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集中山行 平標山
藪漕ぎ/沢登り・小出俣山オゼノ尾根~平標山
鈴木 一彦
平井 辰夫
瓜田   

山行日 2022年9月9日~11日
メンバー (L)鈴木(一)、平井、瓜田

【9月9日】記録:平井
 谷川岳の南にある川古温泉から赤谷川(阿弥陀沢)をめざし、そこから谷川→平標山の稜線に出る山行。が、正規ルートで沢を遡行するのはとても無理なので主に残雪期に行くという山、赤谷山(小出俣山)を越えるルート。尾根沿いを直登です。
 下の方がヒル地帯。そこら中でヒルが踊っています。キモい。途中から藪をこぎこぎ。なんとなく踏み跡はあったがそれも山頂手前まで。リーダーが見えない。山頂は曇っていましたが素晴らしい景色でした。
途中からこんな視界。リーダーはどこでしょう。  休憩もそこそこにここからは沢へと下りるルートを探します。稜線沿いなのでルートを確認しながら獣臭やらクマが寝ていたであろうスペースをいくつか通り藪漕ぎ、私の頭の中のルートとリーダーのルートが違っていたのか、少しすると現在地がわかりません。沢へ下りる下降点が見えてからが大変でした。石楠花の藪が立ち塞がり思う方向に全然進めない。リーダーの力技&ノコギリも出動し、想定1時間のところを2時間以上かかりやっと下降点へ。こりゃ私だけでは無理。もっと経験しないと、、、。
 無事に沢筋に入り、ここからは迷うこともないので落ち着いて降りていきます。上流は水がえらい冷たい。赤谷川本谷に合流する直前、小さな滝があったので念の為、懸垂下降。本流に出ると素晴らしい景色!とにかく水が綺麗です!
 予定していたゴルジュ帯までは届かなかったので今日はここらで幕営地をさがします。左右岸の高台は意外と狭かったり水浸しでしたがいい場所を見つけ設営。
 明日は朝から小さいながらもゴルジュ越えなので早めに就寝。
 山の楽しみ方って多いですねぇ。

沢の序盤 【9月10日】記録:瓜田
 山行2日目。当初の予定では今日はのんびり山行になるはずだったが、昨日のうちに沢を通過できなかったので早めに出発することになった。沢初心者の私は朝から緊張だ。名前も「阿弥陀沢」だし・・・。
 早朝でも水はそれほど冷たくなかったので少し安心。相変わらず綺麗な沢を最初は気持ちよく歩いていたが、程なくして少し深めの釜が現れた。へつろうにも右壁はスタンスがなく、左壁は岩がぬめり過ぎてとても上がれないので、私の提案(お願い)で左から巻くことにした。ところが最初のゴルジュを抜けた後はひたすら続く笹のトラバースになり、両手で笹を握っていないと滑り落ちてしまう。と言うか、握っていても滑る。かなり腕力を使うのでそろそろ降りたいと思っていたら、越せない倒木が出て来た。先頭の鈴木さんが左上によじ登りお助けスリングを出してくれ、苦労して何とか上がったが、その後に続いた平井さんは意外とすんなり上ってきた。この時点で腕力の90%程を使ってしまい暗いシナリオを妄想し始めたが、ようやく下降できる場所が出てきて沢に復帰できた。巻かずに沢を行くのとどちらが良かっただろうか。
やっとの思いで撮った一枚  その後は何カ所かへつり、緊張しながらも落ちずに通過。心配していた終盤のゴルジュは思ったよりは小規模だった。とは言え、鈴木さんに続き右側から上がろうとしたが、足が滑って上がれない。水の中を進んでも良いのだが深さがわからず、後ろの平井さんにしつこく足の位置を聞いて上がることができた。
 この後はオジカ沢の頭付近で登山道と合流する計画だったが、途中の登れそうなところでショートカットしようということになった。頭へ続く尾根手前の西側1,570m付近で、水を汲んでから斜面のゴルジュを登り始めたが、ゴルジュはすぐに終わってしまい、その後は延々と草付きを進むことになった。木でも草でも掴めるものは何でも掴み、高巻きに続いてこちらもやっとの思いで通過。しかし怖がっていたのは私だけのようで、2人は涼しい顔をしている。
 ようやく登山道と合流し、小障子ノ頭で休憩ついでに沢装備を外した。この後は安全に歩けるので登山道万歳!という気分だったが、私はかなりばてており、少しでもザックを軽くするために後で装備を再装着することになった。
快適な道  万太郎山頂ではソロの男性に会った。トレランまでの出で立ちでもなかったが、吾策新道を3時間で登ってきたという驚異のスピード。今日は時間がないのでこのコースなんですと、爽やかに去って行った。時間がある時に来るコースではないかな??
 13時に越路避難小屋へ到着した。楕円のフォルムが60年代のSFのようで格好良い。内部は床張りで、天井には物干しロープがあり、銀マットも1枚設置されている快適な小屋だ。宴会にはまだ早すぎるので、着替えや荷物整理をしながらのんびり過ごし、後続の吾策新道からの川口隊を待った。15時過ぎに川口隊も到着し、互いの苦労をねぎらいながら楽しいひと時を過ごした。夕食は鈴木シェフのコンビーフ混ぜご飯と豚汁を美味しく頂いた。
 個人的には3日間の中でこの日が最も苦労したが、最も充実した一日でもあった。
 鈴木さん、平井さん、ありがとう!

