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岩登り・天狗山ダイレクト
石毛 恵

山行日 2020年11月8日
メンバー (L)石毛、古屋

 今年の夏は沢にも行かず、岩登りに集中していた。秋になり今シーズン最後のアルパインは以前から気になっていた「天狗山ダイレクトコース」にしようと思い例会に出してみた。このコースは2018年に開拓された新しいルートなのであまり記録がなく少々不安ではあったが、古屋さんが手を挙げてくれたおかげで安心して挑むことができた。
 前日の土曜日は天気予報によると午後から雨なのでお昼まで小川山で遊び、夜は荻さん率いる湯川組の宴会に少し参加して早めに就寝。
 翌日5:30起床。外に出ると天気は良さそうだ。準備をして天狗山へ向かう。天狗山は川上村のナナーズから見える岩山で、馬越峠の天狗山登山口駐車場までナナーズから車で15分位。駐車場に着くと1台車が停まっていたが天狗山には行かないということなので先行パーティーはいない様子。準備をして出発。
 登山道を20分ほど歩き、1,760m付近のトラロープを越えて南へ下る。踏み跡もピンクテープもしっかり付いているので分かりやすい。1,600mまで下るとケルンがあるので踏み跡に沿って右にトラバースすると取付きに到着。駐車場から約30分。ここで装備を整える。古屋さんから「先に行くでしょ?」と聞かれたが、記録を見ると偶数ピッチの方が楽しそう。ここはリーダーの特権で古屋さんに1ピッチ目のリードをお願いする。
 1ピッチ目は階段状で簡単そうに見えるが、苔がびっしり付いていて滑りそう。古屋さんはグングン登っていき「ロープ半分」のコールをかけてもどんどん進んでいく。ロープ残り5mでストップ・・・あれ?35mのピッチだったはず・・・これはもしかして・・・などと考えながら1ピッチ目を登り始める。
 苔、苔の岩はやはり滑りやすく、登り始めということもあり慎重に登っていく。おそらく1ピッチ目の終了点であろう箇所を通り過ぎ、さらに進んで、おそらく2ピッチ目の核心であろう小ハングを越えると、その上部の立ち木でビレイしている古屋さんに一言「1、2ピッチ繋げましたね・・・」と若干の恨めしさを込めて言ってみた。「ビレイ箇所が分からなかったから」と言っていたが本当なのか?確信犯では・・・??
 疑心を抱いて3ピッチ目をリード。ショックの為かあまり3ピッチ目の記憶がない。
 4ピッチ目はクラックのあるピッチ。ここリードしたかったなーと思いながら準備をしていたら古屋さんがリードを譲ってくれた。全身から出ている落胆ムードを感じ取ってくれたのだろうか、嬉々として登り始める。
 スタートは立ち木によじ登り、クラックにカムを決める。若干ハングした岩の右側をクラック沿いに登っていくルート。クラックにカムで支点をとって行くが、基本はフェイス登りなので、クラックが登れなくても大丈夫だと思うが、ハンドジャムが決められるとより楽に登れると思う。カムはC0.5~2を使用。クラックを抜けると景色が一気に開ける。紅葉のピークは過ぎていたが景色が綺麗で気持ちが良い。開放感のあるリッジを登り、立木でビレイ。
視界が開けて景色最高  5ピッチ目は10分程の尾根歩きになるので、一度ロープをしまいアプローチシューズに履き替える。
 6ピッチ目は「門」と呼ばれるチムニーを登る。トポには右壁から登るルートとチムニーをレイバックで登るルートが紹介されているが、チムニーを登るのは無理そうなので、古屋さんは右壁からのルートで登り始める(左壁に一ヶ所ハーケンあり)。ビレイをしていると下の方から声が聞こえてきた。後続パーティーが2パーティーくらい来ているようだ。そうこうしているとロープはどんどん伸びていく、どうやらまた繋げているらしい。ロープいっぱいになったので準備をしてコールをかける。古屋さんからのコールは全く聞こえないので、笛を吹いてから登り始める。
6ピッチ目の通称「門」  7ピッチ目の終了点でビレイをしている古屋さんに「また繋げましたね・・・」と一応言ってみると、「俺、アルパインはスピード重視するんだよね」と正論を言われたが、これは確信犯確定でしょう。
 8ピッチ目はまた尾根歩きになるので、再びロープをしまいアプローチシューズに履き替え三段岩壁の基部へ向かう。
 今年の夏に三段岩壁にボルトが打たれ、それまで巻いていた岩壁が直登可能になった。名前の通り天狗山山頂へダイレクトに行けるようになり、「天狗山ダイレクト・ダイレクトコース」になったのだ。
 9ピッチ目はⅤ-級とあるが、見た感じそこまで難しさは感じないけど・・・とりあえず取付いてみるとその理由が分かった。とにかく岩が脆い。ホールドをつかむと面で剥がれそうになる。足を一歩出すとカタカタと不安な音がする。何度も確かめながらの慎重な登りが要求される。9ピッチ目を登り切りテラスの立ち木でビレイ。足元はこぶし大の落石だらけなので、上からの落石は勿論、ビレイの最中に下に石を落さないよう注意が必要。
 10ピッチ目もボルトが1本打ってあり、左端から登り始めて右上していく。出だしのホールドがカタカタ動いて見ていて怖い。古屋さんもいつも以上に慎重に登っていく。途中のクラックにC3が決まる。
 11ピッチ目はトポには「短いスラブを左上」とあるが、右前方にはスラブというよりただの階段状の岩しかない。だからと言って左に見える垂壁はボトルも打ってないし登れそうにない。仕方がないので階段状の岩をフリーで登る。12ピッチ目も山頂までの歩きになるのでここで終了。せっかくなら左の垂壁にもボトルを打って「天狗山ダイレクト・ダイレクト・ダイレクト」になれば楽しいのに、などと話しながらロープをしまって天狗山山頂へ。
 山頂には12時に着いたので、お昼を食べながら少し休憩。意外と言っては失礼かもしれないが、山頂には一般登山客が多く天狗山の人気が伺えた。

天狗山山頂

 帰りは一般登山道を30分ほど歩いて駐車場へ到着。
 今回、11月でも充分綺麗な景色を楽しむことができたが、1か月早ければ紅葉最盛期で更に綺麗だと思う。夏の暑さは分からないが、一面に広がる川上村のレタス畑を見ながらのクライミングも楽しそう。きっとこれからどんどん人気の出てくるコースだと思う。
 ロープを組んでくれた古屋さんに感謝です。「天狗山ダイレクト・ダイレクト・ダイレクトコース」になった時は是非また登りましょう。ありがとうございました。

〈コースタイム〉
馬越峠天狗山登山口駐車場(7:00) → 取付き(7:35) → 三段岸壁基部(10:50) → 天狗山山頂(12:00~12:30) → 駐車場(13:00)


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