トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ369号目次

沢登り・広谷川御神楽沢~奥壁本谷ルンゼ
荻原 健一

山行日 2022年10月1日~2日
メンバー (L)高橋(史)、荻原

 沢屋にとって御神楽沢といえば有名どころが二つあり、どちらも日本を代表する名渓だ。ひとつは南会津の会津駒ヶ岳に突き上げる只見川の袖沢御神楽沢、そしてもうひとつは「下越の谷川岳」と言われる奥壁の大スラブ帯を有する広谷川御神楽沢だ。前者は集中山行で企画したことがあるが、後者はいつか行きたいと思いつつ、いつものように月日だけが過ぎていくルートのひとつであった。年も年だし、そろそろお蔵入りと思っていたところ、最近急速に力を付けつつある横ちんから声を掛けて貰いチャレンジすることと相成った。

【10月1日】
 今日は奥壁基部の要までだが、幕場到着時間がそこそこ遅い記録が散見されるので、夜明け前の5:30に御神楽岳登山口の一つとなっている蝉ヶ平から出発する。1時間ほどで湯沢出合でここから登山道と分かれて入渓する。平凡な河原や簡単なミニゴルジュをタラタラ行くと本流のム沢と御神楽沢に分かれる二俣に到着。御神楽沢は出合からしばらくは伏流となっている。二俣からすぐで30mの御神楽滝がその姿を現す。

美しい広谷川御神楽滝30m

 ここは無理せず定石通り左岸から巻く。一応ロープも出したが、警戒していたほどの悪さはない。この先も含めて思っていたほど悪いところもなく、あっという間に上部ゴルジュ帯へ。ここは最近でこそ連続する滝を登って突破する記録も増えてきて時間的にもかなり余裕はあったが、昔からのクラシックルート的には左岸からの高巻きがセオリーなのでここも無理せず高巻きを選択する。懸垂もなく歩いて降りるとそこはもう要と言われる幕場予定地の僅か100mほど手前の場所で時間も昼前で順調すぎてちょっとびっくり。要のロケーションは素晴らしく、覆い被さってくるような大岩壁に囲まれながらの無人境での時間は永遠にも思われ、別の惑星にでもいるような錯覚を覚える。夜は満天の星と盛大な焚火が加わり、至高の時と空間を我々だけで占有する。

【10月2日】
 今日も予定では長い感じなので日の出とともに出発する。まだ雪渓の残る本谷ルンゼを詰めていくとすぐにスラブ状となり、この先はロープを付けてのスラブ登攀となる。クライミング自体は簡単で2ピッチでロープを解き、あとはフリーソロで上がっていくが怖いところは特にない。

奥壁の朝焼け上部スラブ帯

御神楽岳山頂  幕場から3時間弱で稜線の登山道に飛び出し、御神楽岳を往復する。悪い悪いと言われる榮太郎新道は鎖が設置されているなど、だいぶ整備されている感じで問題なく湯沢まで下り、あとは行きも通った登山道を戻り今山行も終了となる。
 広谷川の御神楽沢は袖沢と比べると三峰には縁の薄いルートと言うか山域であったが、技術的に困難な箇所はあまりないので、天気に恵まれれば快適遡行&クライミングが楽しめると思います。これをきっかけに他会員もどんどん続いてくれると嬉しいですね。

〈コースタイム〉
【10月1日】 蝉ヶ平登山口(5:30) → 御神楽滝下(8:30) → 御神楽沢奥壁・要(幕)(12:00)
【10月2日】 幕場(6:00) → 御神楽岳山頂(9:30) → 基点(14:30)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ369号目次