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岩登り・剱岳源次郎尾根
小芝 麻紀子

山行日 2021年8月20日~22日
メンバー (L)小芝(麻)、鈴木(一)、瓜田、木村

剱澤小屋から源次郎尾根を望む 【8月20日】曇り時々雨
 室堂から雷鳥坂を登る。昔この場所に来た時には何匹も雷鳥をみたものだが、この日は一羽も見ない。メンバーの一人が着ていた雷鳥のTシャツをみて我慢することにする。雷鳥坂を登り切り、剱御前小屋に着くや否や突然の雨。小屋の軒先で雨宿りができ、ずぶ濡れは免れる。10分ほどで止んだので、小屋を出る。更に30分ほど歩き剱沢キャンプ場へ。テントを張り終わるとまたもや雨。今日はギリギリのところで濡れずに済んでいる。このラッキーな天候はこの山行中続いた。この後、雪渓の様子を下見に行きたかったが、なかなかの雨のため断念。明日源次郎尾根を歩くという他のパーティーから山岳警備隊が言っていたという情報をもらう。武蔵谷出合いで雪渓に入った方がいいらしい。地形図で場所確認し、雨の中早めの宴会を始める。夕方になると雨が一旦止み、夕焼けに染まる源次郎尾根が綺麗に見えた。明日はあそこを歩くのかと思うとワクワクする。明日の朝は早いので飲みもそこそこに就寝。

2番目の難所にトライ~ 【8月21日】曇り時々雨
 いよいよ源次郎尾根経由での剱岳アタック。3時出発。まだ外は真っ暗だ。昨晩から降り続いた雨は止んだ。天気予報をネットで確認すると昼前から雨がぱらつきそうな予報。午前中のうちにできるだけ頑張って歩こうと決め出発。
 剱澤小屋から剱沢への登山道を歩き、昨日入手した情報を元に武蔵谷出合いの手前から雪渓に入る。雪渓はしっかりしていて、傾斜も緩やかなので軽アイゼンで充分だ。しばらく歩いていくと尾根取りつきの目印である大岩が暗闇の中にぼんやりと見える。コンパスをあてて取り付きと思われる周辺を捜索。ヘッデンをあちらこちちと照らし何とか源次郎尾根へと続く草付斜面にある踏み跡を見つける。
 源次郎尾根に入ると昨晩の雨で岩はだいぶ濡れている。歩き始めると早くも1つめの難所が現れる。岩を乗り越えようと足をかける岩が濡れていて厭らしい。下部もえぐれているので足の置き場に困る。ハーケンにスリングを結び、それを足掛かりに何とか乗り越える。
 その後は木の間を潜ったり越えたり、障害物競走さながらの登山。そして2つめの難所へ。7-8mくらいの岩壁で手があまりよくない。ハーケンが2つほどあるので、ハーケンにヌンチャクをかけ、躊躇なく(笑)それを掴んで上がる。

フリクションがよい岩場を登る  暫く進むと視界も段々開けてくる。このあたりからは岩は乾いてきていて、フリクションもよく効く。左手には平蔵谷の雪渓、右手には長次郎谷の雪渓とその先には八ツ峰。なんて素晴らしい景色の中を歩いているのだろうと、しみじみと感動。人気ルートというのは納得できる。

岩稜帯を登る登る登る!  途中ルートが少し分かりにくいところがあり、ちょこちょこ戻ってはいくつかのルートを確認しながら進む。トポには凹角状を通ると記載があったが、そこは通過しなかった。後から思うと凹角状の地形はあったものの、昨晩の雨の影響で水が流れていてかなり登りづらい状態になっていた。少し回り込むルートをとったが、その日のルートのコンディッションを鑑みると良いルート取りができたのではないかと思う。

剱岳登頂、イエ~イ!  Ⅰ峰の上部岩壁を横目に見ながら、他のアルパインルートがどこかなとチェック。そんな事をしているうちに、気が付けばⅠ峰に辿り着いた。いい眺めだと言いたかったのに、残念ながらガスがかかり視界が悪い。Ⅰ峰の後はコルまで急下降し、岩とハイ松の境目をうまく登っていくとⅡ峰に呆気なくつく。Ⅱ峰で30mの懸垂下降。下降した後ロープの流れをチェックする為少しロープを引いてみると上手く引けない。どうもロープがスタック気味。ロープのかける位置を調整してもらう。さぁ、いざ次の人が下降、、、と思ったら、瓜田さんのビレイデバイスが宙を舞い谷底へ消えていく。あららぁ。と言うことで、先に降りた私のデバイスを引き上げてもらってそれで無事下降。ここで雨が降り始め雨具を着る。この先は特に問題となる場所もないので、ここまで雨が降らずに天候がもってくれて、この日もラッキーな天候だ。
 この後はひたすら剱岳山頂を目指す。尾根の真上は歩けなそうなので、西側斜面を下がりすぎないように歩いていく。なかなか辿り着かないなぁと、疲労感を感じながら歩いていくと突然空に晴れ間が出た。と同時に、剱岳の山頂が霧の中から現れ、山頂にいる多くの人々が見えた。ついに剱岳に登頂だ!

出会った他メンバーと一緒に記念写真♪  一息ついた後、一般縦走路から下山。途中源次郎尾根がはっきりと見える。剱岳から急斜面の源次郎尾根をみて、あんな急斜面をよく歩いてきたなとしみじみと感じる。
 剱小屋に到着やいなやビールで乾杯!500缶を飲み終えテントを戻ると、別パーティーで来ていた智世さんに会う。知世さんにお疲れ様と言ってもらえて、ほっとした気分になった。

【8月22日】曇り
 6時、ヘッデンが不要になったくらいの時間に歩き始める。今日は風もあり、雨上がりで霧も発生している。歩くには今一つの天候だが、雷鳥に会えそうな雰囲気。期待をしながら一昨日と同じルートを戻るが雷鳥の姿は見られなかったが、代わりにちょこちょこと歩き回るおこじょに遭遇。飛び跳ねたり、岩の中隠れたり顔を覗かせたりして、こちらに近づいてくる姿がめちゃかわいい~。疲労感を感じつつも気が付けば室堂に到着。

 頼りないリーダーながらも、いいチームワークで山行が終えられました。当山行に参加してくれた方々、ありがとうございました!

〈コースタイム〉
【8月20日】 室堂(9:30) → 剱沢キャンプ場(13:00)
【8月21日】 剱沢キャンプ場(3:00) → 源次郎尾根取付き(4:15) → 最初の難所(4:30) → 2つ目の難所(5:10) → Ⅰ峰(7:00) → Ⅱ峰懸垂地点(8:00) → 剱岳山頂(9:30) → 前剱山頂(11:15) → 剱澤小屋(13:00~13:40) → 剱沢キャンプ場(14:00)
【8月22日】 剱沢キャンプ場(6:00) → 室堂(9:00)

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