山行日 2021年7月22日~25日
メンバー (L)荻原、小芝(泰)、永岡、津田
「光来出川」という沢登りのルートを知ったのは2003年の集中山行で奥秩父の大洞川井戸沢を遡行し甲武信ヶ岳まで縦走した時のことだった。メンバーは私と故越前屋さんの二人のみで3日間良く話しをした。ガイド山行を通して最終的に友人となった高桑氏との出会いの沢のようでその魅力について語ってくれた。それから早いもので18年の歳月が流れたが、昨年高桑さん執筆の『源流テンカラ』を読んでその会話を思い出し、今回の山行企画と相成ったのだ。
【7月22日】終日晴れ
前夜発で笠堀ダムへ。ダムからは既に廃道となっている湖岸道沿いに進むが、踏み跡拾いと藪漕ぎに終始することになり遅々として進まない。加えて梅雨明け後の酷暑も重なりメンバー全員が熱中症気味だ。頻繁に休憩を取ったこともあり、2時間程度と思っていた湖岸道歩きに5時間近くもかかってしまう。ようやく湖岸道歩きから解放され沢に降りて水を浴びると生き返った心地だ。ここからは川原歩きと流れの緩いプールのような泳ぎで快適そのもの。
大川出合に到着すると既に15時近かったので、ここから少し進んだ石小屋沢出合手前の右岸の広い川原を今宵の宿とする。整地はほとんど不要で広くて平らな幕場は夕方までは天国そのものだったが、暗くなってからのやぶ蚊の猛攻には参ってしまった。
【7月23日】終日晴れ
幕場からすぐに始まるゴルジュ帯は右岸にあると思われる踏み後は使わずに泳ぎやへつりで突破する。ゴルジュと言っても明るく開けており、陰湿さは微塵もない。花崗岩の白と釜や淵のエメラルドグリーン、そして空の青とのコントラストが美しい。ここが光来出川のまさにハイライトと言えるのだろう。因みにヤマケイ入門&ガイドの「沢登り」(童人トマの風編著)の表紙を飾る写真はこのあたりのものと思われる。
このあたりから走る魚影はハヤから岩魚に変わるが、毛鉤への反応は良くない。腕の問題かな?美しい白根丸淵を通過しロケーションの素晴らしい栃ノ木沢出合でソーメンタイム。東又沢出合からシシマキ沢はゆっくり釣り歩くがやっぱり反応はあまり良くない。しょうがないので食料調達最短作戦に切り替え、餌釣りで最低限のイワナを確保する。
シシマキ沢出合先の右岸に広くて平らな素敵な幕場があったので今日はここまで。今宵も居酒屋三峰の反省会はひとつも明日に繋がらない反省の弁?を繰り返すのみであった。
【7月24日】晴れ、夕方に豪雨あり
光来出川は3日間あれば十分なのだがせっかくの4連休を3日で終わらせるせっかちなメンバーは誰もいない。虫害も昨夜からほとんど無くなった(感じなくなっただけ?)ので、今日は真面目に歩けば2時間もかからない標高600m地点をゴールに定めてのんびり出発する。竿を出しながら行くが反応は相変わらず。岩魚うじゃうじゃ沢と思っていたが、どちらかというとオニヤンマうじゃうじゃ沢と言った感じだ。すぐに核心の100mゴルジュとなるが、ここの正面突破はなかなか大変とのことなので予定通り左岸から巻く。巻きは踏み跡もしっかり付いており簡単だ。標高630mの右岸の河原でソーメンタイム&昼寝となり、その後も少し進んでみるがあまり良いところは無さそうなので結局ここに戻って幕場とする。夕方になり焚火に火を付け横になって「さー乾杯!」という時に黒雲襲来。ポツポツ来たかと思うとそれから30分もしないうちに我々が横になっていたところは濁流の下になってしまった。濁流に飲まれる寸前にかろうじて荷物を纏めて左岸の高台に避難し事なきを得る。1時間もすると雨は止み増水が早かった分、水が引くのも早く元の場所に戻って焚火を再開、宴会へと突入する。いろいろあったが今宵も楽しい宴会で一日を締めることが出来た。
【7月25日】
今日は帰京日なので我々には珍しく暗いうちから起床し5時には出発する。最後の滝となる12mトイ状の滝は二俣となっておりトポ通り左の滝を登るが、改めて地形図を見るとこの沢を詰めてもすぐに尾根を乗り上げてしまいその後の藪漕ぎが大変そうだ。滝上の先で簡単に尾根を乗っ越して一本右の沢に入れるポイントがあったのでこちらの沢に乗り換え稜線近くまで沢通しで進むことにする。狙い通り実質の藪漕ぎは僅かで稜線に乗り上げる。稜線から雨量計小屋までは薄いが踏み跡もあり特に問題ない。小屋からは立派な道となるが一本岳からの下りと粟ヶ岳への登り返しは急こう配で疲れた初老チームの体には応える。ようやく着いた粟ヶ岳山頂で大休憩を取ってあとは暑さと闘いながら登山口まで下って本山行も終了となる。
初日の酷暑の中での湖岸道歩きを除けば特段苦労するところも無く、強烈な印象の残る沢では無かったが、やはり2日目と3日目に出会った大自然の造形美はここでしか見られない景色であり、沢屋であれば一度は自分の目で直接見ておきたい風景であろう。いつもの楽しいメンバーと一緒に見られたことも私にとっては贅沢な体験となった。
【7月22日】 | 笠堀ダム(8:00) → 幕場(15:00) |
【7月23日】 | 幕場(6:00) → 幕場(16:00) |
【7月24日】 | 幕場(7:00) → 幕場(11:00) |
【7月25日】 | 幕場(5:00) → 登山口(14:30) |