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雪山登山・大佐飛山r
田中 雅臣

山行日 2021年3月20日~21日
メンバー (L)小芝(麻)、津田、川口、木村、田中(雅)

 2021年1月~3月の例会山行一覧に初めて聞く山があった。「大佐飛山」。調べてみると、大佐飛山へと続く稜線が絶景で「天空の回廊」と呼ばれているらしい。調べて出てきた写真は樹林帯の中に一本、青空の下に雪の稜線がまっすぐ伸びていた。これはぜひとも行ってみたいと思い、年末に小芝(麻)リーダーへ参加表明をさせていただいた。年明け後は緊急事態宣言もあってなかなか山行に参加できていなかったが、ルームで峯川さんからも大佐飛山は綺麗だと教えられ、この回廊を歩いてみたいという思いがますます強くなった。しかし、肝心の天気予報は雲行きが怪しい。土曜日の天気は持ちそうだが日曜日は荒れ模様。どうやら青空の回廊は歩けそうにない状況だが、山行は決行することとなった。
 前夜の金曜日に道の駅那須高原友愛の森に前泊し、5時半起床。6時半ごろ登山口へ向けて車を走らせた。天気はどんより曇り空。雲が低く、ほとんどの山は中腹から雲に隠れていた。
 登山口に到着すると、ほとんどは地元の登山客だと思うが路肩に車が並んでおり、大佐飛山の人気ぶりが窺えた。狭い駐車スペースになんとか車2台を停められ、身支度を整えていよいよ出発。気温は高めでスタート時は上着はいらないくらい暖かかった。この黒滝山新登山口、登り始めがかなりの傾斜でおそらくこのルートで一番の急登だと思う。しかも足元はぬかるんで滑りやすく、雪山テント泊装備の重量で体のバランスも崩しやすい。下山時はすべって泥だらけになるんだろうなと思いながら、張ってあるトラロープを頼りに登ってゆく。
 三石山に到着すると雪が現れ、サル山への登りにさしかかる前にアイゼンを装着した。天気は相変わらずすっきりしないが、時折晴れ間が差し込み気持ちも晴れる。サル山を登りきると樹林帯の中に大きな雪庇が現れた。この時期はある程度雪が締まっており歩きやすいが、気温が高いこともあり慎重に通過する。
 その先の黒滝山までは身丈よりもはるかに大きい雪庇が連なっており、他の山ではなかなか見られない光景だった。

慎重に雪庇を通過する身丈以上の雪庇

晴れていたら絶景の天空回廊  順調に黒滝山に到着し、ここから地図上にはルートがない道に入る。地図とコンパスを出していると先行の登山客が下山してきた。日帰りですでに大佐飛山まで行ってきたらしい。健脚!やはりこの先のルートは明瞭ではなくロストしたとのこと。実際に歩いてみると途中で消えている紛らわしいトレースがいくつもあり、他の登山客も同様迷いやすいエリアのようである。ルートであろう尾根に乗りたいのだが、その入り口が分からず右往左往していたところ、川口さんが先行して尾根筋まで登って様子を見にいってくれた。どうやらはっきりとしたトレースがありピンクテープも確認できたとのこと。一同安心。ちなみに下山時もこのエリアでロストしてしまった。改めて雪山のトレースは当てにならないことを思い知った。
 昼過ぎに西村山を通過すると風が強くなり、雨も降り始めてきた。この日のうちに大佐飛山山頂まで行く予定なのでタイムスケジュール的にそろそろ幕場を探すことになった。大長山への尾根を登っていたところ、東側にそこだけ平坦になった場所を発見した。小芝リーダーが場所を確認し幕場即決。地面のならしも簡単そうで木の下で雨も凌げるいい場所だった。手際よくテントを張り、時間と天候の心配もあってすぐに山頂に向けて出発した。
 大長山を抜けると前方の樹木がなくなり景色が一変した。どうやら天空の回廊にたどり着いたようである。しかし、この天候では魔界への回廊??稜線の先は真っ白で何も見えず、ひたすらガスが広がっていた。

大佐飛山山頂にて  残念だが今回ばかりはこのコンディションでは仕方ない。とにかく山頂を目指し前へ進んだ。回廊を歩いてみるとやはり稜線は歩きやすい。左右に木々があるからなのかたまたまなのか、風もそこまで強くなく、晴れていたら展望もあってさぞ気持ちいい道なんだろうな~と想像しながら歩いた。そして登山口から7時間半、無事に大佐飛山山頂に到着した。天候が悪く、もしかすると登頂は厳しいのかなと思っていたので嬉しかった。山頂に到着してからは雨風が強くなり、そそくさと下山し幕場へ引き返した。
 テントに戻るとシェフ川口さんがさっそく調理を始めてくれた。本日は親子丼。自宅で十分に水分を吸わせた生米を持参してきてくれ、お湯で炊いたことで素早く炊きあがった。卵も割れないよう大事に持ってきてくれ、ごろっとした鶏肉は食べ応えがあり、お腹一杯の絶品親子丼だった。全員おなかが空いていたのでぺろりと平らげてしまった。また、クッキングシートを敷いた鍋で炊いたことで米の後片付けが楽で、知恵も満載な親子丼だった。ごちそうさまでした。その後は持参した酒を飲みながら山の談議に花を咲かせ、20時頃にはシュラフに入って就寝した。
 翌朝は3時半起床。天候は間違いなく荒れるので、とにかく早い下山をすることとなった。起床時はやはり雨。テントを素早く撤収して5時半に下山を開始した。稜線に出ると雨風はかなり強く、ずぶ濡れになりながら黙々と下山した。黒滝山の手前ではやはりトレースにだまされてルートを通り過ぎてしまったが、悪天候でも皆さん冷静に対処して本ルートへリカバリー。順調に歩を進めて9時過ぎに無事に下山することができた。さすがにこの天候では我々の車しか停まっていなかった。
 今回は生憎の天気ではあったが、天空の回廊の雰囲気や地図読みも必要とする歩きごたえのある山容など、大佐飛山の魅力を体感することができた。また、この天気でも楽しく山を歩けたのもリーダーはじめメンバーの皆さんのおかげだと思う。ありがとうございました。次回は是非青空の回廊を歩くべく、再びこの山を訪れたい思う。

〈コースタイム〉
【3月20日】 黒滝山新登山口(7:37) → 三石山(8:53~9:03) → サル山(9:51) → 黒滝山(11:26~11:36) → 西村山(12:17) → 大長山(14:00) → 大佐飛山(15:00~15:10) → 幕場(16:12)
【3月21日】 幕場(5:31) → 西村山(6:07) → 黒滝山(6:46~6:56) → 山藤山(7:23)~サル山(8:04) → 三石山(8:27~8:39) → 黒滝山新登山口(9:19)

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