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ハイキング・熊野古道小辺路
さとうあきら

山行日 2022年6月4日~7日
メンバー (L)佐藤(明)、杉本、鈴木(章)

熊野参詣道一覧  熊野参詣道として世界遺産登録されているなかの小辺路(こへち)は、高野山と熊野本宮の2大聖地を最短距離で結ぶ参詣道で、大峯奥駆道に次ぐハードなルートである。途中は1,000m級の峠を3つも越えるため、厳しいアップダウンに苦労させられるが、苔むした石畳の道や石仏が多く残り、いかにも古道、という雰囲気がしっかり残っていた。
 東京在住の2名は6月3日(金)の夜行バスで大阪なんばに入り、翌4日に電車で高野山に入った。さすがに真言密教の総本山だけあり、しっとり落ち着いた町の雰囲気、そして建築物の大きさに圧倒される。高野山のシンボル、壇上伽藍前でアッコさんと落ち合い、その後弘法大師の眠る奥の院を見物して今宵の宿の「持明院」に入った。
 高野山には52もの宿坊があるとのことだが、この宿はそのひとつで、町の中心部に位置する。庭園も見事で、我々は最も庭が美しく見えるとされる2階の角部屋に通された。食事は部屋食で、高く積み上げた3人分のお膳を、頭をそり上げた若いお坊さんが運んでくれた。なお宿坊ではお酒は禁忌となっているため、代わりに般若湯をいただいた。

宿坊持明院での夕食

【6月5日】
小辺路の道標はしっかり  朝6時からの読経に参加する。寺の本堂は真っ暗で、ろうそくの火だけが怪しく揺れる。幸いイスが並べられていた為、そちらに着席し、足のしびれは免れた。きっかり1時間で朝の勤行は終了し、朝食後の8時前に宿坊を後にする。
 小辺路のルートは分かりやすい。要所に道しるべが設置され、ルートミスはまずない。出発した雲上都市の高野山は標高約800m。今日歩くのは標高1,000m前後の樹林の中である。2時間ほど歩いて高野龍神スカイラインに出ると急に車の騒音で興ざめしたが、30分程の車道歩きで再び山道の静寂が戻り安心する。
 水ヶ峰を過ぎた先の東屋で昼食を兼ねた大休止。一応展望ポイントにはなっているが、標高も低いせいか、我々には見慣れたような風景で感慨は今一つ。その先は車道をからめながら大股に下る。
 一般的には小辺路は4日間かけて歩く。その場合の一日目の行動はここ大股までとなるが、自分たちは三日間での踏破を予定していたため、その先の伯母子岳避難小屋を目指した。しかし今日明日の天気予報は悪く、雨雲レーダーでも強い雨の襲来が迫っていた。そのため、大股から1時間ほどの急登の先にある萱小屋までとして先を急いだ。幸いこの避難小屋到着後間もなく豪雨となり、カッパは使わずに済んだ。なおこの萱小屋は個人所有とのことで5名ほど泊まれる広さだ。小屋の脇には湧き水が流れ、なんとビールが冷やされている。1本頂き、宿泊代に加えてその金額を寸志箱に投入した。また小屋にはマキが大量に準備されていたが、いずれも太く着火には苦労させられた。ナタでもあれば割ることが出来たのに残念だ。その後も強い雨が断続的に続き止むことはなかった。

萱小屋到着で安心

ガスの伯母子岳頂上 【6月6日】
 夜明けとともに起床するものの、強い雨は続く。10分おきに雨雲レーダーに祈りをささげるものの、結局出発は雨の弱まる8時半となってしまった。ここからの伯母子岳への登山道も良く整備されている。1時間半ほどで当ルートの最高地点の伯母子岳頂上に到着するが、強風とガスとで早々に下山開始。伯母子峠にある避難小屋を見ておくつもりでいたが、そこからの東斜面トラバース道が通行止めとのことで、頂上から南尾根を下るよう指示されている。このルートは旧来の小辺路ではないが、赤布も多く取り付けられ、分かりやすかった。
 なお大股からこれから下る三浦への道は、馬の背に米や干し魚などを積んだ商人の往来も多かったらしく、途中には石仏や旅籠跡、そして長い石畳も残っていた。
 当初計画では三浦からさらに三浦峠を越えて十津川温泉に下る予定だったが、出発が遅かったため今回は三浦までとし、ここで宿のクルマでピックアップしてもらった。若い運転手さんは親切で、少し遠回りながら谷瀬の吊り橋を見せてくれるとのこと。ここは十津川村一番の観光名所で長さ約300mの私設の吊り橋を、無料で渡ることが出来る。
 今宵の宿は十津川温泉の民宿「太陽の湯」。夕食は地元捕獲イノシシのボタン鍋とシカ肉のフライ。悠々と流れる十津川を眼下に眺める大展望の露天風呂もあり、満足の宿だった。

谷瀬の吊り橋は長い
民宿でのボタン鍋おいちい顔の女子

【6月7日】
 6時出発。20分程車道を歩き石畳の続く旧道に入る。標高差250mほど登ると果無(はてなし)の集落だ。水田の広がる先には雲湧き立つ周囲の山々が望まれ、天空の楽園そのものだ。世界遺産の石碑の脇を通り果無峠で大休止。その後も良く手入れされた美しい杉林の中を歩き、八木尾バス停に降り立った。
 車道を少し歩き「道の駅熊野」に到着。改めて熊野本宮大社までの歩行時間を再確認すると、このまま歩いたのでは本宮参拝時間があまり取れなく、予定している帰りのバスに乗るのはギリギリだ。道の駅でヒマをつぶしているオジサンに交渉し、2000円で本宮大社まで車に乗せてもらった。そのかいあって本宮大社を余裕で参拝。平日だけあり境内に混雑はなく、気持ちよく美しかった小辺路行の御礼を神々に述べることが出来た。

石畳の道が続く大展望の果無(はてなし)集落付近
〈コースタイム〉
【6月5日】 出発(8:00) → スカイライン(10:35) → 大股(13:20~13:35) → 萱小屋(泊)(14:20)
【6月6日】 萱小屋発(8:30) → 伯母子岳(10:05) → 登山道合流(10:40~11:00) → 三浦の登山口(13:20)
【6月7日】 民宿出発(6:00) → 果無集落(7:00) → 果無峠(9:00~9:20) → 八木尾バス停(11:25) → 道の駅熊野(11:45)

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