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雪山登山・日光白根山
長浜 理枝

山行日 2023年1月28日~29日
メンバー (L)長浜、小幡、鈴木(一)、瓜田、高橋(祐)

 昨年1月に日光白根山(奥白根山)の登頂を目指したものの、諸事情により五色沼避難小屋で敗退。その帰りの車内では、なんとなくモヤモヤした気持ちを胸に、来年もアタックしたいねと話をした。時期はもちろん厳冬期。
 そしてその言葉通り、今シーズンも再び奥白根山をチャレンジすることになり、1月末に行こうよと話が纏まった。
 メンバーは、日光白根山3シーズン目の鈴木さん、高橋さんに加えて、2シーズン目の私、初参加の瓜田さん、アドバイザーの小幡さんの5名で挑むことになった。
 数日前に寒波が来ていたため、おそらく山は雪がたくさん積もっているだろう。ヤマレコやYAMAPの直近のログを探してみるが最近入山した形跡はないし、きっとトレースもない気がする。なんとなく、条件としては難しい気もするが、三峰の小旗をザックに入れて気持ちを奮い立たせた。
 日光方面に向かう車内でも、まずは「去年よりも前進!」が目標だけど、できれば、ここで奥白根山は登頂しておきたいよね、などと皆で話をしながら金曜夜の東京を後にした。

【1月28日】曇り
 5時に前泊地である快活クラブ笠懸店を出発して、湯元のバス停駐車場へ。この時点でとても寒く、バス停の待合所で身支度を整えさせてもらった。始発のバスから降りてきたのは、強そうなお兄さんがひとり。我々と同じ方面へ向かうそうだ。
 準備が整い、8時15分頃から歩き始める。なんとなく去年の朧げな記憶を頼りに歩き始めてはみたものの、最初の出だしで道を間違えてしまった。軌道修正して湯元スキー場へ。朝が早く誰も歩いていないスキー場は圧雪されており歩きやすい。登山口までの緩やかな上り坂を登る。
 登山口からは、木と急登が続くので早速、アイゼンを履いた。気温が低いのだろうか、寒さで手が悴み、手がピリピリとしてくる。急登を終えて、なんとか尾根へ辿り着いた。日光白根2シーズン目の私は違いが分からなかったが、3回目の鈴木さん、高橋さん曰く、今年は雪がかなり少ないそうだ。もしかしたら、登頂できちゃうかも!?と淡い期待を胸に歩みを進める。
 尾根に出て、樹林帯を歩いていると、先行者のお兄さんが降りてきた。前白根山まで行ったが、スノーシューが壊れたのでこのまま下山するという。これで頂上までノートレース確定だ。ひとまず、前白根山を目指す。
 稜線の樹林帯エリアを越えると、めちゃくちゃ風が強くて、頬までピリピリとしてくる。
 去年、前白根山の山頂は風が弱く、写真を撮る余裕があったが、今年は風が強く撮影する余裕は全くない。
前白根山にて(先シーズン撮影)  前白根山を越えて進んでいくと、風が強くて雪が根付かない場所なのだろうか、岩と土の地面が露出したエリアに出た。前白根山の尾根沿いは本当に風が強くて、ボーッとしているとフラっと吹き飛ばされそうだ。地面から体が引き剥がされないよう、重心を低くして歩く。テント泊装備の重たいザックが丁度良い重しとなってくれた。
 五色沼避難小屋の標識が見えてホッとひと安心。あとはここから下山するだけだ。
 途中、ルーファイが難しいところがあったが、後ろを歩いていた小幡さんが、サササッと前に出て、正しいルートを導いてくださった。こういう時のベテランさんの助言はとても有難い。
 無事に避難小屋へ到着。同じタイミングで、山スキーの3人組パーティーと出くわした。今夜は小屋に泊まるそうだ。先客もいるし、五色沼避難小屋の中には、ジャンボテントを張れないので、結局、屋外での設営となった。
 今晩の食当は高橋さん。味噌鍋と〆の旨辛ラーメンが美味しく体が温まった。
 鈴木さんのミニプラティパスには、救急用のウイスキーがしこたま入っており、まるでセントバーナード・・・かと思えば、救急セットの中に入っていたサイコロを取り出して、丁半のルールを説明し始め、ギャンスズ(ギャンブラースズキの略)に変身。
 つけっぱなしにしていたAMラジオからは懐メロや天気予報が流れていた。
 快活クラブや別パーティーがいる避難小屋より、こっちの方が自由で楽しいねぇと話をしていたら、小幡さんが山の歌を唄い始めた。山男の恋の歌、山岳部の新人の歌など、昔読んだ小説と似たような歌詞もあり、情景が目に浮かぶ。明日に備えて、早めの21時過ぎには就寝。

丁半講座熱唱

【1月29日】曇り
 翌朝は5時に起床して各自で朝食。テントや宿泊装備を小屋にデポして、アイゼンを履き頂上へ向かう。
 小幡さん以外は五色沼避難小屋から先に行ったことがないので、緊張しながら向かったものの、早々に標識を通りすぎてしまった。小幡さんが、早めに行手を軌道修正してくださり、事なきを得た。
 樹林帯の緩やかな上り坂をラッセルで進む。樹林帯を越えると、さらに急坂が続く。木が生えていない、つるんとした地面の急坂なので、これは滑落とか雪崩が起きたら怖いな~・・・などと思いながら、疲れないように早めに皆でラッセルを交代しながら登り続けた。
 急坂を登りきった尾根が頂上かと思っていたが、小幡さんによると、我々が立っている尾根と対峙しているのが頂上だそうだ。頂上までのルートは、遠目では険しそうだったので、再び気を引き締めた。先ほどの尾根からの斜面をトラバースして、最後は再び上り坂。
無事登頂!  無事に登り切ってホッと一安心。頂上には前白根山の標識と温度計があった。気温はマイナス16度。どうりで寒い訳である。標識の前で、記念写真を撮って早々に下山。
 さっき登ってきた、つるんとした急坂のところは、やはりどうしても怖くて、腰が抜けてしまいそうになる。
 小幡さんや高橋さんから「クライムダウンで降りるといいよ!」とアドバイスを頂き、恐怖で気を失いそうになりながらもなんとか難所を降り切ることができた。五色沼避難小屋でしばらくお茶をして、帰りは歩き慣れた道を歩いて下山。前白根山は今日も風が強かった。
 下山後の車内では、何度もトライして登頂できたのが嬉しくて感動したとか、ノートレースのところを皆で協力してラッセルしながら歩けたのが良かったという話で盛り上がった。高橋さんが、三峰に入って一番感動した山行かもしれません、と言ってくれて本当に嬉しかった。
 雪山初心者の私にとって、この登頂の達成感は大きく、下山後しばらくしてからも、今まで感じたことがないような多幸感にじわりと包まれていた。
 今回ご一緒した皆さん、無事に登頂できて良かったです。本当にありがとうございました。

〈コースタイム〉
【1月28日】 湯元温泉バス停(08:15) → 前白根山(13:22) → 五色沼避難小屋(14:00)
【1月29日】 五色沼避難小屋(07:30) → 奥白根山(09:45) → 五色沼避難小屋(10:50~12:00) → 前白根山(12:50) → 湯元温泉バス停(15:10)

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