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集中山行 平標山
沢登り・赤谷川笹穴沢~平標山
坂井 泰子
梅田 尚子

山行日 2022年9月10日~11日
メンバー (L)坂井、梅田、小芝(泰)

 前夜は少しでも長く眠れるようにと、早めに都内を出発した。しかし、仮眠場所に早く到着したからといって早く就寝するメンバーではない。作戦会議等で盛り上がり、結局シュラフに入ったのは2時くらいだっただろうか。緊張感の高まりからか、私はなかなか寝付けず、虫の鳴き声やカエルの喧嘩?を朝方まで聞きいていた。

2段20m滝をリードする小芝さん 【9月10日】記録:坂井
 朝6時半に駐車スペースを出発。川古温泉・浜屋旅館の脇から赤谷林道に入る。この林道はヒルがたくさんいると脅しを受けていたので、びくびくしながら歩く。梅ちゃんは「いるいる」と言うが、目が悪い私には一匹も見えなくてラッキーだった。
 林道の終点から入渓すると、基本的には私と梅ちゃんが前を歩き、二人がうーん・・・となると小芝さんが助け舟を出してくれるというスタイルで進んだ。ロープが必要な場面では小芝さんがリード、次に梅ちゃんが登り、最後に私というオーダーだ。
 天気は快晴。美渓と名高い笹穴沢は本当に美しく、前方の景色に目を奪われながら歩いた。トポではこれといったコメントがないのに、思いがけず困難な場所もあり、これで2級上なのか?と内心途方にくれたりもした。
 集中するためにできるだけ上に泊まりたかったので、二俣付近では幕場を探さず躊躇なく進んだ。が、二俣からすぐの2段20mの滝は予想より大分手こずった。お腹まで水に浸かった状態であれこれ試してみるが、下部はヌメリが酷くなかなか取りつくことができない。トポには「右壁を登るが容易」と書かれているというのに!なんとか離陸できた時は本当にほっとした。
 記録によると1,400mを越えた場所でもビバーク地はあるようだが、到底そこまでは辿りつけず、1,288m地点で幕。20m滝下の河原である。いったいどうやってタープを張るのだろうと思っていると、小芝さんが一人でロープを張り巡らせ、立派な寝床を作ってくれた。あとで張り方を教わろうと思いつつ、焚火を囲むとそれも忘れ、楽しい夜を過ごした。この日は寝不足と疲れでタープに入ると一瞬で意識を失い、朝までぐっすりと眠った。