【9月11日】記録:鈴木
 快適な小屋での一夜も明け、今日はいよいよ集中日。昨夜の国境稜線は随分と荒れたようで、我々が小屋を占拠していたため、「テントごと吹き飛ばされるかと思いましたよ」と、後から到着された方々からは若干恨みがましい視線を向けられてしまった。気を取り直し、これから進む仙ノ倉山方面に目を向けると抜けるような青空に大きな山体が見える。数年前に訪れた時は暴風とガスの印象しかなかったこの道を快晴の下歩けるのは何とも心地いい。今日は終始、一般登山道で気分もずいぶんと楽だ。川口隊と合流して6人編成となった我々は6:30に小屋を出発。時間調整のため長めの休憩を取りながら9:30ごろに仙ノ倉山山頂に到着した。周囲の方々には「谷川岳から歩いてきたんですか?」などと声をかけられ、若干面はゆい。記念写真を撮っていると、平標山方面から見慣れた顔がひょっこり現れた。スガハラさんだ! 思いがけない出会いに大盛り上がり。否が応でも集中に期待が高まる。若干早めだが、10:00を迎えて平標山に向かうこととした。背後にはシッケイ沢、鞍部に差し掛かると行く手のあちらが笹穴沢、こちらが東ゼンかと、厳しい行程になりそうな沢チームの今が気になる。快適な道を辿り、平標山には10:46到着となった。
 ザックを下ろしてひと息ついていると、三々五々と見知った顔が増えていく。会ったばかりの方、数年ぶりにお目にかかる人、初めましての方、皆が三峰の旗を目指して集まってくるのを見るのは感無量だ。自分にとっては入会した年の集中(甲斐駒ヶ岳)以来、2回目の集中成功。あの時は何も分からず、ただ付いていくだけだったが、今回はリーダーとして藪、沢、稜線歩きの欲張りルートを企画し、パーティー皆の力を合わせて主体的に歩けたのではないだろうかと、自画自賛したくなる。それぐらい充実した3日間だった。
 川古温泉まで歩いて降りるつもりだったが、皆の顔を見て気が抜けてしまい、ヒッチハイクを敢行。道祖土さんに快諾していただき、元橋駐車場に行き先を変更した。水不足気味だったので、平標山の家を通ることにした。集合写真を撮って下山に取りかかると、「モートー!」が聞こえた。笹穴沢メンバーだ。笹藪を掻き分け、笑顔でこちらを目指してくる。我先に下山してしまったことに若干ばつの悪さを覚えながら、思いがけず出会えたこと、健闘を称えて握手した。
 思えば、最初から最後まで、他のパーティーはどんな景色を見ているのだろう、どんな楽しい時間を過ごしているのだろうと、仲間のことを思い続けていた。自分たちの山歩きを楽しむのはもちろんだが、仲間に思いを馳せるのもまた良い時間だった。

〈コースタイム〉
【9月9日】 スタート地点(05:31) → 小出俣山(11:38~12:18) → 宿泊地(ゴルジュ手前)(16:08)
【9月10日】 阿弥陀沢の幕場(5:40) → 小障子ノ頭(9:50) → 大障子避難小屋(10:35) → 大障子ノ頭(11:00) → 万太郎山(12:25) → 越路避難小屋(13:00)
【9月11日】 越路避難小屋(6:36) → 仙ノ倉山(10:02) → 平標山(12:20) → 元橋駐車場(14:26)

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