山行日 2021年9月18日~19日
メンバー (L)梅田、萩原
上高地のすぐそばにある明神岳。前々から気になっており、調べてみると東稜、主稜の2つのクラシックルートがあることを知った。アプローチが楽チンという点にも惹かれて、東稜を登って主稜で下山する周回ルートにチャレンジしてきた。
【9月18日】
上高地に着いたが雨が本降りだった。雨宿りも兼ねてバスターミナルそばの食堂でビールを飲みながら待機。2杯飲んだところで雨が止んだのでいそいそと移動する。明日、日帰りで周回予定だが、下山時刻が遅くなりチェックインできずに宿泊難民となる可能性も高い。そこで、小梨平で予め今日明日の2日分のチェックインをし、テントを設営、荷物をテントにデポする計画とした。とはいえ、偵察もしたいし、少しでも先に進んでおきたいので、1日目は明神館で小屋泊を選択。つまり、1日目は敢えて明神館と小梨平のダブルブッキングをして、片方には泊まらないという、金に物を言わせた贅沢な計画だ。
明神館に荷物を置き、明日のアプローチを偵察。20分ほど進んで、道が比較的はっきりしていることがわかったので、偵察は早めに切り上げて明神館へ戻った。
明神館はお風呂もあるしご飯も豪華。明日に向けて英気を養い、早めに床についた。
【9月19日】
明神館を4時に出発。前日偵察した道をヘッデンで順調に進んでいく。ガレ場を登っている途中で右側の支沢に入る箇所には岩にデカデカと丸印があるが、暗い時間は見逃さないように注意が必要だ。草は生えているものの踏み跡は明瞭で、辿っていると別のガレ場につく。そこをひたすら登っている途中で朝日が登ってきたので、休憩する。ここはだだっ広いガレ場なので一旦道がよく分からなくなったが、右奥に見えているひょうたん池のあるコルを目指して適当に右にトラバースしていくと、再び踏み跡に合流した。そこからひょうたん池を目指して明神主稜の基部に沿って再び登り始める。アザミのチクチク攻撃に耐えながら、少し上がったところにひょうたん池があった。形はまさにひょうたんで、飲んだらお腹を壊しそうな感じでにごっていた。池の一段上の箇所には4、5テンが張れる整地された場所があった。
ひょうたん池から先はハイ松の道がはじまる。薮漕ぎというほどの濃さではないが、かなりだるい。そうこうしている間に第一階段に到着。見た感じ行けそうだったので、ロープは出さずに突破。しかし、草付きだし、岩は脆いしで、出だしが見た目よりもちょっといやらしかった。
ここからハイ松やなんやが生い茂ったルートを進むと急に視界が開けてラクダのコルに到着。2、3テン2張分のスペースがきれいに整地されていた。目の前の主峰には3人組のパーティが取り付いていたのでここでしばし待ち。核心と言われているバットレス基部までは難しくなさそうだったのでフリーで行く。核心のバットレスも、傾斜が緩くかなり寝ている。ここはハギーが譲ってくれたので私がリード。下部はハーケンが連打されていて、ビビリの私に大きな安心感を与えてくれた。下部はハーケンを使い、かつ上部で1番か2番のカムを使い、ロープは25m以上出した。核心と言われているが、空身でクライミングシューズだったこともあり、難しくはない。これがアイゼンに全装だったらグンと難しくなりそうだ。そこから先は左側を巻いて確保せずに突破して、明神岳頂上に到着。
頂上には標識などは何にもない。それでも雲一つない快晴。そして周辺に広がる穂高の山並みと明神主稜。一般道がない明神頂上から見る景色は格別だ。
1,2のコルへの下りはガレガレでかなり悪い。めちゃめちゃ気を遣いながら時間をかけてなんとか降りた。そして2峰の登り。アプローチシューズに履きかえていたハギーは、クライミングシューズを履いている私を見て目で訴えてくる。はい、私行きまーす。ということで、1p目の数mだけ行った。流れが悪くなりそうで、かつ、上から懸垂で降りてくるパーティがいたので、短く切った。そこからまた数m進んだところが足場が良さそうなので、ここはハギーに行ってもらい、その先は階段状になっていたので確保せずに登った。
2峰から先は岩稜歩きなのでアプローチシューズに履きかえ、ヘルメット以外のクライミング装備をザックにしまう。3峰は巻道があったので積極的に巻いて、4峰を通過して目的の5峰。噂の古びたピッケルが頂上の岩と岩の隙間にドーンと刺さっていた。もちろんピッケルを手にパシャリ。
この先には5峰台地が見える。台地は広々としていて、テントが張られていた。5峰から台地までのガレ場の下りだが、左に行き過ぎてしまい、やたら厳しいところを降りる羽目になってしまった。ほんとすみません。
台地からは南西尾根で下る。樹林帯に入るため、ヘルメットをしまい歩き出す。フィックスロープが何回も出てくる劇下りの連続だ。
長いしだるいわ~と、ぼーっと降りていたその時、掴んでいた木と足元が突然揺れた。地震だ。すると、数秒後、右手にある穂高周辺の自分たちから見える全てのルンゼで岩雪崩。轟音が鳴り響き砂煙が舞った。それはまるでハリウッド映画のような現実感のない光景だった。これはやばい。。。しまっていたヘルメットを取り出しかぶる。幸い尾根なので落石が落ちてくることはなかったものの、パラパラとちりのようなものが降ってくる。
しばらくするとあたりが暗くなってきたので、ヘッデンをつけて歩き出す。当初は最悪ビバークもありだと思っていたが、暗闇の中の度重なる余震と落石により、今日中に上高地へ下山しようという思いが強くなった。そして、この頃からハギーは私に対して何故か敬語を使うようになった。動揺すると敬語になるタイプ?だということが発覚した。
暗いのと、道がはっきりしないのとで、何度か踏み跡を逸脱しつつも、なんとか岳沢登山道に合流。ここまでくれば安全地帯だと心からホッとする。一般登山道のありがたみを噛みしめつつ無事下山した。
それにしても、先週はスズメバチに刺され、今週は地震。お払いにでも行った方がいいのかな。。。
色々あったものの、明神岳は、薮あり、ガレあり、草付きありのワイルドで色々な要素がギュッと詰まったとても面白いルートだった。残雪期だとクライミング部分は難しくなる一方、薮とガレの上の雪が覆い下山も奥明神沢を使えるため、楽になる部分もありそうだ。余震がおさまった残雪期にまたチャレンジしたい。
【9月19日】 | 明神館(4:00) → ひょうたん池(7:10~7:30) → ラクダのコル(10:00~10:40) → 明神岳(11:50~12:20) → 5峰(15:00~15:30) → 上高地(20:00) |