50m滝を登る 【9月11日】記録:梅田
 前日に思ったよりも進めたので、集中が現実味を帯び、気合いをいれて5:50頃出発する。
 滝の目の前にビバークしたので、当然朝イチから滝だ。ここは右の笹藪を巻くことにする。急斜面でのツルツルの笹に、朝から腕が疲れた。
 続く核心の50m大滝。大迫力だ。
 ここは右壁の滝より少し手前の方から左上するように登った。小芝さんがあっさり越えていった1歩目のハイステップが自分にとってはなかなかに遠く、ナンシーが足場用に石を積んでくれて、乗り越えることができた。ハイステップの先は難しくはないが、高度感と恐怖感を感じながら慎重に越えた。登りながら、「小芝さんはよく普通にリードで行けるな」と10回くらい思った。
 そしてハイライトの120mナメ滝。
圧巻の大ナメ滝!  天国のような風景に、歓声があがる!ここは水流より右側の乾いたスラブを登る。一見易しそうだけど、滑落が許されない場所だ。数10cmずれただけで、滑りやすいところもあり、微妙なルートの見極めが大事で、比較的踏み跡があるところは滑らない印象だった。
 最後の10m滝は記録通りに左側ルンゼから大きく高巻いた。この巻きはナンシーと2人でルートをあーだこーだ言いながら進み、とても勉強になった。
 しばらくすると源頭部に差し掛かり、電波が入ったので、集中MLへ連絡。20~30分の遅れでなんとか到着できそうな状況だ。待っていてほしい、、、と思いを込めて「少し遅れます」と連絡。その後も3人で協力しながら、集中できることを目標に登り続けた。
 最後は薄めの笹藪を10分ほど漕ぐと、目の前に人が歩いている稜線が見えた。もしかしたら三峰の誰かかも?と思い、もーとー!と叫ぶ。そしたら、もーとーコールが返ってきた。
 時刻は12:25。山頂じゃないけど出会えた嬉しさと、集中に間に合わなかった寂しさが入り混じって、複雑な気持ちだった。
 会えた3人組はすーさん隊で、少しお喋りした後に山頂に向かう。山頂ではハギーとアッシーが待ってくれていた。相変わらずのアッシー節を聞けて大満足。すーさん隊の瓜田さんも含め、同期にたくさん会えて嬉しかった!
無事に山頂に到着  山頂でわいわいした後、元橋へ下山を開始するが、疲れがどっと襲ってきた。しかも元橋から川古温泉までのタクシー代が想定より高くなっていることが発覚し、精神的にも疲労度が増す。ところが、うまい具合にピースがはまり、元橋からすーさん車に乗せてもらえることになった。みるみるうちに全員元気になり、足取りが軽くなる。気持ち一つで心身ともに元気になるから不思議なものである。元橋では他の三峰メンバーにもたくさん会えた。集中は惜しくも叶わなかったけれど、大満足な終わり方となった。
 強いリーダーの元で沢登りに行くと、大体何も考えずに後ろを歩くだけになってしまい、(自分の参加姿勢のせいかもしれないが)自分の成長を感じる機会がなかった。今回は、小芝さんに良い機会を与えてもらい、ナンシーと2人で考えながら一つ一つ乗り越えて非常に勉強になった。そして、岩登りの経験が沢のルーファイにも役立つことを実感でき、沢登りも主体的にやっていきたいと思える非常にいいきっかけとなった。ナンシー、小芝さん、ありがとうございました!

〈コメント〉
小芝(泰)

 ある日携帯を見ると「芝さん、お願いがあります!」というLINEグループが立ち上げられていました。見ると、当初のリーダーが離脱したので代わりを務めてほしいという内容です。ほー、LINEってこんな使い方もできるのか。感心しながら読んでみると、笹穴沢からの集中への熱い思いがLINEにしては長文で綴られていました。笹穴沢は行ってみたかった沢でもあったので、二つ返事で参加を決めました。
 山行計画は全て二人に立ててもらい、当日も二人にリーダーをお願いしました。沢は何といっても先頭を歩くのが楽しいですが、困難に立ち向かう二人の姿は感動的で、後ろを歩くのも良いものだなと思いました。
 もともと集中の時間には全然間に合わないと思っていましたが、二人の頑張りの甲斐あり、わずか30分足らずの遅れで平標の山頂に立つことが出来ました!しっかりとリーダーをやり遂げた二人の今後に注目したいと思います。楽しい山行をありがとうございました!

坂井
 自らお願いしておきながら、調べるほどに自分には難しすぎると不安になり、当初は天気予報も悪くさらに不安になり、リーダーをやると決まって一段と不安に・・・。50mロープを担ぐために軽量のザックを購入、液体燃料もいつもより少し減らして臨んだ当日。天気にも恵まれて、先頭で見る景色は格別だった。我慢強く付き合ったくれた小芝さん、びびりの私を引っ張ってくれた梅ちゃんに感謝!
 集中には間に合わずに申し訳なかったですが、大満足の山行でした

〈コースタイム〉
【9月10日】 駐車スペース(6:30) → 二俣(14:00) → 1,288m(17:20)幕
【9月11日】 幕場(5:50) → 50m大滝(6:30) → 120mナメ滝(10:00) → 山頂(12:30~12:40) → 元橋登山口(16:00)

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