トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ366号目次

岩稜登攀・前穂高岳北尾根、北穂高岳東稜
梅田 尚子

山行日 2021年7月23日~25日
メンバー (L)梅田、高橋(史)

 冬に阿弥陀南稜に向かう車の中で、古屋さんから「夏に行ってみたら?」と勧められたのが前穂北尾根だった。超有名ルートなので、前々から行きたいと思っていた。その時点で自分たちに足りないことをピックアップして、それから練習を積み重ねた。その効果が出たかどうかはわからないが、全く難しいと感じることもなく、とても楽しい山行となった。

【7月23日】
 上高地を出発してダラダラ歩く。重い、暑い、遠いの三重苦。おまけにザックの背面長が合っておらずお尻に荷重がかかっていたようでお尻がとんでもなく痛い。本谷橋の岩影でお尻にロキソニンテープを貼って痛みをごまかしながらなんとか涸沢まで歩いた。
 涸沢のテン場についたちょうどそのとき、雨が降ってきた。かなりの本降りで急いでテントに潜りこむ。ビールが飲みたいので、小屋までビールを買いに行くジャンケンをするが、2人とも雨の中外に出たくなさすぎて真剣勝負であいこが続く。結局、小屋まで2人そろって移動することで落ち着いた。
 小屋のテラスでごはんを食べているときに、隣になった2人組と盛り上がる。我々は前穂北尾根-北穂東稜の順に登るが、彼らは逆の日程で北穂東稜-前穂北尾根の順に登るとのこと。明日の夜、それぞれ行ったルートの情報交換をしようと約束して、酒を酌み交わしベロベロになってテントに戻った。

【7月24日】

出発!快晴の5・6のコル

 4:45出発。5・6のコルまでのんびり上がる。
 コルで休憩していると3人パーティがやってきたので、先に行ってもらった。5峰は特に問題なくクリア。次に迷いやすくガレていると噂の4峰。慎重に登っていても少々の落石は防げない。気をつけないと、と思っていたら、ドゴーン!!!と、とてつもない音が涸沢カールに鳴り響いた。前の3人パーティがでかい石を落としたらしい。3人とは間隔を大きくあけていたので問題ないが、改めて気を引き締めながら登る。その後も上からドゴーン!ドゴーン!と落石の音が聞こえる。どうやら稜線よりも涸沢側に入ってしまっているようだ。私たちは事前調査通り、大きな岩の基部で奥又白側に行って、チョックストーンが出てきてから稜線に戻ったので、大ごとにならずに済んだ。
 3・4のコルに着くと、3人パーティの前にさらに別の3人パーティが取り付いていた。しばし休憩しながら、どっちが何ピッチ目を登るかという話し合い。リーダー特権で1番楽しそうな2ピッチ目を登りたいと主張して、強引に主張を通した。すると、よこちんがアプローチ的な1ピッチ目を直線的に登ってかなり延長してきた。ずるい。そして2ピッチ目。トンネルみたいなのが出てきたり色々変化があって楽しい~♪私も2ピッチ目を本来より長めに登った。3ピッチ目はよこちんが数m登って、そこから先は特に難しくなかったので、コンテで歩き、その後もロープは不要だと感じたので、結局そこでロープはしまった。
 3峰のピークはどこだろう?と思っていたら、2峰の下降ポイントがいきなりあらわれた。いつの間にか3峰を通過していたらしい。ここは懸垂でもいいけど、クライミングシューズを履いているし、ロープを出すのが面倒なのでクライムダウンすることに。慎重にクライムダウンを始めたが、左手に持っていた一見立派そうな石がぐらついて冷や汗。正直、今日イチ怖かった。
 少し歩いて前穂登頂!天気に恵まれていたこともあり、前穂北尾根はただただ楽しかった。休憩後、吊尾根をのんびり歩いて奥穂へ向かう。道中、ヘリが飛んでいるのが気になった。後で知ったが、奥穂南稜で滑落があったらしい。自分らも気をつけなければ。
 穂高岳山荘で休憩。食当のよこちんが先に降りてカレーの準備をしてくれると提案してくれた。足首がダメな私はその言葉に甘えて後からのんびりザイテングラードを降りたが、ガスバーナーを私が携帯していたため、カレーの準備は進んでいなかった。

山頂の時だけ曇っていました前穂北尾根全景

 涸沢でカレーを食べていると、昨日の2人組があらわれた。昨日に続き盛り上がる。2人組のうち、平出和也とEXILEを足して2で割った雰囲気の方(通称:平出さん)は、北穂高小屋で働いた経験があり、涸沢や穂高周辺に精通していた。知る人ぞ知る?北穂直下の2pのキジバハングルートというワイドクラックのルートを教えてもらった。平出さんたちと連絡先を交換して、都合よければ東京まで一緒に帰ろうということに。

【7月25日】
 3時に起きるが外は雨。どうするか悩んでいるとしばらくして雨は止んだ。東稜のコルまでとりあえず行ってみて考えようということになった。東稜のコルに登っている最中に岩がどんどん乾いてきたので、東稜は決行。この辺の岩は乾くのがとても早い。
 これがゴジラの頭か~鼻か~とか言いながら進む。高度感はあるが、東稜は距離も短いしとてもお手頃なルートだった。昨日教えてもらったキジバハングルートを観察し、北穂高小屋に到着。ビールを少し飲んで南稜で下山した。
 テントをたたんで涸沢を出発したのが11:15。最終バスが16:45なのでのんびりできる余裕はない。バスじゃなくてタクシーにしたい、という気持ちをグッと飲み込み、ボロボロの体に鞭打って歩く。横尾で携帯を見ると、平出ペアから連絡がきていた。色々あって、予定よりかなり遅れているとのこと。よし、これでタクシーにする正当な理由ができた!!安心してビールを飲んで横尾で大休止。その後も徳沢、明神と小屋ごとに休憩しながらダラダラ移動。上高地でビールを飲みながら平出ペアを待つ。小一時間すると平出ペアがあらわれた。平出ペアも色々あったようで、お互いのエピソードを話しつつ盛り上がりながら帰路についた。
 次回このエリアに行くときは、平出さんに教えてもらった、本谷橋から横尾本谷左俣を詰めて北穂池に向かい、直で東稜を登り、最後はキジバハングルートで北穂高小屋に降り立つ「北穂満喫ルート」に行ってみたい!

〈コースタイム〉
【7月23日】 上高地(8:00) → 涸沢(15:00)
【7月24日】 涸沢(4:45) → 前穂高岳(11:20~12:00) → 涸沢(17:00)
【7月25日】 涸沢(5:30) → 北穂高岳(8:30~9:00) → 涸沢(10:45~11:15) → 上高地(17:30)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ366号目次