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雪山登山・茂倉岳~谷川岳
鈴木 一彦

山行日 2021年12月11日~12日
メンバー (L)小芝(麻)、鈴木(一)、佐藤(功)、田中(雅)、高橋(祐)、梅田、菊池

 これも何かの縁なのか、思えば昨年も雪山シーズン初めは茂倉岳だった。もともとは西黒尾根からの谷川岳という計画だったが、リーダーからルート変更の連絡。昨年は避難小屋直前で敗退していたので、「茂倉ぜひ行きます」と勇んで返信した。でも待てよ。たしかもともと茂倉岳を目指す企画があったはず。茂倉岳避難小屋には夏に一度行ってるけど、何人泊まれるかな?そもそも前泊の土樽駅もそんなにキャパはないはず。これは寝場所の争奪戦になりそうだ、ということで、リーダーに早出を提案して、了承されました。
 前夜21:30に都内発。いつもより気持ちアクセルを踏み込んで湯沢ICを目指す。国道沿いのコンビニで全員集合。若干慌て気味に朝食などを買い込んで土樽駅を目指したが、着いてみると駅はもぬけの殻だ。拍子抜けして寝支度を始める。「他はいつ来るのかな?」なんて言いながら晩酌に入ったが、待てど暮らせど誰も来ない。そうこうしているうちに「さあ寝ますか」、ということで翌日に備えて早めの就寝となった。
 翌朝、どやどや他のパーティーが集まってきた。どうやら前泊でひと悶着あったよう。次は小屋での寝床確保レースだ。リーダーから「絶対、一番乗りしようね」の力強い言葉をもらって、茂倉新道の入り口に足並みを揃えて向かった。
 何度か来ている山なので、道の様子は分かっている。入り口から矢場ノ頭までは急登と木登り。問題は雪がどこから出てくるかだが、まだ本格的な降雪がなかったようで、1,000mぐらいまではちらほら白いものが見えるかな、という程度の歩きになった。最初の目標である矢場ノ頭が見えてくる頃になると雪が消えることがなくなった。ようやく本格的な雪山歩きの始まりだ。「今年も冬が始まるねぇ」などと感慨にふけりながら歩く。
本格的な雪山歩きスタート  矢場ノ頭で中休止をとって、一度、鞍部に降りた。そう、昨年テントを張ったところだ。今年はまだまだ行けそう、と思ったら、急に積雪が深まりラッセルが始まった。この時は他の会の方も加わって隊列はかなりの大人数になっていたが、我々が先頭の番になると、ルートファインドがうまく行かず四苦八苦。夏道歩きとは全く違う。他の方々にはずいぶん待っていただいてしまった。途中で先頭を譲って、避難小屋への最後の登りに取りかかる。森林限界を越えると急に尾根が広くなり、具合悪く風と雪が強くなってきた。僅か10m離れただけで意思の疎通が困難になる。先頭を歩いていた自分が小屋の影を視認したことを伝えようと叫んだり、手を振ってみたりしたが、お互いに何を言ってるのか分からない。それでもみんなが集合できて、目標の小屋一番乗りを果たした。さっそく小屋奥の良さそうな場所を確保して領地を確保。次はトイレを掘り出して、宴会の準備をしていると、他のパーティーも続々と小屋に到着し、瞬く間に大きなザックと人で空間が埋め尽くされていく。こうなると、もう手が付けられない。乾杯の声も早々に、3パーティーが入り乱れての宴会がスタートだ。詳細は割愛するが、何より印象に残っているは、後から到着した他の会の3人組だ。9割を三峰が占拠している小屋で一晩を過ごしたのだから、その胸中はいかにといったところ。幸い、心広い方々で、ちょっとの苦笑をいただいただけで済んだ・・・のだろうか。

谷川岳の向こうに朝日が広い雪原を行く

 翌朝は6時出発。小屋泊なので支度も順調だ。茂倉岳山頂には30分ほどで到達した。少し雲が残っていたが、空はどんどん青の割合が増えている。彼方に見える谷川岳越しに朝日が昇ると、谷川連峰がモルゲンロートに彩られる。息を呑むような光景だ。
 茂倉岳から先はノートレース。凪の海のような雪原を自分たちだけの足跡を刻みながら進む、得も言われぬ時間がやってきた。冬の谷川で快晴無風。なんてツイてるんだろう。一ノ倉岳を越えて、オキの耳、トマの耳と歩みを進める。振り返ると、別パーティーの仲間たちも続々と進軍してくる。一つの山域にこれだけの戦力を集中できる三峰の活発さに感心してしまった。
 下りの天神尾根はロープウェイからの登り渋滞につかまってしまったが、それでも予定よりかなり早い時間に下山完了。ドライブインで昼食をとりながら、大成功の山行を振り返った。リーダーもとても楽しそうで、これから始まる本格的な雪の季節に向けて最高のスタートとなる2日間になった。

〈コースタイム〉
【12月11日】 茂倉岳登山口(6:00) → 矢場ノ頭(10:00) → 避難小屋(14:00)
【12月12日】 避難小屋(6:00) → 茂倉岳(7:00) → トマの耳(13:50) → ロープウェイ天神平

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