トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ370号目次

雪山登山・南アルプス白峰南嶺
菊池 啓

山行日 2022年12月30日~2023年1月1日
メンバー (L)永岡、和田、青木、菊池

 二つ返事で参加した年越し山行となります。正直誘われるまで白峰南嶺の存在を知らず、こんな素晴らしい稜線歩きができるとは思いませんでした。元々は奈良田から入って3泊4日で伝付峠までの道のりを歩く予定でしたが全員の体力を鑑みて笹山下山の2泊3日奈良田周回へ変更。このおかげで3日間とも天気が良く美しい初日の出が拝める縁起のいい山初めとなりました。

【12月30日】
謎空間での宴会  奈良田温泉の駐車場から歩き始め。ほとんどの人は農鳥岳を登るためか登山口方面のゲートに停めるらしく周回をする自分たち以外に車は1台だけ。
 20~30分ほど車道を歩くとゲートに自治体職員の方がいました。冬季期間に南アルプスに入山する場合はここで届け出を出すらしい。
 1日目はここから沢沿いの道を橋で何度か渡渉をしながら大門沢小屋まで登っていく。最初はしばらく平坦な林道歩き。1回目の橋を渡り大門沢登山口を過ぎると雪が出てくるが足首下までしか積もっていない。
 沢の分岐を2つ越えたあたりから傾斜がきつくなってきて荷物が肩に食い込む。今回歩荷担当のため4-5テント+1日目の夕食分の重量が25kg以上ある気がするが、黙々と登り14:15大門沢小屋着。
 今晩はここが宿泊地。大門沢小屋の冬季避難小屋は広めでここで和田さんの特製の鍋と永岡さん持参の謎の電飾たち?!によりパーティー感の増した謎の空間で楽しく宴会。どこに行ってもいつもの三峰らしい感じで夜が更けていく・・・

【12月31日】
 冬季小屋の中は広いせいか非常に寒い。今日は急登をひたすら登ると思うとなかなかやる気が出ないがなんとか起床。小屋の前からは富士山と朝日が見えるはずだが、そちらの方は雲があり日の出は見られず・・・残念。
 昨日に引き続き4-5テントと2日目の夕食を担ぎあげる。いつまでたっても軽くならないのが地味に辛い。道は前日までに農鳥岳を目指す人たちがかなり入っていたようで夏道に沿ってトレースがあるが、ひたすら急登の上り坂でかなり疲れる。そんな中、時々木々が開けた際に振り返ると雲が晴れて見えるようになった大みそかの富士山、その厳かな姿を気力に代えてひたすら登る。
 ようやく木々がなくなりはじめた2,600m付近でアイゼンを履き、最後にトラバースをすると稜線へ到着。ここまで登ると非常に眺望がよく、前後は農鳥岳から白峰南嶺へと続く稜線、左には富士山、右には大きく雄大な塩見岳が見える。ここから待望の稜線歩き、といきたいがこの時点で14:00を回っていたので幕営地を探しながら歩くと、広河内岳を越えてしばらく下りた左側のハイマツ帯の上に雪がのって良い感じになっていたのでここを整地して幕営。
 この日もミラーボールが光り、初老チーム(失礼!)の思い出話に花が咲き、和田さんセレクトの歌謡曲集やラジオの紅白歌合戦と楽しい楽しい大晦日。とは言え明日も4:00起きのため21:00頃就寝。

【1月1日】
 明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。
 新年一発目の食事はみんなで持ち寄ったおせちと永岡さんの雑煮。永岡さんは二日酔いで食べられないようでしたが雑煮は絶品でした!
 食事後、テントの外に出て準備をしていると富士山の稜線が徐々に青からオレンジ色に染まりだし、やがて最後には赤い太陽が昇ってきた。柄にもなく世界が始まったような感じから静かな感動を覚えて今年は色々頑張ろうと深く胸に刻む。

日の出前、徐々に稜線がオレンジに染まっていく。厳かな初日の出

富士山を望みながら稜線を歩く  日が昇り切った6:40に幕場から出発。稜線上の雪は風で飛んで岩が見えているためアイゼンなしでも非常に歩きやすく、大籠岳~白河内岳間は常に白峰南嶺の稜線と富士山、そして南アルプス南部の山々をみながら縦走できるため存分に稜線歩きを楽しめます。
 白河内岳からは樹林帯が出てくるので雪が残っていて一部でワカンを使用したが、このあたりから3日間の疲れか、高山病か、自分の調子がイマイチ上がりきらない。ここから下山路分岐の笹山まで記憶が曖昧ですが、なかなか進まず、笹山には歩き始めてから6時間後の正午にようやく到着。
 ここから奈良田湖まで一気に下りるも気温も上がっているのか1,900mぐらいまでは踏み抜き多発で歩き辛く、体力を消耗しペースもあがりません。1,400m以下になり雪がなくなると今度は落ち葉と土の道を激下りで疲労しながら奈良田湖発電施設へ。
 下りきる頃にはあたりは真っ暗で、特に最後の大つづら折りの下りは精神的にも来るタフな下山路でした。

【最後に】
 今回見ることができた初日の出は、自分の人生の中でも1番美しいと思うくらい素晴らしく、幕場での宴会も毎回楽しく非常に面白い登り納め、初めとなりました。永岡さんお誘い感謝です!

〈コースタイム〉
【12月30日】 奈良田温泉(8:30) → 大門沢登山口(10:00) → 大門沢小屋(14:15)
【12月31日】 大門沢小屋(6:30) → 大門沢下降点(稜線分岐)(14:20) → 広河内岳(15:00) → 稜線上幕営地(15:30)
【1月1日】 稜線上幕営地(6:40) → 大籠岳(8:00) → 白河内岳(9:00) → 笹山(黒河内岳)北峰(12:00) → 奈良田温泉(17:30)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ370号目次