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雪稜登攀・赤岳東稜
高橋 俊介

山行日 2022年2月5日~6日
メンバー (L)高橋(俊)、高橋(史)、梅田

 昨年も同ルートでの例会を出したものの、コロナ禍の緊急事態宣言発令で中止になってしまった。八ヶ岳東面の雪稜ルートの中でも東稜は行ったことなく、例会山行で出しても難度的に行けるかなと思い、再チャレンジとして企画した。

【2月5日】
 8:30から清里スキー場のリフト運行開始とのことで、それに合わせて準備+装備分けを行い、始発のリフトに乗る。1,900mリフトトップから真教寺尾根沿いに登っていく。梅ちゃんから、東稜は最近人気ルートとなっており、確実にトレースあると聞いてきたと話していたが、先週のものと思われるトレースがうっすらとついているくらい。トレースを外すと、ところによっては膝上まで潜ってしまう。やはり、八ヶ岳東面は西面と異なり営業小屋が皆無なので、入山者数が圧倒的に少ないのに変わりはないと思う。
よこちんの隠し酒、見つかる  スタートして30分くらいすると、よこちんのペースがどうも上がらない。腰が痛い。。。と悲痛な顔を浮かべていたので、荷分けをし、梅ちゃんが持っていた痛み止めを服用する。再び歩き始めるも、やはり、厳しそうなので一本取ることにする。これは敗退かな。と頭の片隅にちらつき始めたところ、よこちんがザックを下ろしてガサガサやっている。すると、ザックの背面パット部分からウイスキーのボトルが出てきた。えっ、なんで???これが背中に当たっていたのかー!と原因判明。復活できて一安心だが、なんでそんなところに酒入れるの?と周りも本人もあきれ顔。いずれにしても、調子ももとに戻り順調に高度を稼ぐ。
 一般的には2,300mの扇山付近にテント泊する記録が多いが、これから天気が下りに向かうため、明日のことを考えてできるだけ高度を稼いでおきたい。トポだと2,500m付近は4、5テンを1、2張くらいしか張るスペースはないとのことだが、先行者もいないことから、2,500m付近まで足を延ばす。途中1~2m先にカモシカがルートをふさぐように座り込んでおり、こちらを不思議そうな顔して見つめている。全然逃げようとしないので、邪魔してごめんね。と声掛けして、ようやくめんどくさそうに薮に向かって動いてくれた。そこからひとのぼりで2,500m台地に到着。確かに1、2張くらいしか張れないスペース。これ以上上がるとすぐに森林限界となるため、時間は早かったが幕場とした。よこちんの猪肉/梅ちゃんのサラミ/小生のもつ鍋と申し合わせたような肉祭りの宴となった。

【2月6日】
 4:00起床、6:20出発。強い寒波と天気予報でやっていたとおり、一晩中降り続いていたようで、テントから顔を出すと一気に50~60cmくらい積雪量が増えた様相。加えて寒気も入っているようで、寒さで明け方目が覚めてしまった。おそらくマイナス20℃近くまで下がったと感じる。朝食を早々に済ませ、みんなガタガタと震えながらハーネスをつける。
準備をしていると下から単独パーティーが上がってきた。聞くと同じ東稜を目指しているとのことであったが、我々同様これだけ積雪量があると、とりあえず近くまで行って様子見してから判断するとのこと。単独パーティーから遅れて出発するも、ここからはノートレースなので、すぐに追いつく。2,550mのこのあたりが、東稜に取りつく大門沢トラバースになるのだが、ここで東稜に向かうかこのまま真教寺尾根を進むかパーティー内で相談。
 大門沢トラバースの際での雪崩、このラッセル状況からすると、東稜に取りついたとしても抜けられない感じがしたので、真教寺尾根に転進することにした。単独者はとりあえず東稜取りつきまで行ってみるとのこと。
 真教寺尾根をそのまま上がるが、先月に出した例会の金城山と同じく、ゴリゴリのラッセル状態で全くペースが上がらない。しかも、八ヶ岳特有のパウダー雪質でなんど踏んでも踏み固まらない。ただ、昨日のうちに2,500mまで上がっていたので、標高差は約300m程度。天気は変わらす降雪が続いていたが、時間もあるし、風がないのもあり、交代交代で延々とラッセルを続ける。先月の金城山でのラッセルで二人ともラッセルに慣れたこととアタック装備のみであったこともあり、なんとなく一体感みたいな呼吸が出始めた気がする。上部は鎖場が続く岩稜帯のようだが、ほとんど埋まっており、たまにアックスを効かせながら登っていく。赤岳頂上小屋が右手に見え始めたので、稜線までは頑張ろうと話し合い、3時間ほどのラッセルでなんとか稜線に到着。一般ルートであったものの、これはこれで楽しかった。めちゃくちゃ寒いので写真を撮ってすぐに下山開始。鎖場といわれるところも、ダブルアックス効かせて下ればロープなしでも特に問題なかった。テン場には稜線からわずか30分で到着。苦労して登っても、こんなもんだよね。テントを回収して、すぐに下山開始。途中、東稜に向かった単独者がテント回収しており話を聞いてみたら、取り付きまでは行ったものの、ラッセルがきつく、これでは抜けられないと判断、引き返してきたとのこと。バラクラバをしていたので分からなかったが、よこちん、梅ちゃん、の知り合いとのことだった。

真教寺尾根トップ

 当初は下りだからと思って帰りのリフトは想定していなかったが、なんだかんだで1,000m以上下ってきたのもあって、帰りもリフトを使い、楽をさせてもらっちゃいました。
 次回は八ヶ岳ブルーの紺碧の空の中を登攀してみたいですね。

〈コースタイム〉
【2月5日】 清里スキー場トップ(8:40) → 2,500m C1(12:10)
【2月6日】 C1(6:20) → 稜線(9:10) → C1(10:00~11:00) → 清里スキー場(13:20)

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